だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「……驚いた。随分とあっさり決めたじゃないか。提案した私が言うのも何だが、君はランディグランジュ侯爵──帝国の剣だ。もっと慎重に決めるべきではないか?」
「俺は確かにランディグランジュ侯爵になりましたが、ご存知の通り名ばかりの存在です。俺は帝国の剣ではないので、立場とかも無いんですよ」

 そうだ。俺が騎士にも当主にもなれない半端者である事は俺自身が一番よく分かっている。名ばかりの侯爵だと言う自覚も当然ある。
 だから立場なんて無い。俺は俺の思うがままに、紛い物の侯爵として振る舞うだけだ。

「それに……俺が王女殿下を支持すれば、イリオーデが王女殿下と関わっていてもおかしくはないかと思って」

 これまで色々と苦労をかけたんだ。少しでもイリオーデがやりやすいようにしてやらないとな。と思いつつ発言すると、

「っ!? お前、何故それを知って……!」
「おかしいな。どこから情報が漏れた……?」

 イリオーデとシャンパージュ伯爵がギョッと反応する。何なんだ、一体どういう事なんだ??

「ランディグランジュ侯爵、君はどうしてイリオーデ卿が王女殿下の騎士であると知っているのかい?」
「えっ、そうなのかイリオーデ!?」
「あれ……? 何だこの反応は。話が拗れてきたなこれ」

 バッとイリオーデの方へ顔を向けると、そこには怪訝な顔つきのイリオーデが立っていた。
 シャンパージュ伯爵の困惑の声を他所に、俺は湧き上がるような感情を押し止められず、溢れさせてしまった。

「……──そうか。良かった……本当に良かったな、イリオーデ」

 まるで我が事のように嬉しかった。どういう経緯でそうなったのかは知らないが、イリオーデが王女殿下の騎士として生きている事が本当に嬉しかった。
 だからだろうか。だらしなく、自然と頬が緩む。侯爵として律して来た自我が、物凄く騒ぎ倒そうとしている。

「……ランディグランジュ侯爵、一つ聞きたい。君は……彼が王女殿下の騎士である事を知らなかった。なのにどうして、イリオーデ卿の王女殿下との関わりを示唆したんだ?」
「あ、えっと。それは……昔、イリオーデが王女殿下の騎士になると言っていたから、です。俺は、イリオーデが何の憂いも無く王女殿下の騎士として生きていけるように、爵位を簒奪したので」

 少し恥ずかしくもあったが、俺はその場で心情を吐露した。
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