だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
169.パートナーの座は誰の手に
フリードルの誕生日まで残り一週間をきった頃。
仕事のお手伝いをしている時、ケイリオルさんがおもむろに切り出したのだ。
「忙しくて言い忘れていたのですが、皇太子殿下の誕生パーティーにて改めて王女殿下の社交界デビューも行いますので。ご準備の程を」
「──え?」
耳を疑った。その時書いていた文字はぐにゃりと歪み、メイシアは「アミレス様が……ついに……!?」と手に持つ書類をバサバサバサと地に落とし、イリオーデは「王女殿下の……社交界デビュー……!」と目を輝かせていた。
…………はい? 社交界デビュー? 私の?
頭の回転が追いつかない。アミレスの社交界デビューは失敗したじゃない。六歳の頃に建国祭に出られなくてさ。お陰様で社交活動しなくて済んでラッキー☆なんて考えてたのよ、私。
それなのに今更社交界デビューですって?
「じょ、冗談……ですよね?」
頬をひくつかせて確認すると、
「皇帝陛下から頑張って許可をいただきましたので、これが冗談になるのは私としても困りますねぇ」
勿論本当ですよ。とケイリオルさんはサムズアップする。
何で頑張って許可取ったのよこの人〜〜〜っ! そんなの一生取らなくて良かったのに! ゲームのアミレスは社交界デビューしなかったんだから、私だってしなくてもよくないかしら?!
「さしあたって、パーティーでのパートナーなども決めておいて下さいまし。ああそれと、恐らく王女殿下に挨拶をする貴族達が沸いて出てくると思いますので、少しだけで構いませんので顔と名前を覚えてやって下さい」
「善処します……」
有無を言わさぬケイリオルさんにより、私のパーティー参加が決定してしまった。
帰り際に、パーティーに来る予定の帝国貴族達の名簿と備考が記された分厚い冊子を渡された。
「近年色々ありまして帝国貴族も減ってますし、王女殿下ならばきっと直ぐに全て覚えられるでしょう」
そう、ケイリオルさんが期待しているかのように言うので……私は渋々、仕事などの合間にその冊子に目を通すようになった。
私が必死に貴族達の名前と備考を記憶している中、何故か周りで皆がピリピリとしていた。しかし私は暗記作業で忙しく、そちらに気を割く余裕が無かった。
なのでそれが一体何だったのか、私が知ったのはパーティー初日の前夜だったのであった。
♢♢
三日間に及ぶ皇太子の十五歳の誕生日パーティー。それを目前に控えた王城は慌ただしく、忙しなく日々を駆け抜ける。
何かと仕事を押し付けられ巻き込まれがちな東宮とてそれは変わらない。
そんな中、恒久的な人員不足に悩まされる東宮の者達は、他の仕事が手につかなくなる程の問題に直面したのであった。
それは──……アミレスの社交界デビューにおける、パートナー問題。
約七年越しに社交界デビューをする機会を得た彼女が、華々しく完璧なデビューを果たす為にはそれ相応のパートナーの存在が必須。
失敗は許されない。このパートナー選びは、様々な面から鑑みて厳正なる審査を行うべきであると彼等は話し合った。
そして──、
「さあ、いざ尋常に勝負といこうじゃねーか」
「こればかりは負けてられないな……」
「王女殿下をお傍でお守りするのは私だ」
「ふふん、ぼくだって勝ちを譲るつもりはないからね!」
初っ端から肉弾戦で勝負を決めようとしていた。脳筋の集まりである。
エンヴィー、マクベスタ、イリオーデ、シュヴァルツの四人が闘志を燃やして視線を交える。彼等はそれぞれの思惑のもと、アミレスのパートナーの座をかけて争っていた。
話し合いなどあくまでも建前。一瞬にして普通の話し合いは幕を閉じ、肉体言語による話し合いが開幕しようとしていた。
が、しかし。それを未然に防ぐ為にメイシアが動き出す。
「皆さんお待ちください。アミレス様の宮で暴れるなど言語道断、そのような野蛮な人をアミレス様のパートナーになど出来ません!」
十二歳の少女が、くだらない争いを繰り広げる男達に向け果敢に諌言を呈する。
許されるならば自身もまたこの争いに参戦し、アミレスのパートナーになりたいところをぐっと我慢して、メイシアはアミレスの為にとこの場を取り仕切る。
(わたしだって、男だったならば喜んでアミレス様のパートナーに立候補してたもん。でもわたしは女で……それに、パーティーにはお父さんとお母さんと一緒に行く事になってるから、どうしてもアミレス様のお傍にはいられない。だからせめてアミレス様のパートナーに相応しい人をきっちり見定めないと!)
