だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
 気を取り直して、それらの情報を元に作戦を立てる。
 決行は数時間後、夜の巡回が終わり、奴隷商の奴等が寝静まるであろう深夜。
 檻を開ける方法はある。逃走ルートも大雑把にだが定められた。だから本当に、問題は、私が皆を護れるかどうかなのだ。
 それが一番の鬼門である。いくら私がある程度戦えるとしても、流石に大人数相手だと勝機は無いに等しい。
 さてどうしたものかと悩んでいると、いつの間にか私の膝に頭を乗せていたシュヴァルツが、

「それなら夜の巡回の奴等を仲間に引き入れたらいーんじゃない? ぼくの所感でしかないけど、多分、話せば何とかなると思うよぅ」

 と、私の髪を触りながら提案してくる。

「うーん……じゃあそうしようかな」

 そう返すと、シュヴァルツは「そうしな〜」と楽しげに笑った。
 でもまぁ、一応、その夜の巡回の人達と話す為にも私は一度檻から出た方が良いだろう。巡回に来た男に襲いかかり、脅しながら話せばきっと首を縦に振ってくれる筈だ。
 そして私はシュヴァルツの頭を退けて立ち上がり、檻の錠の中に水を流し込んでそれを冷やし氷に変えた。
 それを壊れぬように引っ張ると、見事その錠の鍵穴の形の氷が完成していて、それを使って私は檻の扉を開けた。……勿論、氷の鍵は誰にも見られぬよう細心の注意を払った。
 私が鍵を開けて外に出た時、ナナラ達の「えっ」と言う声が聞こえて来た。私は一度振り返り檻の中の皆に向けて、

「……とりあえず、巡回の人達の事もあるから一度鍵をかけておくわね。後でまた、開けるから」

 そう小声で伝えて、通路に積まれている木箱の影に隠れる。今度は全身で全反射を行い、私の姿は周りより見えなくなっている筈だ。
 通路は等間隔で明かりが置かれているから、視界も良好だ。
 そうして待つ事数分。ついに夜の巡回の人達が現れた。ユリエアの情報通り三人の男で、その内の一人が確かに眼帯を……。
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