だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
『……──と、いう訳でして。結果的に侯爵夫妻は共に死亡。神童と呼ばれた次男は行方不明との事。分家筋からの反対も多かったようですが、ランディグランジュ家の長男だった事から、アランバルト・ドロシー・ランディグランジュがこうして暫定的に当主の座についたようですね』

 以上で説明を終わりますね。とケイリオル卿が締めくくると、皇帝陛下はたいへん興味の無さそうなため息を一つ。

『家庭内の問題に外部の者が首を突っ込むのも些か無粋というもの。私としては、当主が代わろうが何だろうが猫の毛程も興味の無い事柄よな。なればこそ、この場で簡潔に問おう』

 皇帝陛下の冷酷な瞳が真っ直ぐこちらに向けられた。その瞬間、全身が凍てついたかのように身動きが取れなくなった。その圧倒的な威圧感に、意識が完璧にひれ伏している。

『真実を話せ。それ以外の言葉を口にする事は許さぬ。当事者であるお前しか知らぬ真相を明らかにする事、特に許そう』
『……御意の、ままに』

 皇帝陛下の御前にて、俺はこの計画を実行した時の事を話した。父を殺した方法、毒の入手経路、父が母を殺した事、母の本当の死因、そして……『弟に継承権が渡る恐れがあったから、そうなる前に爵位を簒奪した』このめちゃくちゃな計画に関して。

 それらを全て嘘偽りなく語り終えた俺に向けられた視線は、愚か者を見たような呆れの視線だった。
 そんな中、ケイリオル卿が挙手をして『聞きたい事がありまして』と俺に話を振ってきた。

『何故、母親の死までもを己のものとしたのですか? 両親諸共殺害したという悪名が為でしょうか? どのように考え、あのように喧伝したのか……その説明も併せてしていただいても?』
『は、はい。あれは……償い、です。自分が、父から騎士としての未来も全てをも奪ってしまったので。せめてその最期は──誇り高き帝国の剣として。と考えまして……愛する妻を殺した男としてではなく、ランディグランジュの騎士として、最期を迎えさせてやりたかったのです』
『つまりは貴方の自己満足と捉えても?』
『……はい。その解釈で間違いありません』

 確かにそうだ。これは俺の自己満足、ただのエゴに過ぎない。
 こうして父の最期を少しでも良いものとして、父に最期を迎えさせた事の責任から逃れようとしている。最低最悪な俺らしい非道い考えだ。

『ケイリオル、あれは真か?』
『真ですね。どうやらあれは疑いようのない、彼の本音のようです』

 皇帝陛下が確認すると、ケイリオル卿はこくりと頷いた。彼には嘘が通用しないと言う噂は有名だが……凄いな、本当に言葉の真偽が分かるのか。
 俺の言葉が真実であると確認出来た皇帝陛下はのそりと立ち上がり、冷ややかな声で宣言した。
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