だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
そもそも吸血鬼は盛衰や進退を自在に操れる為、見た目の年齢はあまりアテにならないが……アンヘルはもう数十年間とずっとこの姿をしている。
フォーロイト帝国との取引が始まってから、アンヘルはこの通り、皇族の十五歳の誕生パーティーに招待されていた。しかし社交活動が面倒で毎度毎度断って来たのだ。
なので今回も断ろうとしたのだが。
「まぁまぁそう言わずに。一緒に行こうよ、アンヘル君!」
思わぬ伏兵が現れた。アンヘルの黒髪と対称的な真っ白の長髪に、純白の祭服を身に纏う男──……国教会の聖人たるミカリアが、突如として満面の笑みで現れたのだ。
その笑顔を見て、アンヘルは思わず苦虫を噛み潰したような表情を作る。非常に厄介な男が現れた、と彼は重苦しいため息を一つ。
「おまえ……何しに来やがった」
「えっへへ〜、聞きたい? そっかぁ聞きたいか〜!」
「うるせぇ失せろ」
明らかに浮かれきっているミカリアの様子から、面倒事の気配を濃く感じ取ったアンヘル。彼は食い気味にミカリアを罵倒した。
決して友人関係では無い、腐れ縁の知人。そんな間柄の二人は、平気で辛辣な態度をとる。だが、お互いそれで構わないと思っているから問題無いのだ。
相手の立場とか種族とか関係無く接する事が出来る、たった一人の気の置けない知人……それが、孤独な吸血鬼と孤高の聖人に許された存在だった。
「あのねぇ、実は僕も貰ったんだ。帝国からの招待状! だからアンヘル君も一緒にパーティーに行こうよ!」
「嫌に決まってんだろ」
「またまたぁ、そんなに照れなくていいのに〜」
最早ミカリアには目もくれず、その苛立ちを抑えようと、次々とスイーツを口の中に放り込む。しかしミカリアはこの通りアンヘルを刺激するばかりであった。
本当に、浮かれ過ぎである。
「そもそもおまえだってパーティーとか興味無いだろ。どういう風の吹き回しなんだ、気色悪い」
さり気なく罵倒しつつ、アンヘルはミカリアの浮かれっぷりに突っ込んだ。
すると、待ってましたと言わんばかりにミカリアの頬がだらしなく緩む。これを見て、アンヘルは「ああクソっ、間違えた……!」と早々に後悔した。
召使に向け、ミカリアは彼を追い払うようにしっしっ、と手を動かす。すると召使は慣れた表情で退室したので、誰かに聞かれる心配も無いまま彼は語りだす。
「だってこれは合法的に、誰にも怒られる事無く姫君に会えるまさに絶好の機会! これまで仕事が体裁がと一年近く会いに行けなかったんだ。正直、僕からしたら皇太子もパーティーもどうでもいい……だって僕、ただ姫君に会いたいだけだし!!」
ぶっちゃけ過ぎである。誰にも聞かれていないのをいい事に、ミカリアは聖人らしからぬ発言を繰り返していた。流石のミカリアとて、唯一無二の知人の前では取り繕ったりはしないらしい。
フォーロイト帝国との取引が始まってから、アンヘルはこの通り、皇族の十五歳の誕生パーティーに招待されていた。しかし社交活動が面倒で毎度毎度断って来たのだ。
なので今回も断ろうとしたのだが。
「まぁまぁそう言わずに。一緒に行こうよ、アンヘル君!」
思わぬ伏兵が現れた。アンヘルの黒髪と対称的な真っ白の長髪に、純白の祭服を身に纏う男──……国教会の聖人たるミカリアが、突如として満面の笑みで現れたのだ。
その笑顔を見て、アンヘルは思わず苦虫を噛み潰したような表情を作る。非常に厄介な男が現れた、と彼は重苦しいため息を一つ。
「おまえ……何しに来やがった」
「えっへへ〜、聞きたい? そっかぁ聞きたいか〜!」
「うるせぇ失せろ」
明らかに浮かれきっているミカリアの様子から、面倒事の気配を濃く感じ取ったアンヘル。彼は食い気味にミカリアを罵倒した。
決して友人関係では無い、腐れ縁の知人。そんな間柄の二人は、平気で辛辣な態度をとる。だが、お互いそれで構わないと思っているから問題無いのだ。
相手の立場とか種族とか関係無く接する事が出来る、たった一人の気の置けない知人……それが、孤独な吸血鬼と孤高の聖人に許された存在だった。
「あのねぇ、実は僕も貰ったんだ。帝国からの招待状! だからアンヘル君も一緒にパーティーに行こうよ!」
「嫌に決まってんだろ」
「またまたぁ、そんなに照れなくていいのに〜」
最早ミカリアには目もくれず、その苛立ちを抑えようと、次々とスイーツを口の中に放り込む。しかしミカリアはこの通りアンヘルを刺激するばかりであった。
本当に、浮かれ過ぎである。
「そもそもおまえだってパーティーとか興味無いだろ。どういう風の吹き回しなんだ、気色悪い」
さり気なく罵倒しつつ、アンヘルはミカリアの浮かれっぷりに突っ込んだ。
すると、待ってましたと言わんばかりにミカリアの頬がだらしなく緩む。これを見て、アンヘルは「ああクソっ、間違えた……!」と早々に後悔した。
召使に向け、ミカリアは彼を追い払うようにしっしっ、と手を動かす。すると召使は慣れた表情で退室したので、誰かに聞かれる心配も無いまま彼は語りだす。
「だってこれは合法的に、誰にも怒られる事無く姫君に会えるまさに絶好の機会! これまで仕事が体裁がと一年近く会いに行けなかったんだ。正直、僕からしたら皇太子もパーティーもどうでもいい……だって僕、ただ姫君に会いたいだけだし!!」
ぶっちゃけ過ぎである。誰にも聞かれていないのをいい事に、ミカリアは聖人らしからぬ発言を繰り返していた。流石のミカリアとて、唯一無二の知人の前では取り繕ったりはしないらしい。