だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜

165.十三歳になりました。2

「起きたのか、アミレス。お誕生日おめでとうなのじゃ!」

 目覚めたばかりでまだ不明瞭な視界の端で、ナトラがとても可愛らしい笑顔を浮かべている。

「ん、ありがとう……ナトラ。ところで今何時……?」
「針は七の辺りを指しておるぞ、お前にしては随分とお寝坊さんじゃな」

 まぁ、そのお陰で助かったのじゃが……。とナトラがボソリと呟いた。その表情は安堵に満ちており、よく分からないが私が寝坊した事で何か助かる事があったのだろう。と、あまり深掘りはしない事にした。
 誰しも詮索されたくない事の一つや二つあるものだからね。

 とりあえず立ち上がり、はしたなくも大きく欠伸をしつつ私は立ち上がった。そこで丁度侍女達がやって来て着替えなどに取り掛かる。
 侍女達もまた、入室時に「お誕生日おめでとうございます、王女殿下」とお祝いしてくれたので、それに「ありがとう」と返しながらドレスに着替える。
 着替えを終えて朝食の為に食堂へと向かうと、食堂の前でナトラがピタリと立ち止まった。どこかソワソワしているナトラが突然、食堂の扉をドンドンドンッ、と叩くと扉が内側から開かれて──。

 派手に飾り付けされ、中心のテーブルには純白のテーブルクロスが敷かれ、所狭しと豪勢な料理やスイーツが並べられている。そして、その場にいる皆が何故か正装をしていた。
 そんな、いつもと違う食堂の光景が目に映った。
 突然の事に何度も瞬きをする。目元を擦り、頬を叩いても、これは夢ではなく現実なのだと再確認させられるだけだった。
 私が自分の頬を叩いた事にナトラが酷く驚いている。「どうしたのじゃ?!」と目を丸くするナトラに向けて、夢かと思った。と返した。

 本当に、夢みたいなんだ。何がどうなってこうなったのか分からないが、今目の前には私の為らしき誕生パーティーの会場がある。
 あぁ……アミレスも喜んでるみたいだ。胸の奥底からじんわりと温かくなってゆくのを感じる。
 にまにまと笑うナトラに「ほれ、早く入るのじゃ」と背を押されて入室すると、

「アミィ、誕生日おめでとう。これで君の誕生日を祝うのは七回目だね。でも、これから先もずっと……十回目も百回目も祝わせて欲しいな」
「シルフさん、流石にそれは気が早いっすよ。姫さん、十三歳のお誕生日おめでとうございまーす」
「ハッピーバースデー! だっけ? とにかくおめでとぉ、おねぇちゃん!」
「我からも改めて。お誕生日おめでとうなのじゃ!」

 次々にお祝いの言葉を贈られる。もう既に例年よりもずっと多く祝われて、私の頭は軽くパニックに陥りつつある。
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