だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
幕間 その役を演じ切る。
それから、俺のランディグランジュ家当主としての慌ただしい生活が始まった。
幸いにも我が家門は分家筋も含めて武家の家門。事業のようなものはあまりやっていなかった。その代わりに、ランディグランジュ家の領地では農業が行われているので、唯一の収入源と言っても過言では無いそれの更なる活性化を目指し、奮闘する事になった。
我が領地……と言うか帝国全域では冬になると農業が難しくなる。それがやはりネックだったので、必死に色んな書物を読み漁っては領地と帝都を行き来して、農家達と議論し検証しを繰り返した末に、何と冬でも幾つかの作物の栽培が可能になったのだ。
この成功までおよそ二年。だがこれだけではまだ足りない。皆を、ランディグランジュを守れない。農業改革と同時に、実は別の計画も進めていたのだ。
俺には本来当主となる資格が無かった。簒奪してまで手に入れたこの紛い物の爵位。父と同じような働きは不可能な為、俺は代々ランディグランジュ侯爵が務めてきた帝国騎士団騎士団長の役職を辞退した。
その為、父が生前に国から貰っていたような俸給は一枚たりとも無く、その癖納税額は変わらないので本当に大変だった。
数年は蓄えられていた財産から捻出可能だが、数年後にはそれも不可能となる。とにかく他にも事業を始める必要があった。そこで俺達武家の者が考えたのは──……ズバリ、剣術学校の運営だった。
我が帝国の騎士団や兵団はその門戸を広げている為、身分問わず誰でも入団試験を受けられる。だが、その試験の難しさに合格出来ない者が多いと聞く。
ならば少しでもその可能性を上げられたならと。身分問わずの剣術学校を開く事にしたのだ。場所は帝都からもほど近いランディグランジュ領。そこに剣術学校を建て、運営する許可を一応ケイリオル卿からもいただいた。
その学舎設立の資金をシャンパージュ伯爵家に借りたりしつつ、どうせやるならとしっかりした設備と道具を用意。更には遠くから学びに来てくれた生徒用にと学生寮まで作った。
これで町興しをしようと、剣術学校のすぐ側の町は未だかつて無い程に大盛り上がり。様々な店が立ち並ぶようになった。
この学校の運営で一番の不安が、経営そのものだった。誰もやった事が無いような事だったので、恥も外聞を捨てて俺はまたシャンパージュ伯爵家に頭を下げた。
どうか、剣術に覚えがあり頭が切れる者を派遣して欲しいと。あれだけの借金をした上で人材まで寄越せという無茶苦茶な要望、普通なら聞き届けて貰えないだろうと思っていた。
しかしシャンパージュ伯爵の代理の人は、伯爵に相談した上で人材をも派遣してくれた。派遣された人がうちの者に色々と教鞭を執ってくれたお陰もあり、剣術学校は無事運営されるようになったのだ。
そして有難い事にこの剣術学校はかなりの大盛況となった。例え当主が無能であろうとも、ランディグランジュ──帝国の剣の名が持つ力は絶大。教師陣がランディグランジュの分家筋の者達という事もあって、質の良い剣術を学べると貴族からも平民からも評判だった。
何もかもが不慣れな事ばかりであったが、死ぬ気で勉強し努力し、多くの人達の助けを得てなんとか十年間駆け抜けて来た。
あまりの忙しさにイリオーデを捜す暇も無くて、ただあいつが今どこで何をしているのかが気がかりだった。だからこそ、あいつがいつでも帰って来られるように……俺は、ランディグランジュを守る必要があった。
この地位を奪ったのは俺だから。ちゃんと、責任を取って守り抜かないといけなかったんだ。
九年程前にシャンパージュ伯爵家より借りた大金も、利子含めそろそろ纏めて返せる見込みだった。ひとまず、ようやく少しだけ肩の荷を降ろせると思っていた時だった。
幸いにも我が家門は分家筋も含めて武家の家門。事業のようなものはあまりやっていなかった。その代わりに、ランディグランジュ家の領地では農業が行われているので、唯一の収入源と言っても過言では無いそれの更なる活性化を目指し、奮闘する事になった。
我が領地……と言うか帝国全域では冬になると農業が難しくなる。それがやはりネックだったので、必死に色んな書物を読み漁っては領地と帝都を行き来して、農家達と議論し検証しを繰り返した末に、何と冬でも幾つかの作物の栽培が可能になったのだ。
この成功までおよそ二年。だがこれだけではまだ足りない。皆を、ランディグランジュを守れない。農業改革と同時に、実は別の計画も進めていたのだ。
俺には本来当主となる資格が無かった。簒奪してまで手に入れたこの紛い物の爵位。父と同じような働きは不可能な為、俺は代々ランディグランジュ侯爵が務めてきた帝国騎士団騎士団長の役職を辞退した。
その為、父が生前に国から貰っていたような俸給は一枚たりとも無く、その癖納税額は変わらないので本当に大変だった。
数年は蓄えられていた財産から捻出可能だが、数年後にはそれも不可能となる。とにかく他にも事業を始める必要があった。そこで俺達武家の者が考えたのは──……ズバリ、剣術学校の運営だった。
我が帝国の騎士団や兵団はその門戸を広げている為、身分問わず誰でも入団試験を受けられる。だが、その試験の難しさに合格出来ない者が多いと聞く。
ならば少しでもその可能性を上げられたならと。身分問わずの剣術学校を開く事にしたのだ。場所は帝都からもほど近いランディグランジュ領。そこに剣術学校を建て、運営する許可を一応ケイリオル卿からもいただいた。
その学舎設立の資金をシャンパージュ伯爵家に借りたりしつつ、どうせやるならとしっかりした設備と道具を用意。更には遠くから学びに来てくれた生徒用にと学生寮まで作った。
これで町興しをしようと、剣術学校のすぐ側の町は未だかつて無い程に大盛り上がり。様々な店が立ち並ぶようになった。
この学校の運営で一番の不安が、経営そのものだった。誰もやった事が無いような事だったので、恥も外聞を捨てて俺はまたシャンパージュ伯爵家に頭を下げた。
どうか、剣術に覚えがあり頭が切れる者を派遣して欲しいと。あれだけの借金をした上で人材まで寄越せという無茶苦茶な要望、普通なら聞き届けて貰えないだろうと思っていた。
しかしシャンパージュ伯爵の代理の人は、伯爵に相談した上で人材をも派遣してくれた。派遣された人がうちの者に色々と教鞭を執ってくれたお陰もあり、剣術学校は無事運営されるようになったのだ。
そして有難い事にこの剣術学校はかなりの大盛況となった。例え当主が無能であろうとも、ランディグランジュ──帝国の剣の名が持つ力は絶大。教師陣がランディグランジュの分家筋の者達という事もあって、質の良い剣術を学べると貴族からも平民からも評判だった。
何もかもが不慣れな事ばかりであったが、死ぬ気で勉強し努力し、多くの人達の助けを得てなんとか十年間駆け抜けて来た。
あまりの忙しさにイリオーデを捜す暇も無くて、ただあいつが今どこで何をしているのかが気がかりだった。だからこそ、あいつがいつでも帰って来られるように……俺は、ランディグランジュを守る必要があった。
この地位を奪ったのは俺だから。ちゃんと、責任を取って守り抜かないといけなかったんだ。
九年程前にシャンパージュ伯爵家より借りた大金も、利子含めそろそろ纏めて返せる見込みだった。ひとまず、ようやく少しだけ肩の荷を降ろせると思っていた時だった。