だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
アイツに前もって渡しておいたマーカー経由で、サベイランスちゃんを使って向こうの状況をたまに見ていた。だからアイツがヤバそうだって時にフォーロイト帝国に行けたんだ。
実際に会ったアミレスは、ゲームで見た時と大きく印象が違っていた。俺だって本来のカイルからかけ離れてるんだから当然だが。
そんなオフ会気分で訪れた帝国で、俺は速攻厄介事に巻き込まれた。だがまぁ、マクベスタに会えたんだからプライスレスってもんだよな。
そうやって暫く帝国に滞在するうちに分かった。……いや、なんなら少し観察していただけで分かった。
マクベスタはアミレスの事が好きなんだろうなーと。アミレスからマクベスタとの話は幾らか聞いてたから、その結論に至るまで時間はかからなかった。
さてどうしたものか。そう、俺は悩むようになった。オタクとしては推しの初恋を叶えてやりたいし、転生者としては仲間の願いを叶えてやりたい。
マクベスタとアミレスがくっついた上で幸せになってくれりゃぁ、文句無しの万々歳なんだが……それは無理だろうからな。今のアミレスには。
俺に出来るのはアミレスの立場が危うい事を、少しでもアイツの取り巻きに教え忠告する事ぐらいだ。
だから可能な限りの情報を、アミレスの過保護な取り巻き達に教えた。その上で俺はどこまでも協力する姿勢を見せた。
俺の望みは満員御礼の大団円。その為なら割と何だってするつもりでいるからな。
その為、俺はアミレスと目指せハッピーエンド同盟を組み、この世界をどうにかして望むとおりの結末に導こうと決めたのだ───。
「治癒は終わりました。後はもう、ご本人の目覚める意思次第です」
物思いに耽ける中、エフーイリルによる兄貴の治癒が終わったようで。柔らかな微笑みと眼差しを兄貴に向けて、エフーイリルはそう告げた。
「ありがとうございます、大司教様」
「お礼を言われるような事はしておりません。これは大司教として当然の役目ですから」
微笑みを絶やさず、ハッキリと言い切ったエフーイリル。流石は大司教だと感心していた所で、ピクリと、兄貴の指先が動いた気がした。
その直後、僅かな震えを伴いながらその重い瞼は開かれた。
「キール!」
「……──かあ、さん……ぼく、ねむ、ってた……?」
大粒の涙を浮かべ、母さんは兄貴に抱き着いた。張り付いたような掠れた声で、兄貴は力無く言葉を漏らす。
「えぇ、えぇそうよ……っ、あなた、一年以上眠ってたのよ……!!」
「しん……ぱい、かけて……ごめんな、さい」
「謝らないで。あなたは悪くない、悪くないから……っ」
ボロボロと涙を流しながら、母さんはその存在を確かめるように何度も兄貴を抱きしめた。
その最中で、ふと兄貴と目が合った。
「起きるのがおせーよ、兄貴。お陰様で結構苦労してんだぜ?」
「……そう、か。おはよう、カイル」
「……おう。おはよう、兄貴」
母さんの肩越しに兄貴は微笑んだ。そんな兄貴に向け、俺も口角を上げて笑顔を作る。
さてと……兄貴の回復は確認出来たし、忙しい大司教様をこんな所に長時間いさせる訳にはいかないからな。そろそろ送らねーと。
「兄貴もこうして目覚めた事だし、俺は大司教様を神殿都市まで送ってくるから」
熱い抱擁を交わす母さん達にそう伝えて、俺はエフーイリルに視線を送る。彼は「よろしくお願いします」と言って小さく頭を下げた。
「神殿都市の前までで大丈夫ですか?」
「はい。それで問題ありません」
神殿都市の結界は内側からなら瞬間転移で出られるものの、外側から瞬間転移で侵入する事は出来ない事になっている。だがしかし、実はサベイランスちゃんを使えばその結界すらも素通りして侵入出来てしまうのだが……流石に大司教の前でそんな事出来ないし、まず人前でサベイランスちゃんを使う訳にはいかない。
だからごめんな、サベイランスちゃん。とサベイランスちゃんを入れている腰に提げた鞄をそっと撫でる。
パッと顔を上げて、俺はエフーイリルと共に瞬間転移する。神殿都市の前辺りに出るよう頑張って気合いで調整し、無事に神殿都市周辺に飛べた。そこでエフーイリルに改めて感謝を伝えてから、俺はまた瞬間転移でハミルディーヒ王国に戻った。
兄貴も目覚めた事だし、継承権争いはもう気にしなくていい。親父もいい加減文句言うのもやめてくれるだろう。
なら、もう明日の準備に戻っていいか。
「母さん。俺、明日から数日間ぐらい友達と遊ぶから城空けるね」
「せっかくキールが目覚めたのに……?」
「友達と約束しちまったからな。兄貴と母さんにも何か土産買ってくるよ」
子犬のような表情で俺を見上げる母さんに「明日の準備があるから」と告げて、瞬間転移を使って自室に戻った。
何回も瞬間転移を使ったからか少し頭が痛む。副作用《コレ》があるから可能な限り魔法はサベイランスちゃん経由で使いたいのに、人目があるから今日は使えなかった。
