だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜

159.夢の終わりに餞を4

「王女殿下の騎士たるこの私と戦うか、無様に逃げ出すか……今なら好きな方を選ばせてやろう」

 イリオーデの冷たい睨みに、男達は「お、覚えてろよ!!」とありきたりな捨て台詞を吐いて脱兎のごとく逃げ出した。その後をへっぴり腰で追いかける護衛の騎士達。
 その背中が見えなくなるまでイリオーデはずっと睨み続け、やがて逃げ出した男達が見えなくなると急いでアミレスの方を向いた。
 流れるように扉を開き、イリオーデは「王女殿下、早く中へと入りましょう」とエスコートする。こくりと頷いてアミレスが歩き出した時、

「あっ」

 ふらり、と彼女の体がよろめく。

「大丈夫ですか、王女殿下!?」

 だがイリオーデがきちんとその体を受け止めた。アミレスはイリオーデの胸元で、「ごめん、ちょっと目眩が……」と顔色を悪くした。
 その姿を見てイリオーデはハッとして、

(やはりまだまだ体調が優れないのでは……! このまま王女殿下を歩かせるのは危険。私がお抱えしてお運びした方がいい!!)

 アミレスが昏睡状態から目覚めたばかりの病み上がりである事を再確認した。
 その為、意を決してイリオーデは行動する。

「王女殿下、失礼致します」
「え? ……っひゃあ!」

 彼女の羽織る厚手の布団ごと、アミレスを横抱きで抱き上げた。ぼんやりとする意識の中でもアミレスとてそれはきちんと認識出来たようで、突然の事に恥ずかしい悲鳴をあげてしまった。
 美形への耐性はそれなりにあるものの、美形に接近されたりこういった事をされる事への耐性はあまり無い、アミレスなのであった。

「それでは早速お部屋に──……」
「あ、待って。厨房に行って欲しいの」
「厨房ですか?」

 歩き出した途端に足を止め、それは何故……とイリオーデが首を傾げると。

「今とってもお腹がすいてて……」
「成程。でしたらお部屋まで何かお持ちしますが」
「それだと貴方が二度手間になるじゃない。だから、私が直接行った方が早いわ」

 アミレスにここまで言われてしまえば、イリオーデはもうこれ以上何も言えない。主の意向に従い、イリオーデはアミレスを抱えたまま厨房に向かい始めた。
 その道中、イリオーデからアミレスへと『何故誰も呼ばず一人で出歩いていたのか』という質問があり、アミレスはその事について目覚めた時を思い出しつつ話し始めた。
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