だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
158.夢の終わりに餞を3
「こっちに回ってくる仕事、大体が資料を参考にして纏めるだけのヤツだから楽なのは楽なんだが……資料を探す手間がなァ。たまにくる報告書の作成みたいなヤツとか、これ何の意味があるんだよマジで……」
「さあね。ボク達はとにかくアミィの筆跡を完璧に真似てこれを片っ端から片付けていくしかないんだから、その内容は気にしたら負けだって何回も言っただろ」
「そりゃそうっすけど……マジで無意味な仕事多くないすか? 人間効率悪くね??」
仕事の山に辟易しつつエンヴィーが大きくため息をつくと、
「本来は雑用にやらせるような仕事の多くが、皇太子派閥の人間からの嫌がらせでこちらに流されているみたいだからな……はぁ、この国の貴族達の器の小ささが見て取れる」
マクベスタが侮蔑を含む表情と声色で、くだらない……と吐き捨てた。
教師を雇った事も無く、剣を握る事しか能のない野蛮な王女──それが世間からのアミレスの評価だったのだが、いざ皇帝不在のうちにと皇太子派閥の人間がこぞってアミレスに仕事を押し付けてみた所、何故か完璧に仕上がった状態でそれは返ってきた。
最初はアミレスが誰かに仕事を肩代わりさせたと疑う者もいたが、一度ケイリオルを初めとして何人かの貴族の前でアミレスがその頭脳を発揮してからというもの、そう疑う者はいなくなった。
アミレスに仕事を押し付け、皇族なのにこんな簡単な仕事すら出来ないなんて! と批難するつもりだった貴族達は非常に焦ったとか。
アミレスの頭がそれなりに優れていると分かった皇太子派閥の人間達は、どうしてもアミレスを批難したくて何かその理由を意図的に作り出そうと、仕事の山を押し付け続けている。
しかしそれは特に意味を成さなかったのだ。アミレス自身の優秀さと、アミレスが眠る今彼女の代わりとなる者達の卓越した模倣技術によって。
……まぁ、なので、今だけはアミレスが何者かに仕事を肩代わりさせている事に変わりない。しかしこれは不可抗力なのである。だから仕方無いのだ。
「人間の中には一定数のクソ野郎と馬鹿がいるのは昔からだろ、エンヴィー。何を今更人間に期待してるのさ」
書類仕事をする猫が呆れ気味にやたらと辛辣な言葉を吐くと、
「いやアンタだって割と期待しがちなタチじゃないっすか。それと俺は期待してるんじゃなくて信じてるんですよ」
エンヴィーがキリッとキメ顔を作って言い放つ。それを聞いた猫の中のヒトは割と本気の引き顔を浮かべた。
確かに彼の言葉に同意はするものの、ここまで思い切り言い切る度量がシルフには無かったのだ。
「うっわー、クッセェ…………エンヴィーって本当にそういう所あるよね。そんなんだから女に言い寄られるんだぞ」
「全員丁重にお断りしてるんスけどね。シルフさんからも言ってくれません? しつこいからまとわりつくなって」
「自業自得」
「いや、そこをなんとか」
精霊達が軽い口調で会話しながらも、異様な速度で仕事の山を片付けていく様子を見て、マクベスタは頬に小さな汗を浮かべつつ思う。
(相変わらず、アミレスがいる時といない時の差が激しいな。このヒト達は)
シルフに関しては凄まじい猫の被り様。エンヴィーに至ってもかなり本性を抑えに抑えてる。だがそれはアミレスの前でのみであり、それ以外ではこの通りだ。
しかし近頃はこの後者の二体しか見ていない為、マクベスタはアミレスの前ではちゃんと取り繕うこの二体の精霊の姿を、少し懐かしく思っていた。
「さあね。ボク達はとにかくアミィの筆跡を完璧に真似てこれを片っ端から片付けていくしかないんだから、その内容は気にしたら負けだって何回も言っただろ」
「そりゃそうっすけど……マジで無意味な仕事多くないすか? 人間効率悪くね??」
仕事の山に辟易しつつエンヴィーが大きくため息をつくと、
「本来は雑用にやらせるような仕事の多くが、皇太子派閥の人間からの嫌がらせでこちらに流されているみたいだからな……はぁ、この国の貴族達の器の小ささが見て取れる」
マクベスタが侮蔑を含む表情と声色で、くだらない……と吐き捨てた。
教師を雇った事も無く、剣を握る事しか能のない野蛮な王女──それが世間からのアミレスの評価だったのだが、いざ皇帝不在のうちにと皇太子派閥の人間がこぞってアミレスに仕事を押し付けてみた所、何故か完璧に仕上がった状態でそれは返ってきた。
最初はアミレスが誰かに仕事を肩代わりさせたと疑う者もいたが、一度ケイリオルを初めとして何人かの貴族の前でアミレスがその頭脳を発揮してからというもの、そう疑う者はいなくなった。
アミレスに仕事を押し付け、皇族なのにこんな簡単な仕事すら出来ないなんて! と批難するつもりだった貴族達は非常に焦ったとか。
アミレスの頭がそれなりに優れていると分かった皇太子派閥の人間達は、どうしてもアミレスを批難したくて何かその理由を意図的に作り出そうと、仕事の山を押し付け続けている。
しかしそれは特に意味を成さなかったのだ。アミレス自身の優秀さと、アミレスが眠る今彼女の代わりとなる者達の卓越した模倣技術によって。
……まぁ、なので、今だけはアミレスが何者かに仕事を肩代わりさせている事に変わりない。しかしこれは不可抗力なのである。だから仕方無いのだ。
「人間の中には一定数のクソ野郎と馬鹿がいるのは昔からだろ、エンヴィー。何を今更人間に期待してるのさ」
書類仕事をする猫が呆れ気味にやたらと辛辣な言葉を吐くと、
「いやアンタだって割と期待しがちなタチじゃないっすか。それと俺は期待してるんじゃなくて信じてるんですよ」
エンヴィーがキリッとキメ顔を作って言い放つ。それを聞いた猫の中のヒトは割と本気の引き顔を浮かべた。
確かに彼の言葉に同意はするものの、ここまで思い切り言い切る度量がシルフには無かったのだ。
「うっわー、クッセェ…………エンヴィーって本当にそういう所あるよね。そんなんだから女に言い寄られるんだぞ」
「全員丁重にお断りしてるんスけどね。シルフさんからも言ってくれません? しつこいからまとわりつくなって」
「自業自得」
「いや、そこをなんとか」
精霊達が軽い口調で会話しながらも、異様な速度で仕事の山を片付けていく様子を見て、マクベスタは頬に小さな汗を浮かべつつ思う。
(相変わらず、アミレスがいる時といない時の差が激しいな。このヒト達は)
シルフに関しては凄まじい猫の被り様。エンヴィーに至ってもかなり本性を抑えに抑えてる。だがそれはアミレスの前でのみであり、それ以外ではこの通りだ。
しかし近頃はこの後者の二体しか見ていない為、マクベスタはアミレスの前ではちゃんと取り繕うこの二体の精霊の姿を、少し懐かしく思っていた。