だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
 エリドル・ヘル・フォーロイト皇帝はあまりパーティーを好まず、これまで一度たりとも……自身はおろか子の誕生日を祝うパーティーなど開いてこなかった。
 それ故に、皇太子たるフリードルの十五歳の誕生日はこれまでの分も含めて三日間の盛大なパーティーを行う事としたのだ。

 これまでの分も含めた割に日数が少ない気がするが、まぁ、これがケイリオルの交渉の限界だったのである。『あのパーティー嫌いの陛下から、三日間のパーティー開催をもぎ取った事だけでも褒めて欲しいぐらいですよ』とケイリオルは愚痴を零したとか零さなかったとか。
 そんな一部の人間の尽力もあって開催されるパーティーなのだが、ログバードのように非常に乗り気で無い者も稀にいるのだ。

「こちとらつい数週間前に帰って来たばかりなんだが……それなのにもう帝都に来いだァ? 巫山戯るのも大概にしろ…………せめて交通費ぐらい寄越せ!!」

 帝都と大公領とはかなりの距離があり、片道一ヶ月は余裕でかかる。どんな移動手段を用いようとも、基本的にその日数は変わらない。……いくつかの例外を除いて。
 十二月の頭に有力家門の会合があり、それで突然召喚状が届いた時なんかは帝都から迎えの空間魔法を扱える魔導師が来た。

 会合が終わればすぐに帰れると思っていたログバードであったが、『滅多に大公領から出て来ない大公が帝都にいるなら』と多くの者が彼の元へと押し寄せ、その知恵を貸してくれだの仕事を手伝ってくれだの騒いでいた。
 何なら布野郎ことケイリオルからもここぞとばかりに仕事を押し付けられ、彼はなんと一ヶ月以上も帝都に滞在する事を強要されていたのだ。

 ケイリオルに無理やり手配させた魔導師の力で、ようやく大公領に帰れたかと思えば届いたのがこの手紙。突然の手紙ではなく一ヶ月程前から出すと言う事は──今度は自力で来いよ。と言う事。
 とどのつまり、彼はこれから一ヶ月近くかけてまた帝都まで行かねばならなくなったのだ。それも自力で。
 そりゃあ、怒りのあまり机を握り拳で叩いてもおかしくない。

「──伯父様、俺だけど」

 ログバードが天に向け怒号を上げようとしていた時だった。部屋の扉がコンコン、と叩かれる。
 うぉっほん、と咳払いをしつつログバードが「入れ」と言うと。

「失礼します。あの、俺に話って?」

 ログバードよりも濃い鈍色の髪に紫色の瞳を持つ好青年がおずおずと現れた。
 彼の名はレオナード・サー・テンディジェル。ログバードの甥にして、テンディジェル家の中でも特に将来を期待される若き秀才。
 そして──……アンディザ二作目において、フリードルの側近として登場した非攻略《サブ》キャラクターだ。
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