だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「あの、王女殿下。つかぬ事をお伺いしますが……『ホッカイドー』と『サイタマ』とは一体何なのでしょうか? 先程のカイル王子との会話が妙に気になってしまいまして」
「ホッカイドー? 何だそれ、精霊界でも聞いた事ねーな」
「オレもだ。サイタマとやらも今まで聞いた事が無い」
イリオーデの疑問に師匠とマクベスタが反応する。
そう言えばあの時、カイルの奴全然普通に共通語で喋ってたじゃん。そりゃあ同じ部屋にいたイリオーデにも聞かれてたでしょうね。……これ、なんて説明しよう。
うーん、と暫し悩んでから私ははぐらかす事に決めた。
「……隠語みたいなものよ。そのまま喋ってたら内容が分かっちゃうじゃない?」
「隠語。あの会話の流れでですか」
イリオーデがボソリと呟いたそれが、鋭利に私に突き刺さる。痛いところを突かれてしまった。
まぁ確かに国が暑いどうこうの話の流れで突然隠語が飛び出すのはかなり意味不明よね。あまりの正論で耳が痛いわ。
「相変わらず、お前とカイルは仲がいいな……」
拗ねたような様子で、マクベスタはボソッと呟いた。
はっ、これはあれかしら。『お前の相棒はオレなんだが』的なあれかしら? ……いや自意識過剰が過ぎるか。これは多分あっちね、『オレだって同年代の男友達が欲しい』ってやつね。失礼だとは思うけど、確かにマクベスタもあんまり友達はいないみたいだから……。
「大丈夫よ、マクベスタだってもうとっくにあいつと仲良いわよ!」
サムズアップして安心してくれと伝えると、
「何が大丈夫なのか分からないが……正直な所、オレは、少し……カイルの事が苦手なんだ」
眉根を下げて、マクベスタが突然のカミングアウトをした。二人もかれこれもう半年以上は関わっていると思うのだけど、まさかマクベスタがカイルの事を苦手だと感じていたなんて。
「どうして? 私が言うのもあれだけど、カイルは結構接しやすいと思うけど……」
「それはそうなんだが、なんと言うか、オレが普段はしないような言動をする度にカイルが過剰な反応……というか、変な反応をするから」
「あっ」
察してしまった。マクベスタは知らないものね、カイルにめちゃくちゃ推されている事を。そりゃあマクベスタからしたら変態じみた意味不明な反応でしょうね。
「それはー……うん、彼の持病みたいなものだから気にしないであげて。顔の良い男に弱いのよ、カイルは」
どうして私がカイルの奇行のフォローまでしてあげる必要があるのかは分からないが、マクベスタに気にしないでと伝える。
しかし、マクベスタは更に顔を暗くして、
「そうか。……お前達は、お互いに詳しいんだな」
そこで会話を打ち切った。
なんだその反応。まさか、私が知らない所ではそこまでカイルの言動が目に余るのかしら。後で私からも説教しよう。うちのマクベスタにあんまり変な事しないでちょうだい! って。
「あー、話は変わるんすけど。姫さんは本当に結婚願望とか無いんすか? お嬢さんから前にそう聞いたんすけど」
「本当に話変わったなぁ」
「はは。まぁいいじゃないっすか。結構気になってたんすよ、これ」
師匠が話題を変えると、マクベスタとイリオーデも興味深そうにこちらに視線を向けて来た。
そんなに私の結婚願望って気になる事なのかな……でも、確かに私もメイシアの将来は気になるし、多分そういうものなんだろう。
「無いよ、そんなもの。だって自分の明日すらも分からない状態で生きてるのに、他の人の人生にまで責任を持てないから」
病める時も健やかなる時も──という祝言の誓いがあるけれど、私はそれを誓う事も守る事も出来ないだろう。だってそれを誓ってしまったなら、私は相手を残して、相手を一生その誓いで縛って死ぬ事になる。それは嫌だ。そんな悲劇、私自身が許せない。
だから私は、いつ殺されるかも分からないのにそんな自分勝手な誓いをしたくない。
「それに……結婚って、愛する人同士がするものでしょう? ならきっと、私には無理だよ」
愛されたいと願うものの、正直に言えば何が愛なのか私にはよく分からない。分からないものを求めているなんて、かなり意味不明よね。
だから私からしても、何をどうすれば人を愛する事になるのかが分からない訳でして。愛される事も愛する事も分からない私に、結婚なんてものは一番不可能な事だろう。
これもまた、結婚願望というものが無い要因の一つだと思う。
「これで師匠の疑念の答えになったかな?」
「……あ、そっ……すね。教えてくれてありがとうございます、姫さん」
師匠は思い詰めたような表情で、ぎこちなく笑みを浮かべた。
気まずい。聞かれたから答えただけなのに、どうしてここまで気まずくなるのか……。普通の女の子なら人並みに持ってるであろうそれを、私が持っていないからだろうなぁ。
