だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「ええそうよ。二択まで絞ったから、最後の決定は貴方に任せるわ」
何とか二択にまで絞って、それをカイルに見せる。片や丸い青色の宝石の耳飾りで、片や細長いエメラルドグリーンの宝石の耳飾り。
どちらがいいかと聞いてみると、カイルは宝石を見た瞬間にエメラルドグリーンの耳飾りを指さして、
「推しカラーのこっち」
真顔で即決した。まぁそうだと思ったわよ。貴方なら推しカラーを選ぶと思った。
次に靴。こればかりは私が口出しする事も特に無いので、カイルには自分で選ぶように言って、私は自分の服探しに向かった。
足を止めたのは色とりどりのドレスが飾られている一角。普段なら絶対に着ないような派手な色のドレスもあった。……このレベルの赤い服は、本当に普段なら絶対に着ないわね。せっかくだからこれにしようかしら。今は髪の色も紫だし、この赤もいけるかもしれない。
店員さんを呼び、試着させてくれと頼む。店の奥の試着部屋に通され、私はそこで一人で着替えに移る。店員さんが着るのを手伝ってくれたので無事にドレスを着る事が出来た。
「赤も意外といけるわね。今までずっと青ばかり着てたけれど……割とアリじゃないの」
鏡とにらめっこしながら、アミレスの新たな可能性に気づきを得る。桃色の髪とて違和感はあったものの、それなりに似合ってた時点で気づくべきだった。
「大変良くお似合いですお客様!」
「手伝ってくれてありがとう、感謝するわ。このまま着て行ってもいいかしら?」
「はい。ご購入していただけましたら、問題ありません」
「そう、なら買うわ」
「ありがとうございます!」
個人的に気に入ったのでこの赤いドレスの購入を決意。すると店員さんがドレスに合わせてヒールをいくつか持ってきてくれて、実際に履くなどしてそれもすぐに決まった。
赤いドレスとヒールに身を包んだ私は、元々着ていた服を鞄に突っ込んで試着部屋を出る。するとカイルが女性客に囲まれていて……、
「お兄さんぜひお名前を!」
「この後暇ですか?!」
「あのっ、あたしは向こうの居酒屋の娘の──」
「連れの女性は恋人ですかぁ?」
「ぁ……え、と…………っ」
逆ナンされてるわ、あの男。
しかし様子が変だ。グイグイと迫ってくる女性達に対して、あまりにもカイルがたじろいでいる……というか、怯んでいるようだ。顔色も少し悪いし、明らかに普通ではない。
「すみません、私の恋人にあまり近寄らないで欲しいのだけれど?」
助け舟を出すと、女性客達の視線が一気にこちらに集中する。それと同時にカイルに光明が差す。
女性客達の間を通ってカイルの元まで行き、私はその腕を引っ張って試着部屋の方に戻った。
「貴方も着替えてきなさい、ダーリン」
「…………了解、ハニー」
鳥肌が立つようなバカップルの演技をしつつ、カイルの背を押して人の少ない試着部屋に送り出す。カイルは少し困惑しながらもこちらの意図を理解したようで、柔らかく微笑んで試着部屋に入っていった。
それを待つ間、ネックレスや耳飾りを見物しては良さげなものを見つける。店員さんからの強いオススメもあって、流されるままにそれらの購入も決意した。
程なくして、ジャケットなどに身を包んだカイルが試着部屋より出て来た。流石は乙女ゲームのメイン枠の攻略対象と言うべきか、やはりどんな格好でも似合う。
「どう? 似合ってる?」
「バッチリよ。このまま出るからお会計行きましょう」
少し不安げなカイルにサムズアップしてバッチリと伝え、私達はまた並んでお会計場に向かう。店員さんがニコニコと笑って「会計は氷金貨三十二枚です!」と言ったものだから、思わずいい値段するわね……と含み笑う。そしてたくさんのお金を入れた袋を取り出た。
「高っ……俺そんなに金持ってねぇよ……」
カイルが隣でギョッとして頬をひくつかせる。そういえば、第四王子なのに何故か貧乏だって言ってたな。
「別にお金の事は気にしないでいいわよ。私が全部出すから」
「え」
「だって誘ったのは私なんだもの。当然でしょう?」
「え」
だから安心なさい。とカイルに告げて、私は氷金貨三十二枚をパッと出す。それに驚く店員さんと女性客達。そして呆然とするカイル。
それらを尻目に、私は堂々と会計に臨む。
「会員証はお持ちですか?」
「いえ、持ってないわ。今から作ってもらえるかしら?」
「かしこまりました!」
一人の店員さんが裏に行き、一枚の白いカードを持って戻ってくる。その裏に私は『スミレ』と記し、会員登録する。
何を隠そう、わざわざこの服飾店で買い物をした理由はこれなのだ。この会員証が欲しくて、私はこの店に来た。
この店の看板にはスコーピオン社のエンブレムがあって、スコーピオン社傘下の店である事は一目見て分かった。
私達が本日行く予定の場所──カジノ・スコーピオンは、スコーピオン社の会員証を持つ十二歳以上の人間なら誰でも入る事が出来る。
ただし、十七歳までの子供は一日で使用出来る元手が最大氷銀貨十枚と決められているらしい。更に借金システムも使えないらしい。要するに……子供にもチャンスは与えるが、身を滅ぼさないで済むように色々手は尽くしている模様。
『誰にでも、平等にチャンスを与えたい』
──そんな、スコーピオン社創立者の理念のもと、入場制限が緩和されているようなのだ。
そしてその会員証はスコーピオン社傘下の店で買い物をする時に使えるので、そこで作る事が出来る……と、アルベルトからの報告にあったので、私はドレスコード有りのカジノに着ていくドレスを買うついでに会員証を作る事にしたのだ。
