だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
 カイルとて運命を変えたいという強い思いがあり、それを実行しようとした事もあった。だが、一度も上手くいかなかった。ゲームの強制力か何なのか……カイル・ディ・ハミルと言うメインキャラクターには、アミレス程の運命に抗う力が無かったのだ。
 思い切り運命に抗う事が可能なのは、サブキャラクターに位置するアミレスただ一人と。カイルは悔しくもそう結論づけるしか無かった。

(チートオブチートの癖にさ、何も出来なさ過ぎだろ。運命を変えてハッピーエンド目指そうぜって提案した癖に、俺には運命《シナリオ》に対する影響力が全然無いとか。マジで信じられねぇよな……アミレスがこれ聞いたらきっと怒るだろうな、無責任! って)

 是非もないか、とカイルは物憂げな表情となる。
 カイルに出来た事と言えば王位継承権の放棄による、カイル・ディ・ハミルの王太子となる未来の放棄のみ。だがそれがゲームのシナリオに齎す影響はあまり大きくない。

 カイルが王太子にならなかった場合、ハミルディーヒ王国とフォーロイト帝国の戦争でのハミルディーヒ王国側の切り札が無くなり、厄災が現れた際にハミルディーヒ王国を守る人間がいなくなる。
 このアンディザ二作目の世界では、絶対にハミルディーヒ王国が戦争に負ける。一作目ではミシェル・ローゼラがハミルディーヒ王国側にいた事で何とかハミルディーヒ王国は辛勝する事が出来たが、二作目ではミシェル・ローゼラが神殿都市所属となった為、どちらか一方にだけ助力する事が不可能となった。

 ハミルディーヒ王国側の攻略対象のルートでのみ発生する戦争。それなのにヒロインであるミシェル・ローゼラがほとんど関与しない不可思議なイベントなのだ。
 その為ハミルディーヒ王国は惜しくも敗戦する。ハミルディーヒ王国側の切り札たるカイルがいなければ、その敗戦がより早くなるだけである。

 厄災に関してはミシェル・ローゼラが何とかするのでカイルはいてもいなくても割と問題ない。
 つまり、カイルの不在による運命《シナリオ》への影響は、ほとんど無いのである。それをカイル自身よく分かっているので、己の無力さを嘆いているのだ。

「メイシア嬢とカイルじゃないか。珍しいな、二人が一緒なんて」
「マクベスタ様」
「おっ、マクベスタ〜!」

 二人が曲がり角を行くと、マクベスタとバッタリ出会った。その手にはいくつかの資料があり、シルフとエンヴィーにこき使われている事が見て取れる。
 ようやくカイルと二人きりでなくなった事にメイシアは少し安堵し、推しであるマクベスタに会えたからかカイルはすっかり元の調子に戻った。
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