そんな気まずい空気の中私は執務室に戻り、能天気なカイルに出迎えられつつ仕事を再開した。
「ホッカイドー? 何だそれ、精霊界でも聞いた事ねーな」
「オレもだ。サイタマとやらも今まで聞いた事が無い」
イリオーデの疑問に師匠とマクベスタが反応する。
そう言えばあの時、カイルの奴全然普通に共通語で喋ってたじゃん。そりゃあ同じ部屋にいたイリオーデにも聞かれてたでしょうね。……これ、なんて説明しよう。
うーん、と暫し悩んでから私ははぐらかす事に決めた。
「……隠語みたいなものよ。そのまま喋ってたら内容が分かっちゃうじゃない?」
「隠語。あの会話の流れでですか」
イリオーデがボソリと呟いたそれが、鋭利に私に突き刺さる。痛いところを突かれてしまった。
まぁ確かに国が暑いどうこうの話の流れで突然隠語が飛び出すのはかなり意味不明よね。あまりの正論で耳が痛いわ。
「相変わらず、お前とカイルは仲がいいな……」
拗ねたような様子で、マクベスタはボソッと呟いた。
はっ、これはあれかしら。『お前の相棒はオレなんだが』的なあれかしら? ……いや自意識過剰が過ぎるか。これは多分あっちね、『オレだって同年代の男友達が欲しい』ってやつね。失礼だとは思うけど、確かにマクベスタもあんまり友達はいないみたいだから……。
「大丈夫よ、マクベスタだってもうとっくにあいつと仲良いわよ!」
サムズアップして安心してくれと伝えると、
「何が大丈夫なのか分からないが……正直な所、オレは、少し……カイルの事が苦手なんだ」
眉根を下げて、マクベスタが突然のカミングアウトをした。二人もかれこれもう半年以上は関わっていると思うのだけど、まさかマクベスタがカイルの事を苦手だと感じていたなんて。
「どうして? 私が言うのもあれだけど、カイルは結構接しやすいと思うけど……」
「それはそうなんだが、なんと言うか、オレが普段はしないような言動をする度にカイルが過剰な反応……というか、変な反応をするから」
「あっ」
察してしまった。マクベスタは知らないものね、カイルにめちゃくちゃ推されている事を。そりゃあマクベスタからしたら変態じみた意味不明な反応でしょうね。
「それはー……うん、彼の持病みたいなものだから気にしないであげて。顔の良い男に弱いのよ、カイルは」
どうして私がカイルの奇行のフォローまでしてあげる必要があるのかは分からないが、マクベスタに気にしないでと伝える。
しかし、マクベスタは更に顔を暗くして、
「そうか。……お前達は、お互いに詳しいんだな」
そこで会話を打ち切った。
なんだその反応。まさか、私が知らない所ではそこまでカイルの言動が目に余るのかしら。後で私からも説教しよう。うちのマクベスタにあんまり変な事しないでちょうだい! って。
「あー、話は変わるんすけど。姫さんは本当に結婚願望とか無いんすか? お嬢さんから前にそう聞いたんすけど」
「本当に話変わったなぁ」
「はは。まぁいいじゃないっすか。結構気になってたんすよ、これ」
師匠が話題を変えると、マクベスタとイリオーデも興味深そうにこちらに視線を向けて来た。
そんなに私の結婚願望って気になる事なのかな……でも、確かに私もメイシアの将来は気になるし、多分そういうものなんだろう。
「無いよ、そんなもの。だって自分の明日すらも分からない状態で生きてるのに、他の人の人生にまで責任を持てないから」
病める時も健やかなる時も──という祝言の誓いがあるけれど、私はそれを誓う事も守る事も出来ないだろう。だってそれを誓ってしまったなら、私は相手を残して、相手を一生その誓いで縛って死ぬ事になる。それは嫌だ。そんな悲劇、私自身が許せない。
だから私は、いつ殺されるかも分からないのにそんな自分勝手な誓いをしたくない。
「それに……結婚って、愛する人同士がするものでしょう? ならきっと、私には無理だよ」
愛されたいと願うものの、正直に言えば何が愛なのか私にはよく分からない。分からないものを求めているなんて、かなり意味不明よね。
だから私からしても、何をどうすれば人を愛する事になるのかが分からない訳でして。愛される事も愛する事も分からない私に、結婚なんてものは一番不可能な事だろう。
これもまた、結婚願望というものが無い要因の一つだと思う。
「これで師匠の疑念の答えになったかな?」
「……あ、そっ……すね。教えてくれてありがとうございます、姫さん」
師匠は思い詰めたような表情で、ぎこちなく笑みを浮かべた。
気まずい。聞かれたから答えただけなのに、どうしてここまで気まずくなるのか……。普通の女の子なら人並みに持ってるであろうそれを、私が持っていないからだろうなぁ。
そんな気まずい空気の中私は執務室に戻り、能天気なカイルに出迎えられつつ仕事を再開した。