はぁ、とため息をついて背伸びする。ぐちゃぐちゃに散らかった我が部屋を見渡して、
「……うん、とりあえず一回片付けするか」
俺はまず、片付けを始めたのだった…………。
実際に会ったアミレスは、ゲームで見た時と大きく印象が違っていた。俺だって本来のカイルからかけ離れてるんだから当然だが。
そんなオフ会気分で訪れた帝国で、俺は速攻厄介事に巻き込まれた。だがまぁ、マクベスタに会えたんだからプライスレスってもんだよな。
そうやって暫く帝国に滞在するうちに分かった。……いや、なんなら少し観察していただけで分かった。
マクベスタはアミレスの事が好きなんだろうなーと。アミレスからマクベスタとの話は幾らか聞いてたから、その結論に至るまで時間はかからなかった。
さてどうしたものか。そう、俺は悩むようになった。オタクとしては推しの初恋を叶えてやりたいし、転生者としては仲間の願いを叶えてやりたい。
マクベスタとアミレスがくっついた上で幸せになってくれりゃぁ、文句無しの万々歳なんだが……それは無理だろうからな。今のアミレスには。
俺に出来るのはアミレスの立場が危うい事を、少しでもアイツの取り巻きに教え忠告する事ぐらいだ。
だから可能な限りの情報を、アミレスの過保護な取り巻き達に教えた。その上で俺はどこまでも協力する姿勢を見せた。
俺の望みは満員御礼の大団円。その為なら割と何だってするつもりでいるからな。
その為、俺はアミレスと目指せハッピーエンド同盟を組み、この世界をどうにかして望むとおりの結末に導こうと決めたのだ───。
「治癒は終わりました。後はもう、ご本人の目覚める意思次第です」
物思いに耽ける中、エフーイリルによる兄貴の治癒が終わったようで。柔らかな微笑みと眼差しを兄貴に向けて、エフーイリルはそう告げた。
「ありがとうございます、大司教様」
「お礼を言われるような事はしておりません。これは大司教として当然の役目ですから」
微笑みを絶やさず、ハッキリと言い切ったエフーイリル。流石は大司教だと感心していた所で、ピクリと、兄貴の指先が動いた気がした。
その直後、僅かな震えを伴いながらその重い瞼は開かれた。
「キール!」
「……──かあ、さん……ぼく、ねむ、ってた……?」
大粒の涙を浮かべ、母さんは兄貴に抱き着いた。張り付いたような掠れた声で、兄貴は力無く言葉を漏らす。
「えぇ、えぇそうよ……っ、あなた、一年以上眠ってたのよ……!!」
「しん……ぱい、かけて……ごめんな、さい」
「謝らないで。あなたは悪くない、悪くないから……っ」
ボロボロと涙を流しながら、母さんはその存在を確かめるように何度も兄貴を抱きしめた。
その最中で、ふと兄貴と目が合った。
「起きるのがおせーよ、兄貴。お陰様で結構苦労してんだぜ?」
「……そう、か。おはよう、カイル」
「……おう。おはよう、兄貴」
母さんの肩越しに兄貴は微笑んだ。そんな兄貴に向け、俺も口角を上げて笑顔を作る。
さてと……兄貴の回復は確認出来たし、忙しい大司教様をこんな所に長時間いさせる訳にはいかないからな。そろそろ送らねーと。
「兄貴もこうして目覚めた事だし、俺は大司教様を神殿都市まで送ってくるから」
熱い抱擁を交わす母さん達にそう伝えて、俺はエフーイリルに視線を送る。彼は「よろしくお願いします」と言って小さく頭を下げた。
「神殿都市の前までで大丈夫ですか?」
「はい。それで問題ありません」
神殿都市の結界は内側からなら瞬間転移で出られるものの、外側から瞬間転移で侵入する事は出来ない事になっている。だがしかし、実はサベイランスちゃんを使えばその結界すらも素通りして侵入出来てしまうのだが……流石に大司教の前でそんな事出来ないし、まず人前でサベイランスちゃんを使う訳にはいかない。
だからごめんな、サベイランスちゃん。とサベイランスちゃんを入れている腰に提げた鞄をそっと撫でる。
パッと顔を上げて、俺はエフーイリルと共に瞬間転移する。神殿都市の前辺りに出るよう頑張って気合いで調整し、無事に神殿都市周辺に飛べた。そこでエフーイリルに改めて感謝を伝えてから、俺はまた瞬間転移でハミルディーヒ王国に戻った。
兄貴も目覚めた事だし、継承権争いはもう気にしなくていい。親父もいい加減文句言うのもやめてくれるだろう。
なら、もう明日の準備に戻っていいか。
「母さん。俺、明日から数日間ぐらい友達と遊ぶから城空けるね」
「せっかくキールが目覚めたのに……?」
「友達と約束しちまったからな。兄貴と母さんにも何か土産買ってくるよ」
子犬のような表情で俺を見上げる母さんに「明日の準備があるから」と告げて、瞬間転移を使って自室に戻った。
何回も瞬間転移を使ったからか少し頭が痛む。副作用《コレ》があるから可能な限り魔法はサベイランスちゃん経由で使いたいのに、人目があるから今日は使えなかった。
はぁ、とため息をついて背伸びする。ぐちゃぐちゃに散らかった我が部屋を見渡して、
「……うん、とりあえず一回片付けするか」
俺はまず、片付けを始めたのだった…………。