何とか二択にまで絞って、それをカイルに見せる。片や丸い青色の宝石の耳飾りで、片や細長いエメラルドグリーンの宝石の耳飾り。
どちらがいいかと聞いてみると、カイルは宝石を見た瞬間にエメラルドグリーンの耳飾りを指さして、
「推しカラーのこっち」
真顔で即決した。まぁそうだと思ったわよ。貴方なら推しカラーを選ぶと思った。
次に靴。こればかりは私が口出しする事も特に無いので、カイルには自分で選ぶように言って、私は自分の服探しに向かった。
足を止めたのは色とりどりのドレスが飾られている一角。普段なら絶対に着ないような派手な色のドレスもあった。……このレベルの赤い服は、本当に普段なら絶対に着ないわね。せっかくだからこれにしようかしら。今は髪の色も紫だし、この赤もいけるかもしれない。
店員さんを呼び、試着させてくれと頼む。店の奥の試着部屋に通され、私はそこで一人で着替えに移る。店員さんが着るのを手伝ってくれたので無事にドレスを着る事が出来た。
「赤も意外といけるわね。今までずっと青ばかり着てたけれど……割とアリじゃないの」
鏡とにらめっこしながら、アミレスの新たな可能性に気づきを得る。桃色の髪とて違和感はあったものの、それなりに似合ってた時点で気づくべきだった。
「大変良くお似合いですお客様!」
「手伝ってくれてありがとう、感謝するわ。このまま着て行ってもいいかしら?」
「はい。ご購入していただけましたら、問題ありません」
「そう、なら買うわ」
「ありがとうございます!」
個人的に気に入ったのでこの赤いドレスの購入を決意。すると店員さんがドレスに合わせてヒールをいくつか持ってきてくれて、実際に履くなどしてそれもすぐに決まった。
赤いドレスとヒールに身を包んだ私は、元々着ていた服を鞄に突っ込んで試着部屋を出る。するとカイルが女性客に囲まれていて……、
「お兄さんぜひお名前を!」
「この後暇ですか?!」
「あのっ、あたしは向こうの居酒屋の娘の──」
「連れの女性は恋人ですかぁ?」
「ぁ……え、と…………っ」
逆ナンされてるわ、あの男。
しかし様子が変だ。グイグイと迫ってくる女性達に対して、あまりにもカイルがたじろいでいる……というか、怯んでいるようだ。顔色も少し悪いし、明らかに普通ではない。
「すみません、私の恋人にあまり近寄らないで欲しいのだけれど?」
助け舟を出すと、女性客達の視線が一気にこちらに集中する。それと同時にカイルに光明が差す。
女性客達の間を通ってカイルの元まで行き、私はその腕を引っ張って試着部屋の方に戻った。
「貴方も着替えてきなさい、ダーリン」
「…………了解、ハニー」
鳥肌が立つようなバカップルの演技をしつつ、カイルの背を押して人の少ない試着部屋に送り出す。カイルは少し困惑しながらもこちらの意図を理解したようで、柔らかく微笑んで試着部屋に入っていった。
それを待つ間、ネックレスや耳飾りを見物しては良さげなものを見つける。店員さんからの強いオススメもあって、流されるままにそれらの購入も決意した。
程なくして、ジャケットなどに身を包んだカイルが試着部屋より出て来た。流石は乙女ゲームのメイン枠の攻略対象と言うべきか、やはりどんな格好でも似合う。
「どう? 似合ってる?」
「バッチリよ。このまま出るからお会計行きましょう」
少し不安げなカイルにサムズアップしてバッチリと伝え、私達はまた並んでお会計場に向かう。店員さんがニコニコと笑って「会計は氷金貨三十二枚です!」と言ったものだから、思わずいい値段するわね……と含み笑う。そしてたくさんのお金を入れた袋を取り出た。
「高っ……俺そんなに金持ってねぇよ……」
カイルが隣でギョッとして頬をひくつかせる。そういえば、第四王子なのに何故か貧乏だって言ってたな。
「別にお金の事は気にしないでいいわよ。私が全部出すから」
「え」
「だって誘ったのは私なんだもの。当然でしょう?」
「え」
だから安心なさい。とカイルに告げて、私は氷金貨三十二枚をパッと出す。それに驚く店員さんと女性客達。そして呆然とするカイル。
それらを尻目に、私は堂々と会計に臨む。
「会員証はお持ちですか?」
「いえ、持ってないわ。今から作ってもらえるかしら?」
「かしこまりました!」
一人の店員さんが裏に行き、一枚の白いカードを持って戻ってくる。その裏に私は『スミレ』と記し、会員登録する。
何を隠そう、わざわざこの服飾店で買い物をした理由はこれなのだ。この会員証が欲しくて、私はこの店に来た。
この店の看板にはスコーピオン社のエンブレムがあって、スコーピオン社傘下の店である事は一目見て分かった。
私達が本日行く予定の場所──カジノ・スコーピオンは、スコーピオン社の会員証を持つ十二歳以上の人間なら誰でも入る事が出来る。
ただし、十七歳までの子供は一日で使用出来る元手が最大氷銀貨十枚と決められているらしい。更に借金システムも使えないらしい。要するに……子供にもチャンスは与えるが、身を滅ぼさないで済むように色々手は尽くしている模様。
『誰にでも、平等にチャンスを与えたい』
──そんな、スコーピオン社創立者の理念のもと、入場制限が緩和されているようなのだ。
そしてその会員証はスコーピオン社傘下の店で買い物をする時に使えるので、そこで作る事が出来る……と、アルベルトからの報告にあったので、私はドレスコード有りのカジノに着ていくドレスを買うついでに会員証を作る事にしたのだ。