だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
 やはり侯爵達は侮れない。別に侮っていた訳ではないが、本当に油断も隙もない。
 観念して、俺はイリオーデの事を話した。
 イリオーデが忠誠を誓った相手の事は念の為に伏せておいたが、イリオーデがある日を境に人間らしくなった事。誰かだけの騎士として生きる道しか、あいつにはなかったという事。

 そんなイリオーデの未来を潰しかねない継承権を、父がイリオーデに与えようとしていた事。どれだけ憎く妬ましくても、それさえも超える程の弟への愛情と憧憬を俺が抱いていた事。
 俺が無能だったばかりに生じてしまった不和の数々の事。騎士足り得ぬ俺が、生粋の騎士たる弟の為に出来る事がこれであったという事。

 本当は誰かに聞いて欲しかった、俺の本音。俺一人じゃ到底背負いきれないそれを、少しでもいいから誰かに手伝って欲しかった。
 だからだろうか。不思議なぐらいすいすいと言葉が口から出てゆく。感情の荒波を堰き止めるのに必死で、言葉の制御は出来なかった。

 侯爵らしく振る舞わないといけないのに。それなのに、俺はいつの間にかまた泣いていた。
 ここまで頑張ったのに、俺が頑張った一番の意味はどこにもいない。それを改めて実感し、泣いていたのだ。

『……はぁ、馬鹿かお前は。不器用にも程があるだろう』
『そう言ってやるなよフューラゼ。新たなランディグランジュ侯爵……アランバルトはまだ子供だ。そう考えると、仕方の無い事とも言えるだろ?』

 フューラゼ侯爵とオリベラウズ侯爵が俺の語ったそれに呆れ返る。料理を食べる手を止めて、額に手を当て項垂れていた。

『私は良いと思うがな。素晴らしい兄弟愛ではないか。事の発端たる神童が姿を消した事により、その全てが水泡と帰しただけであって』

 とにかく涙を拭け、とアルブロイト公爵がハンカチーフを貸してくださった。それを借りて恐る恐る涙を拭っていると。
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