だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「あ? ……これこんな香りだったか?」
しかし昔の香りなど記憶にあまり残っていない。
当時、品種改良とか色々試した結果この温室内でだけ咲く事が可能となったこの青薔薇達。青薔薇が完成した達成感から興味を失い、それ以来放置していたのだが……よく枯れてなかったな。
とりあえず良さげな薔薇を片っ端から摘み、適当に保護魔法で枯れないようにする。それをいい感じに束にすると。
「よし、青薔薇の花束完成っと」
我ながらなんという素晴らしいセンス。これならアミレスも、精霊共からのプレゼントより喜ぶ事だろう。
事の発端はアミレスの誕生日。オレサマは魔界にある何かの種族の宝玉だとか言われていた特殊なサファイアを部下に加工させ、指輪にして贈った。オレサマからの贈り物、しかも指輪とか魔界の女共が喚き散らしそうなぐらいすっげーモンを贈ったのにアイツの反応はオレサマの想像よりも控えめだった。
……おかしい。女ってのはとにかく高価なモンや宝石類に目がなくてオレサマみたいな面が整った男から貰うと無条件で喜ぶものじゃねぇのか?
そう、当時のオレサマは思った訳で。改めて考えるとあの時はシュヴァルツだったのだから想像通りに行く訳がなかったのだ。
それはともかく。見た感じだと、オレサマより精霊共からのプレゼントの方が喜んでる様子だったのが気に入らなかった。
だからオレサマは改めて何かプレゼントする事を画策したのだ。とびきり希少で特別なもの。これならばきっと、アイツも精霊共から貰ったドレスよりも喜ぶだろう。
「んじゃ、用事も終わった事だし人間界に戻るか」
結構な本数の青薔薇の花束を抱え、オレサマは今一度擬人化する。シュヴァルツの姿になると、青薔薇の花束が予想以上に大きく感じた。
両手にそれを抱えて悪虐の門を開き、人間界に戻る。空が少しずつ明るくなっていて、そろそろ朝になる頃合だと分かった。
しかし、ぼくはその場で呆然としていた。
「うわ、最悪。出るとこ間違えたじゃねぇか……」
どうやら扉を出す場所を間違えてしまったらしい。東宮の裏手ではなく、見慣れぬ室内にぼくは立っていた。
仕方なく透明化してその部屋を出て歩き回る。すると、この建物が見た目はともかく体に馴染みのある構造である事に気づいた。
ああ、成程な。ここは西宮か北宮のどちらかって事か。そんで壁に飾られてるモンとかを見る限り……多分ここは北宮だな。
ならば向かう方向は何となく分かる。そうやって東宮を目指して歩いている時、三つの皇宮に囲まれるように存在する庭園の前で足が止まった。
そこに、その庭園の中に──明らかに異質な何かが立っていたのだ。
「……誰だ、アレ……」
思わず心に抱いた感想が言葉としてこぼれ出す。
半透明な全身。花々と同じように風に舞う桃色の髪。上質そうなドレスを身に纏うその女は、頬に一筋の光を伝わせて庭園の真ん中にある木を見上げていた。
……──あの女、まさか。
その正体に僅かな心当たりを覚え、ぼくの口元は勝手に鋭く弧を描く。
「面白い事になるなァ、これは」
いつかの未来で起きるであろう面白い事態に思い馳せ、ぼくは上機嫌なまま東宮の部屋へと戻った。
しかし昔の香りなど記憶にあまり残っていない。
当時、品種改良とか色々試した結果この温室内でだけ咲く事が可能となったこの青薔薇達。青薔薇が完成した達成感から興味を失い、それ以来放置していたのだが……よく枯れてなかったな。
とりあえず良さげな薔薇を片っ端から摘み、適当に保護魔法で枯れないようにする。それをいい感じに束にすると。
「よし、青薔薇の花束完成っと」
我ながらなんという素晴らしいセンス。これならアミレスも、精霊共からのプレゼントより喜ぶ事だろう。
事の発端はアミレスの誕生日。オレサマは魔界にある何かの種族の宝玉だとか言われていた特殊なサファイアを部下に加工させ、指輪にして贈った。オレサマからの贈り物、しかも指輪とか魔界の女共が喚き散らしそうなぐらいすっげーモンを贈ったのにアイツの反応はオレサマの想像よりも控えめだった。
……おかしい。女ってのはとにかく高価なモンや宝石類に目がなくてオレサマみたいな面が整った男から貰うと無条件で喜ぶものじゃねぇのか?
そう、当時のオレサマは思った訳で。改めて考えるとあの時はシュヴァルツだったのだから想像通りに行く訳がなかったのだ。
それはともかく。見た感じだと、オレサマより精霊共からのプレゼントの方が喜んでる様子だったのが気に入らなかった。
だからオレサマは改めて何かプレゼントする事を画策したのだ。とびきり希少で特別なもの。これならばきっと、アイツも精霊共から貰ったドレスよりも喜ぶだろう。
「んじゃ、用事も終わった事だし人間界に戻るか」
結構な本数の青薔薇の花束を抱え、オレサマは今一度擬人化する。シュヴァルツの姿になると、青薔薇の花束が予想以上に大きく感じた。
両手にそれを抱えて悪虐の門を開き、人間界に戻る。空が少しずつ明るくなっていて、そろそろ朝になる頃合だと分かった。
しかし、ぼくはその場で呆然としていた。
「うわ、最悪。出るとこ間違えたじゃねぇか……」
どうやら扉を出す場所を間違えてしまったらしい。東宮の裏手ではなく、見慣れぬ室内にぼくは立っていた。
仕方なく透明化してその部屋を出て歩き回る。すると、この建物が見た目はともかく体に馴染みのある構造である事に気づいた。
ああ、成程な。ここは西宮か北宮のどちらかって事か。そんで壁に飾られてるモンとかを見る限り……多分ここは北宮だな。
ならば向かう方向は何となく分かる。そうやって東宮を目指して歩いている時、三つの皇宮に囲まれるように存在する庭園の前で足が止まった。
そこに、その庭園の中に──明らかに異質な何かが立っていたのだ。
「……誰だ、アレ……」
思わず心に抱いた感想が言葉としてこぼれ出す。
半透明な全身。花々と同じように風に舞う桃色の髪。上質そうなドレスを身に纏うその女は、頬に一筋の光を伝わせて庭園の真ん中にある木を見上げていた。
……──あの女、まさか。
その正体に僅かな心当たりを覚え、ぼくの口元は勝手に鋭く弧を描く。
「面白い事になるなァ、これは」
いつかの未来で起きるであろう面白い事態に思い馳せ、ぼくは上機嫌なまま東宮の部屋へと戻った。