だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
204.カジノ・スコーピオン2
「急に声をかけてすまないね、麗しいお嬢さん。ディーラーの事を真剣に見つめていたようだから、気になって」
「い、いえ。お兄さんはこのカジノに詳しいんですか?」
「あぁ。もう長い事、このカジノにいるさ。今日は噂の少年を見に来てね」
「噂の少年……?」
よく見たらこのイケメンお兄さん、目が笑ってないわ。口元はにこやかな笑みを浮かべてるけど、目が死んでるわ。
「入場してからものの数十分で快進撃を繰り広げる金髪の少年……彼がどれ程の実力なのか気になってね」
イケメンお兄さんの瞳に侮蔑が滲み出る。
どうして初対面の人からこんなにも強い視線を向けられないといけないのかしら?
「それでしたら、あちらの方にその少年がいるようですが……私といても意味は無いかと」
「だが、お嬢さんは彼の連れなんだろう?」
おっとぉ……何やら私達が友達であるとバレているみたい。
あまりにも圧を感じる笑顔にたじろいでいると、イケメンお兄さんは「それに」と続けた。
「少年の快進撃はもう見て来たんだ。オレは、今や君に興味があるんだよね」
「……そうですか」
私は貴方にさほど興味を惹かれませんけどね。……しかし、なんだこの違和感。明らかな、強い違和感をこのお兄さんから感じるのだけど、その答えがどうしても出て来ない。
「お嬢さん、名前を聞いてもいいかな」
「スミレです」
「へぇ……スミレか。君によく似合う、温室で蝶よ花よと育てられた花々のような綺麗な名前だ」
なんだろう、物凄く含みがある笑顔だな。
「お兄さんもギャンブルをされるんですか?」
話題を変えようと試みる。叶うなら今すぐどこかに行って欲しいのだけど、それは何だか難しそうだから。
「こんな所にいるぐらいだからそれなりには、ね。お嬢さんは初顔だから、ギャンブルは初めてだろう?」
あれ? わざわざ名前聞いて来たのに、結局お嬢さんって呼んでくるのか。何だこの人、感じ悪いな。
「まぁ……そうですね。友人と一緒に、今日初めてここに来ました」
「来て早々こんなにも大勝ちして、何か目的でもあるのかい」
「カジノに来る者は基本的に何かしらの目的を持っているものでは?」
「ははは、それもそうだ。だけどどうしてかな……オレには分からないんだ。君のようなお嬢さんが何故カジノにいるのかが」
猜疑心を隠そうともしない声で、お兄さんは執拗に詰めてくる。彼の笑顔からは明確な敵意が感じられる。こんなものを向けられてしまえば、笑顔を貼り付ける必要性を失ったも同義。
笑顔を取り下げ、そちらがそんな目で見てくるのならとこちらも睨み返す。
私の表情が変わったのが面白いのか、お兄さんは嘲笑を含んだ声をもらして、
「……あぁ、どうやらゲームが終わったらしい。プレイして来てはどうかな、お嬢さん」
先程の卓へと視線を向けた。確かに今しがたゲームが終わり、テーブルにいた人達が解散しつつあった。
言われなくても、と小さく呟き台車を押してテーブルに向かう。椅子に座ってもなお、あの突き刺すような強い視線は私に向けられている。
何がどうして、初対面の相手にここまで恨まれ嫌われないといけないのかが分からないが……無視して私は私の目的の為に頑張ろう。カイルにばかり任せるのもよくないもの。
「では、こちらの四名で次のゲームを始めさせていただきます。よろしいですね?」
ディーラーが両手を広げ、参加者全員へと順に視線を向けてゆく。私を含めた四人はこくりと頷いて、ゲームに挑む。
「これより、ブラックジャックを開始致します」
そして遂にゲームが始まった。
私は必死に頭を働かせて、場に出た目を覚えて計算してゆく。ベットして、ヒットしたりスタンドしたりの繰り返し。そうやって数試合が過ぎていく頃には私の緊張もほぐれ、場の空気というものも掴めて来た。そして同時に確信した。この世界に、カードカウンティングという概念は無いと。
泳がされているだけかもしれないのだが、少なくとも今の所はディーラーが何の対策も講じないのでこれは前者で間違いないだろう。
チップが無くなってしまおうと特に痛手では無いのだが、いかんせん私達の目的はVIPルームに行く事。その条件が何かが分かっていない以上、チップと勝率は大事にしていきたい。カイルが稼いでくれた大金を、私の無謀なベットで水の泡にする訳にはいかないのだ。
そんな考えから、慣れない最初の数試合ではベットは慎重にやって来たが、ここから先はもう少し思い切っても大丈夫だろう。
私を子供だと舐めてかかってる他の参加者達には悪いけれど、私だって肉体年齢+精神年齢したらもうアラサーなのよ! それなりには頭だって働くわよ!!
