だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「姫君って……おまえ、本当に最近はそればかりだな。耳にタコができるくらい聞かされたんだが、そのガキの話は」

 ケッ、と悪態をつきアンヘルが近頃の恨みを呟くと、

「ガキなんて無粋な言い方しないでよ。姫君は十把一絡げの子供達とは違うんだ! 君だって一度会えば分かるよ、姫君は特別なんだ。他の誰とも違うとっても特別な少女……彼女の事を何と言い表せばいいのか、僕の頭でもまだ考えが纏まらないぐらい彼女は素晴らしいんだ!」
(何だこいつ本当に面倒極まりないな!!)

 ミカリアは、それはもう壮大に演説した。
 アンヘルにどれだけ鬱陶しがられようとも、ミカリアはここ一年近く不定期にアンヘルの元を強襲《ほうもん》しては、ベラベラと好きなだけアミレスの話をして満足したら勝手に帰るを繰り返していた。
 ミカリア対策に強めの結界を張ってみても、ミカリアはどんな結界であろうと赤子の手をひねるようにあっさりと破ってしまう。人類最強の聖人の実力を、知人の家を訪ねる為だけに使うなという話だ。

 そのように、アンヘルには自由に会いに行く事が可能なのだが……アミレスにはそれが出来ないでいる。何せアミレスはあれでも皇族であり、絶対中立を誇る国教会の聖人として、私用で会いに行くなんて事が最も不可能な相手なのだ。

 その鬱憤を晴らすかのように、ミカリアは頻繁にアンヘルの元を訪れては彼のプライベートを潰している。何とも傍迷惑な存在だ。
 そしていつも通り、ミカリアが腑抜けた顔で長々ベラベラと『姫君』の事を語り出したものだから、アンヘルの堪忍袋の緒はもう切れる寸前であった。

「これは、姫君に会いたい……日々そう願う僕の為に神がくださったご褒美なんだ。だから僕は当然、このパーティーには意地でも出席してみせるとも」
「あーそうですか勝手にしやがれ」
「でもね、どうせパーティーに行くのならやっぱり知人もいた方が楽しいかなって! だからアンヘル君を誘いに来たんだよね!」
「回れ右して帰れ」

 ミカリアは満面の笑みでアンヘルに圧をかけた。何とか、ギリギリの所で彼への怒りを堪えているアンヘルは、頑固として『絶対に行かない』姿勢をとっている。
 彼はスイーツと魔導兵器《アーティファクト》にしか興味を示さない。それ以外の事は、基本的に眼中に無いのだ。
 だからこそ、パーティーには行かないと何度も主張しているのだが……こちらもまた頑固なミカリアは一歩も引こうとしない。
 一度、アンヘルと一緒に行く。と決めたからには何としてでも成し遂げようとする。
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