だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
194.貴族会議4
「……どうやら私《わたくし》の言葉を理解してくれたようだから、今度はこちらが質問に答えましょう。この教育法改正案の発案者も、資料の作成者も、どちらもこの私《わたくし》よ。この件についてララルス侯爵やシャンパージュ伯爵に聞いた所で、大した返答は望めないわ」
だって教育法改正案については二人にもほとんど話してないもの。二人共それぞれ当主として忙しい上、最近は貧民街事業の方にも力を貸してくれている。そんな中、ケイリオルさんからの無茶振りにまで巻き込む訳にはいかなかったから。
この話を共有したのは現在東宮にいる人達だけ。近頃はメイシアも商会の勉強だとかで忙しく、東宮には久しく来ていないので彼女も知らない。
ハイラは……なんやかんやで私の知らない方法で把握してそうだけど、結局のところ教育法改正案は私の頭の中にしか無いので、例えハイラと言えども深い話は出来ないだろう。
「これになんの問題があるのかしら。次は、発案者が十三歳の子供だからこの法案は認められない──とか巫山戯た事を言うのかしら。でも仕方ないものね、我等が帝国の未来よりも今の保身しか考えていない不忠者は、発案者によって意見を変えるみたいだもの」
煽るように、私は貴族達に笑顔を向けた。貴族達は頬に冷や汗を浮かべ、露骨な不満を顔に出す。余計な事言いやがって……なんて思ってそうな顔ね。
私の案を否定しては、帝国よりも己の事ばかりを考えている不忠者であると表立って名乗り出るようなもの。それをあのケイリオルさんがいる場にてしてしまった日には、どうなるか分かったもんじゃない。
そうだ、これは脅迫だ。己の保身の為に私の案を否定するか、己の命の為に私の案に賛成するか。
ふふ。これで保身に走る貴族はいなくなったでしょう。後は……どうしてもこれを認めたくなくて、何かと適当に理由をつけてくる者が出てくるのかな。まぁ、大人しく引き下がるつもりはないけれど。
「王女殿下、こちらの義務教育制度なのですが……具体的にはどのような内容を子供達に教えるつもりなのでしょうか。加えて、これを義務化しては一定数の家庭が更なる貧困に陥ると予想されますが……その辺りはどうお考えなのか聞いても?」
冷えきった空気の中、一人の貴族が挙手をして質問を口にした。予想外にも真面目な質問に少し目を丸くしつつ、私はそれに答える。
「そうね。教える内容としては一般教養が主になるでしょう。他には……ある程度の怪我なら自分で応急手当が出来る程度の医学知識も教えたいと思っているわ。まぁ、内容は何にせよ、全ての者に平等に学ぶ機会を与えたいと私《わたくし》は考えていますの」
「全ての者に平等に学ぶ機会を、ですか」
「えぇ。しかしお前の発言通り、義務化によってこれまではなかった出費が発生する可能性もある。ただ、これは簡単に解決出来る問題ですのよ」
「簡単に……? どうやって?」
いいな、この貴族。さっきの人とは違って凄い真面目に私の話を聞いて、更に踏み込んだ事を聞いてくれる。
そうそう。私はこういうのを求めていたのよ。
「簡単な話。そもそも、授業料を取らなければいいのです」
ザワッ、と今日一のどよめきが聞こえてくる。まぁそうよね、貴方達からすれば学校は高い金を払って高位貴族とのコネを作る為の場所だっただろうから。
腐りきった貴族の皆様の固定観念をぶっ壊してやりましょうか。
「就学支援制度と内容が重なりますけれど……義務教育範囲の学費は全て免除──教育の無償化を、私《わたくし》は併せて提案しますわ」
ニヤリと笑って言い放つ。
「無償化なんていくら何でも無茶だ……」
「ほら見ろ、やっぱり何も知らない子供の机上の空論なんだよ」
「大赤字もいい所だ……王女は国庫を潰すつもりなのか?」
「財政をよく知りもしない癖に子供が出しゃばるんじゃない……」
「これだから温室育ちの子供は」
それと同時に会議場のあちこちから批難の声があがる。荒唐無稽な発言だと一笑に付されてしまった。予想の範疇だけども。
そもそも……この貴族会議で議題にあがると言う事は、既に二度の審査を終えていてほぼ実現可能だから。という前提を忘れているのかしら、この貴族達は。
はぁ…………と呆れをこぼした時だった。予想外の声が、会議場に響いたのである。
「──口を噤め。発言は挙手をしてから、という言葉を忘れたのか。何か意見があるのならば挙手をして発言するがいい」
フリードル……? 急にどうしたの、そんな私の手助けをするような…………。
唖然としながら暫しフリードルを見つめていたら、ふと、目が合ってしまった。というか、フリードルも律儀にちょっとだけ挙手してる。真面目か??
