だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
 ふふ、これでもずっとカラスと連絡を取りあっていましたので、いつかのもしもで役立つかも……とあの屑に関する情報や不正の証拠は集めるようカラスに昔から命令しておいたのです。まさか本当に役立つとは思いませんでしたが。
 他にも、夫人や異母兄姉達に関する情報や物的証拠等もカラス達が八年間独断で収集していたらしく、私は準備万端でこの戦いに挑む事が叶ったのです。

「何故、シャンパージュ伯爵家がララルス侯爵家を告発するのか。お教え頂いても?」

 ダルステン司法部部署長がぎこちない表情でシャンパージュ伯爵に尋ねると、彼は横目で私の方を一瞥し、

「こちらの淑女《レディ》との約束……でしょうか」

 意味深な笑みを浮かべた。
 すると司法部の方々の注目が一気に私に寄せられる。この場においてこのように顔も声も素性も隠してシャンパージュ伯爵の背に隠れる人間……目立たない筈がありません。
 ドレスの裾を摘み、私は求められるがままに淑女《レディ》らしく一礼しました。そしてポケットの中から一つのペンダントを取り出し、シャンパージュ伯爵に手渡す。

「訳あって、彼女は今声を出せないので私が代弁させていただきますが──……これを見ていただけたら分かるでしょう。これはララルス侯爵家の家紋が刻印されたペンダント。ララルス侯爵家の血筋の者にしか渡されないという、代々続くかの身分を証明する物です」

 ざわっ、とどよめく司法部の方々。その後もシャンパージュ伯爵が暫く「このペンダントは古くよりララルス侯爵家内で作製される為、我が商会でも未だに製法は分かっておらず」「特殊な加工を施されているので複製も難しいでしょう」「これ程の精巧な彫刻が出来る者がいるなら是非我が商会に欲しいぐらいです」とペンダントが本物である証明をしていた。

 実はあのペンダント、母の物なのです。母が死ぬ間際に棚の奥底に追いやっていたあのペンダントを私に手渡し、『いつか役に立つかもしれないから』と暫くは所持する事を勧めて来たのです。
 当時は本当に嫌々、母の形見という事にして所持していたのですが、現にこうして役に立つ時が来たので……母には感謝しかありませんね。

 このペンダントの事もあり、司法部の方々は私がララルス侯爵家の人間でありながらも自らの家を告発した事に気づいたのでしょう。彼等の顔には戸惑いが顕著に見られる。
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