メイシアの瞳に燃え盛るような決意が宿る。
魔女だ化け物だと罵られる為かメイシアもこれまで殆ど社交界には出ておらず、社交界の事についてはあまり詳しくないのだが……数少ない己の経験をもとに、彼女はアミレスのパートナーを慎重に選ぼうとしていた。
仕事のお手伝いをしている時、ケイリオルさんがおもむろに切り出したのだ。
「忙しくて言い忘れていたのですが、皇太子殿下の誕生パーティーにて改めて王女殿下の社交界デビューも行いますので。ご準備の程を」
「──え?」
耳を疑った。その時書いていた文字はぐにゃりと歪み、メイシアは「アミレス様が……ついに……!?」と手に持つ書類をバサバサバサと地に落とし、イリオーデは「王女殿下の……社交界デビュー……!」と目を輝かせていた。
…………はい? 社交界デビュー? 私の?
頭の回転が追いつかない。アミレスの社交界デビューは失敗したじゃない。六歳の頃に建国祭に出られなくてさ。お陰様で社交活動しなくて済んでラッキー☆なんて考えてたのよ、私。
それなのに今更社交界デビューですって?
「じょ、冗談……ですよね?」
頬をひくつかせて確認すると、
「皇帝陛下から頑張って許可をいただきましたので、これが冗談になるのは私としても困りますねぇ」
勿論本当ですよ。とケイリオルさんはサムズアップする。
何で頑張って許可取ったのよこの人〜〜〜っ! そんなの一生取らなくて良かったのに! ゲームのアミレスは社交界デビューしなかったんだから、私だってしなくてもよくないかしら?!
「さしあたって、パーティーでのパートナーなども決めておいて下さいまし。ああそれと、恐らく王女殿下に挨拶をする貴族達が沸いて出てくると思いますので、少しだけで構いませんので顔と名前を覚えてやって下さい」
「善処します……」
有無を言わさぬケイリオルさんにより、私のパーティー参加が決定してしまった。
帰り際に、パーティーに来る予定の帝国貴族達の名簿と備考が記された分厚い冊子を渡された。
「近年色々ありまして帝国貴族も減ってますし、王女殿下ならばきっと直ぐに全て覚えられるでしょう」
そう、ケイリオルさんが期待しているかのように言うので……私は渋々、仕事などの合間にその冊子に目を通すようになった。
私が必死に貴族達の名前と備考を記憶している中、何故か周りで皆がピリピリとしていた。しかし私は暗記作業で忙しく、そちらに気を割く余裕が無かった。
なのでそれが一体何だったのか、私が知ったのはパーティー初日の前夜だったのであった。
♢♢
三日間に及ぶ皇太子の十五歳の誕生日パーティー。それを目前に控えた王城は慌ただしく、忙しなく日々を駆け抜ける。
何かと仕事を押し付けられ巻き込まれがちな東宮とてそれは変わらない。
そんな中、恒久的な人員不足に悩まされる東宮の者達は、他の仕事が手につかなくなる程の問題に直面したのであった。
それは──……アミレスの社交界デビューにおける、パートナー問題。
約七年越しに社交界デビューをする機会を得た彼女が、華々しく完璧なデビューを果たす為にはそれ相応のパートナーの存在が必須。
失敗は許されない。このパートナー選びは、様々な面から鑑みて厳正なる審査を行うべきであると彼等は話し合った。
そして──、
「さあ、いざ尋常に勝負といこうじゃねーか」
「こればかりは負けてられないな……」
「王女殿下をお傍でお守りするのは私だ」
「ふふん、ぼくだって勝ちを譲るつもりはないからね!」
初っ端から肉弾戦で勝負を決めようとしていた。脳筋の集まりである。
エンヴィー、マクベスタ、イリオーデ、シュヴァルツの四人が闘志を燃やして視線を交える。彼等はそれぞれの思惑のもと、アミレスのパートナーの座をかけて争っていた。
話し合いなどあくまでも建前。一瞬にして普通の話し合いは幕を閉じ、肉体言語による話し合いが開幕しようとしていた。
が、しかし。それを未然に防ぐ為にメイシアが動き出す。
「皆さんお待ちください。アミレス様の宮で暴れるなど言語道断、そのような野蛮な人をアミレス様のパートナーになど出来ません!」
十二歳の少女が、くだらない争いを繰り広げる男達に向け果敢に諌言を呈する。
許されるならば自身もまたこの争いに参戦し、アミレスのパートナーになりたいところをぐっと我慢して、メイシアはアミレスの為にとこの場を取り仕切る。
(わたしだって、男だったならば喜んでアミレス様のパートナーに立候補してたもん。でもわたしは女で……それに、パーティーにはお父さんとお母さんと一緒に行く事になってるから、どうしてもアミレス様のお傍にはいられない。だからせめてアミレス様のパートナーに相応しい人をきっちり見定めないと!)
メイシアの瞳に燃え盛るような決意が宿る。
魔女だ化け物だと罵られる為かメイシアもこれまで殆ど社交界には出ておらず、社交界の事についてはあまり詳しくないのだが……数少ない己の経験をもとに、彼女はアミレスのパートナーを慎重に選ぼうとしていた。