だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「王女殿下のお誕生日……私は、可能な限り最大限お祝い申しあげたい」
「殿下の私兵として、主の誕生日を祝わない訳にはいかないからな」
「誕生日を祝って貰えないのは凄く悲しいからな。王女様にはもう、その事で悲しんで欲しくない……俺も、全力で協力しよう」

 イリオーデ、ディオリストラス、シャルルギルの三人もこれに同意し、その場にいた全員の同意が得られた。その統括とばかりに、最後にこの幼女が宣言する。

「うむ。では我等はこれより、アミレスが目覚めるまでにアミレスの誕生パーティーの準備をし、そしてあやつを全力で祝う事とするのじゃ! 諸君、今宵は寝れぬ覚悟でおれぃ!」
「あ、ぼくの台詞取らないでよナトラ」

 このナトラの宣言を皮切りに、夜中でありながら各自動き出した。
 メイシアはシュヴァルツの空間魔法で一時的に実家に戻り、シャンパー商会の力を使う事とした。マクベスタは私兵三人衆と協力し、パーティー会場の準備とカトラリーの選定などを行った。
 ナトラは明日一日分の仕事を前倒しで始めた。明日一日は絶対にアミレスの為に使うのじゃ! と決めたらしい。しかしその途中で、ナトラとシュヴァルツは一瞬姿を消すなどしていた。
 そして、シルフとエンヴィーはとびっきりのプレゼントを持ってこようと精霊界に戻った。勿論アミレスの傍に端末《ねこ》を残して。

「……──という流れでして、明日、東宮にて王女殿下のパーティーを開くとの事です」
「そうですか、急ぎの報告助かります。私には出来なかったそれを、彼等はやってくれるのですね…………」

 この一連の話を聞いていた諜報部隊《カラス》の一人が、当然のようにこれをマリエルに報告した。
 報告を聞いたマリエルは優しく笑った後、

「であれば、姫様のパーティーに相応しい品々を用意せねばなりませんね」

 袖を捲り厨房に立った。現ララルス侯爵らしからぬ姿ではあるが、彼女としてはこちらの方が本性に近いのである。
 活き活きとした面持ちで、マリエルはケーキ作りに取り掛かった。これまでの数年よりもずっと豪華で美味しいバースデーケーキを、と彼女は腕によりをかけてケーキ作りに臨む。
 夜明けまでは残すところ数時間。アミレスの誕生日は、一体どうなる事やら……。
< 801 / 1,368 >

この作品をシェア

pagetop