だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
 威厳なんて欠片も無い、子供の痴話喧嘩のような二人の言い合いに滲み出る懐かしさを感じた。昔、よく御二方がララルス邸に遊びに来てはこのように言い合いをしていた事を思い出したのです。
 しかし……皇太子殿下の御前でもかなり自由な侯爵方を見て、ケイリオル卿は小さく肩を震わせていますね。笑っているのでしょうか。この状況に。

 シャンパージュ伯爵も愉快そうにニコニコと笑うだけ。アルブロイト公爵は静かに紅茶を飲み、テンディジェル大公に関しては船を漕いでますね。見るからに不健康そうですし、寝不足なのでしょうか。
 錚々たる面々が集う貴重な場だと言うのに、その錚々たる面々が全員自由であまり締りが無い。いつもこうなのでしょうか……。

「──罪人、モロコフ・シュー・ララルス及びララルス夫人、そしてその子供達を連れて参りました!」

 扉の向こうからそんな言葉が聞こえてくる。すると先程までの緩い空気から一転、この空間には緊張の糸が張り詰められた。

「入れ」

 短い言葉でした。皇太子殿下のその一言で扉は開かれ、手枷と鎖に繋がれる屑と夫人と異母兄姉達が現れました。……ふむ、どうやら犯罪行為はしていない妹だけは連行されなかったらしいですね。
 しかし大なり小なりの罪を犯し隠蔽して来た夫人と異母兄姉達は連行されたと。

「こっ、皇太子殿下……! 我々は無実です、これはその……っ、嵌められたのです……!!」
「黙れ。誰が発言を許可した」
「……ッ!!」

 いかにも不満、と言いたげな表情をする屑に対して呆れしか湧いてこない。屑の後ろで魔物のように醜く表情を歪める夫人達にも同様に、これは当然の帰結でしょう? なんて言葉しか出てこない。
 因果応報なのですよ。貴方達がこれまで犯して来た罪を償う時が来た……ただそれだけの事。分かりやすい勧善懲悪ですね。
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