だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
第三節・バースデーパーティー編

161.最悪の招待状

 ──フォーロイト帝国南部。特別領土、ディジェル大公領。

 かつてフォーロイト王国の隣国として、かの国と白の山脈に挟まれる位置にあったディジェル公国は、フォーロイト王国崩壊と同時に起きたフォーロイト帝国建国の際、フォーロイト帝国の属国となる事で帝国による侵略を免れた。

 フォーロイト帝国の領土でありながら、それまで公国だった領土はそのままディジェル大公領として土地を任され、ある程度の自治も認められた特例のような領地。
 その代わり、変わらず白の山脈より来たれり脅威から帝国を守る事を条件付けられた通称・帝国の盾。
 その名に相応しく、帝都近郊では俗にディジェル人と呼ばれるこの大公領の人々は──ハチャメチャに強い。性別問わずめっちゃ強い。田舎者と馬鹿にしたならば、肋骨の一本や二本は折られる覚悟はした方がいいだろう。

 日々、白の山脈より来たれり脅威……様々な魔物や魔族と戦うからか、誰もが強靭な肉体を誇るのだ。
 そして、ディジェル大公領を代々統治する一族、テンディジェル家。その家の者は代々頭脳に秀で、何よりも策謀を得意としていた。
 ディジェル大公領を統治するテンディジェルの頭脳とディジェル大公領に住む人々の強靭な肉体。言わば完璧な軍師と兵士の揃う場所、それがディジェル大公領なのである。

 ディジェル大公領北東部、領主の城にて。
 現ディジェル大公領領主ログバード・サー・テンディジェル大公は、大きなため息と共に煙を吐き出した。その手には葉巻が一つ。
 鈍色の髪に赤紫の瞳を持つ過労気味のおじさん、歳は五十三で近頃腰痛と寝不足に悩まされている。彼は若くから大公として日々休む間もなく働いていて、そろそろ弟に大公位を譲ってもいいよな? と日々画策する事で何とか理性を保っているのだ。

 隠居後はどんな自堕落な生活を過ごそうか、と妄想でもしないとやってられないぐらい、彼の過労は極まっている。何なら今すぐにでも過労死してしまいそうなぐらいだ。
 そんな彼は帝都から突然寄越された一通の招待状を見て、盛大なため息を吐いた。以前の特別な会合の為の召喚状でさえも七面倒だったのに、此度の招待状はそれを上回る。
 その内容とは──、

「皇太子の十五歳の誕生パーティー、つってもな……ウチからすればダントツで行きたくない催事なんだが。何をどうして律儀にわざわざ招待状送るのだ、あの布野郎は」

 皇太子フリードル・ヘル・フォーロイトの十五歳の誕生パーティーが、三月に催される。有力貴族は当然出席必須なのだ。
 渋い声でグチグチと恨み言をこぼしつつ、ログバードは椅子に全身を預けて天井を仰ぐ。

 フォーロイト帝国の皇族達は十五歳の誕生日に王城にてパーティーを行うしきたりがある。それは初代フォーロイト帝国皇帝が当時十五歳と言う若さでその座についた事が所以と言われている。
 その為、一ヶ月後に迫るフリードルの十五歳の誕生日に合わせ、三日程に及ぶパーティーを国を上げて催す事が決まった……と、いう旨の手紙がログバードへと送られて来たのだ。
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