意気込んで挑戦した数試合。少し頭が疲れて来たものの、一時期の仕事ラッシュに比べればまだマシなので全然耐えられた。
突然調子を上げて来た私に、他の参加者の警戒が集まる。特に隣に座っている太ったおじさんが変な目でこちらを見る事が増えてきた。
やがて、いい感じに私が勝った時。そのおじさんが慌ただしく立ち上がってこちらを指差してきた。
「い、いえ。お兄さんはこのカジノに詳しいんですか?」
「あぁ。もう長い事、このカジノにいるさ。今日は噂の少年を見に来てね」
「噂の少年……?」
よく見たらこのイケメンお兄さん、目が笑ってないわ。口元はにこやかな笑みを浮かべてるけど、目が死んでるわ。
「入場してからものの数十分で快進撃を繰り広げる金髪の少年……彼がどれ程の実力なのか気になってね」
イケメンお兄さんの瞳に侮蔑が滲み出る。
どうして初対面の人からこんなにも強い視線を向けられないといけないのかしら?
「それでしたら、あちらの方にその少年がいるようですが……私といても意味は無いかと」
「だが、お嬢さんは彼の連れなんだろう?」
おっとぉ……何やら私達が友達であるとバレているみたい。
あまりにも圧を感じる笑顔にたじろいでいると、イケメンお兄さんは「それに」と続けた。
「少年の快進撃はもう見て来たんだ。オレは、今や君に興味があるんだよね」
「……そうですか」
私は貴方にさほど興味を惹かれませんけどね。……しかし、なんだこの違和感。明らかな、強い違和感をこのお兄さんから感じるのだけど、その答えがどうしても出て来ない。
「お嬢さん、名前を聞いてもいいかな」
「スミレです」
「へぇ……スミレか。君によく似合う、温室で蝶よ花よと育てられた花々のような綺麗な名前だ」
なんだろう、物凄く含みがある笑顔だな。
「お兄さんもギャンブルをされるんですか?」
話題を変えようと試みる。叶うなら今すぐどこかに行って欲しいのだけど、それは何だか難しそうだから。
「こんな所にいるぐらいだからそれなりには、ね。お嬢さんは初顔だから、ギャンブルは初めてだろう?」
あれ? わざわざ名前聞いて来たのに、結局お嬢さんって呼んでくるのか。何だこの人、感じ悪いな。
「まぁ……そうですね。友人と一緒に、今日初めてここに来ました」
「来て早々こんなにも大勝ちして、何か目的でもあるのかい」
「カジノに来る者は基本的に何かしらの目的を持っているものでは?」
「ははは、それもそうだ。だけどどうしてかな……オレには分からないんだ。君のようなお嬢さんが何故カジノにいるのかが」
猜疑心を隠そうともしない声で、お兄さんは執拗に詰めてくる。彼の笑顔からは明確な敵意が感じられる。こんなものを向けられてしまえば、笑顔を貼り付ける必要性を失ったも同義。
笑顔を取り下げ、そちらがそんな目で見てくるのならとこちらも睨み返す。
私の表情が変わったのが面白いのか、お兄さんは嘲笑を含んだ声をもらして、
「……あぁ、どうやらゲームが終わったらしい。プレイして来てはどうかな、お嬢さん」
先程の卓へと視線を向けた。確かに今しがたゲームが終わり、テーブルにいた人達が解散しつつあった。
言われなくても、と小さく呟き台車を押してテーブルに向かう。椅子に座ってもなお、あの突き刺すような強い視線は私に向けられている。
何がどうして、初対面の相手にここまで恨まれ嫌われないといけないのかが分からないが……無視して私は私の目的の為に頑張ろう。カイルにばかり任せるのもよくないもの。
「では、こちらの四名で次のゲームを始めさせていただきます。よろしいですね?」
ディーラーが両手を広げ、参加者全員へと順に視線を向けてゆく。私を含めた四人はこくりと頷いて、ゲームに挑む。
「これより、ブラックジャックを開始致します」
そして遂にゲームが始まった。
私は必死に頭を働かせて、場に出た目を覚えて計算してゆく。ベットして、ヒットしたりスタンドしたりの繰り返し。そうやって数試合が過ぎていく頃には私の緊張もほぐれ、場の空気というものも掴めて来た。そして同時に確信した。この世界に、カードカウンティングという概念は無いと。
泳がされているだけかもしれないのだが、少なくとも今の所はディーラーが何の対策も講じないのでこれは前者で間違いないだろう。
チップが無くなってしまおうと特に痛手では無いのだが、いかんせん私達の目的はVIPルームに行く事。その条件が何かが分かっていない以上、チップと勝率は大事にしていきたい。カイルが稼いでくれた大金を、私の無謀なベットで水の泡にする訳にはいかないのだ。
そんな考えから、慣れない最初の数試合ではベットは慎重にやって来たが、ここから先はもう少し思い切っても大丈夫だろう。
私を子供だと舐めてかかってる他の参加者達には悪いけれど、私だって肉体年齢+精神年齢したらもうアラサーなのよ! それなりには頭だって働くわよ!!
意気込んで挑戦した数試合。少し頭が疲れて来たものの、一時期の仕事ラッシュに比べればまだマシなので全然耐えられた。
突然調子を上げて来た私に、他の参加者の警戒が集まる。特に隣に座っている太ったおじさんが変な目でこちらを見る事が増えてきた。
やがて、いい感じに私が勝った時。そのおじさんが慌ただしく立ち上がってこちらを指差してきた。