だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
 ──遡る事、十分程前。
 アミレスは静寂の中で目を覚ました。

『ん……まぶし……』

 カーテンの隙間から溢れ出る外の光は、アミレスの眠る寝台《ベッド》へと落ちていた。線のように細く開かれた瞳はその光を直に受け、まず最初に眩しいという感想をアミレスに与えた。

『いま、なんじ……というか、なんにち……?』

 張り付いた声でアミレスはボソボソ呟きつつ、起き上がろうとする。しかし体中に全然力が入らず、仰向けのままでは起き上がれない。
 更に、ぐぅううううう……と腹の虫が鳴る。ここで、アミレスも『わたし、いったい何日間寝てたの?』と己が意識を失っていた期間に恐怖を覚えた。
 とにかく起き上がろう。と決意したアミレスは寝返りをうってうつ伏せになり、全体重を使って何とか起き上がった。

(体おもっ、力入らなさすぎ、お腹すいた、体ダルっ!)

 ここまでの不調、今まであっただろうか。そう過去を思い返す程にアミレスは己の体の不調っぷりに驚いていた。
 彼女は知らない。自分が眠っている間に三週間が過ぎ去り、その期間に様々な魔法に薬にを片っ端から試されていた事を。
 副作用……という程でもないが、それなりにそれらの影響が体に残っている。主に頭痛や腰痛や筋肉痛としてだが。

 シルフに与えられた加護と、拉致されて来たラフィリアの治癒魔法と、ホリミエラより齎された薬が所謂点滴のような役割を果たしていたので、アミレスの体はまあまあ健康。
 しかしずっと眠っていた為、体は鈍り重く感じる。食事等もとっていない為、単純に凄くお腹はすくし力も入らない。とにかくお腹がすくのだ。
 この昏睡による最大の影響はその空腹だろう。今アミレスは、飢餓状態かと思う程の空腹に襲われている。

『ハイラー……シルフー……』

 思うように声が出ないものの、とにかく誰かを呼ぼうとしたのだが……暫く待ってみても誰かが来る気配は無い。

『おかしい。いつもならこれでハイラが来てもおかしくないのに』

 どういう地獄耳なのか、ハイラはどこにいようともアミレスに呼ばれたら猛ダッシュで駆けつける。東宮とてそこそこ広いのにも関わらず、どこで仕事をしていようと彼女は駆けつけたのだ。
 しかし今日は来ない。それはハイラという人間がそもそもいなくなったからなのだが──……それはアミレスの知らない事。
 それにアミレスは驚いた。おかしい、いつもと違うと。
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