「アミレス・ヘル・フォーロイト。教育の無償化及び義務教育制度についての更なる具体的な説明を要求する」
彼の冷たい視線が、雪のように私に降り注ぐ。
あぁなるほど。フリードルはこの改正案の話を聞きたくて貴族達を黙らせたのか。……駄目だわ、アミレスの感情に引っ張られて勘違いしてしまいそうになる。
だって教育法改正案については二人にもほとんど話してないもの。二人共それぞれ当主として忙しい上、最近は貧民街事業の方にも力を貸してくれている。そんな中、ケイリオルさんからの無茶振りにまで巻き込む訳にはいかなかったから。
この話を共有したのは現在東宮にいる人達だけ。近頃はメイシアも商会の勉強だとかで忙しく、東宮には久しく来ていないので彼女も知らない。
ハイラは……なんやかんやで私の知らない方法で把握してそうだけど、結局のところ教育法改正案は私の頭の中にしか無いので、例えハイラと言えども深い話は出来ないだろう。
「これになんの問題があるのかしら。次は、発案者が十三歳の子供だからこの法案は認められない──とか巫山戯た事を言うのかしら。でも仕方ないものね、我等が帝国の未来よりも今の保身しか考えていない不忠者は、発案者によって意見を変えるみたいだもの」
煽るように、私は貴族達に笑顔を向けた。貴族達は頬に冷や汗を浮かべ、露骨な不満を顔に出す。余計な事言いやがって……なんて思ってそうな顔ね。
私の案を否定しては、帝国よりも己の事ばかりを考えている不忠者であると表立って名乗り出るようなもの。それをあのケイリオルさんがいる場にてしてしまった日には、どうなるか分かったもんじゃない。
そうだ、これは脅迫だ。己の保身の為に私の案を否定するか、己の命の為に私の案に賛成するか。
ふふ。これで保身に走る貴族はいなくなったでしょう。後は……どうしてもこれを認めたくなくて、何かと適当に理由をつけてくる者が出てくるのかな。まぁ、大人しく引き下がるつもりはないけれど。
「王女殿下、こちらの義務教育制度なのですが……具体的にはどのような内容を子供達に教えるつもりなのでしょうか。加えて、これを義務化しては一定数の家庭が更なる貧困に陥ると予想されますが……その辺りはどうお考えなのか聞いても?」
冷えきった空気の中、一人の貴族が挙手をして質問を口にした。予想外にも真面目な質問に少し目を丸くしつつ、私はそれに答える。
「そうね。教える内容としては一般教養が主になるでしょう。他には……ある程度の怪我なら自分で応急手当が出来る程度の医学知識も教えたいと思っているわ。まぁ、内容は何にせよ、全ての者に平等に学ぶ機会を与えたいと私《わたくし》は考えていますの」
「全ての者に平等に学ぶ機会を、ですか」
「えぇ。しかしお前の発言通り、義務化によってこれまではなかった出費が発生する可能性もある。ただ、これは簡単に解決出来る問題ですのよ」
「簡単に……? どうやって?」
いいな、この貴族。さっきの人とは違って凄い真面目に私の話を聞いて、更に踏み込んだ事を聞いてくれる。
そうそう。私はこういうのを求めていたのよ。
「簡単な話。そもそも、授業料を取らなければいいのです」
ザワッ、と今日一のどよめきが聞こえてくる。まぁそうよね、貴方達からすれば学校は高い金を払って高位貴族とのコネを作る為の場所だっただろうから。
腐りきった貴族の皆様の固定観念をぶっ壊してやりましょうか。
「就学支援制度と内容が重なりますけれど……義務教育範囲の学費は全て免除──教育の無償化を、私《わたくし》は併せて提案しますわ」
ニヤリと笑って言い放つ。
「無償化なんていくら何でも無茶だ……」
「ほら見ろ、やっぱり何も知らない子供の机上の空論なんだよ」
「大赤字もいい所だ……王女は国庫を潰すつもりなのか?」
「財政をよく知りもしない癖に子供が出しゃばるんじゃない……」
「これだから温室育ちの子供は」
それと同時に会議場のあちこちから批難の声があがる。荒唐無稽な発言だと一笑に付されてしまった。予想の範疇だけども。
そもそも……この貴族会議で議題にあがると言う事は、既に二度の審査を終えていてほぼ実現可能だから。という前提を忘れているのかしら、この貴族達は。
はぁ…………と呆れをこぼした時だった。予想外の声が、会議場に響いたのである。
「──口を噤め。発言は挙手をしてから、という言葉を忘れたのか。何か意見があるのならば挙手をして発言するがいい」
フリードル……? 急にどうしたの、そんな私の手助けをするような…………。
唖然としながら暫しフリードルを見つめていたら、ふと、目が合ってしまった。というか、フリードルも律儀にちょっとだけ挙手してる。真面目か??
「アミレス・ヘル・フォーロイト。教育の無償化及び義務教育制度についての更なる具体的な説明を要求する」
彼の冷たい視線が、雪のように私に降り注ぐ。
あぁなるほど。フリードルはこの改正案の話を聞きたくて貴族達を黙らせたのか。……駄目だわ、アミレスの感情に引っ張られて勘違いしてしまいそうになる。