だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
 しかもよりによって人間が行方不明になる事件だなんて! こんなのもう、どう考えても海賊が関係しているとしか思えないじゃないの!!
 まさかまた誘拐と人身売買? この国でまだそんな事しようとか考える馬鹿がいるなんて。奴隷商の件からケイリオルさんが更にその手の事に関しては厳しく取り締まりしているのに、よくもまあこんな大胆な事が出来るわね。

 ……ちょっと待って。もしも、海賊がそれを知らない他国の人間だったら? もし万が一、ハミルディーヒの人間だったりしたら──戦争に発展するのがほぼ確定したようなもの。
 どんどん最悪の展開ばかりを想像してしまう。

「……──ううん、ちょっと気になっただけ。ありがとうございます、色々と教えてくれて」

 下手な推測を話していたずらに混乱させる訳にはいかない。だからここはとりあえず隠しておく事にした。
 いつも通りニコリと笑顔を作り、おじさんにお礼を伝える

「おうよ。楽しみにしててくれたみてぇなのに魚料理が出せなくてすまねぇな、嬢ちゃん達」

 おじさんはニカッと歯を見せて笑い、「魚料理の代わりにはならんが、おっさんの愚痴に付き合ってくれたお礼さ」と言って一個ずつ芋餅風揚げ芋をおまけしてくれた。
 それをありがたくいただき、おじさんに別れを告げて歩きながらそれを食べる。その途中でカイルがおもむろに口を切った。

「で、今度は何が起きるんだ? さっきのお前の反応からして、何かしら厄介事が起こるんだろ?」
「…………正直な話、可能なら起きてほしくはないけどね。でも今後何かが起きると考えないと、どうにも説明がつかない事が多いのよ」
「海賊に鉱山事故に行方不明事件……だったか、さっき出て来た単語は。これがどう繋がんのかね?」

 カイルがわざわざ日本語で話すから、私もそれに合わせて日本語で話す。

「まず初めに、海賊がルーシェ沖に現れたのは今から二ヶ月程前。それ以来特にこれといった行動は見せず、やった事と言えば沖で漁に出て来た船を攻撃したぐらい。あまりにも不可解とは思わない?」
「ただ本当に停泊してただけとかは?」
「だったら漁に出た船を攻撃する訳ないじゃない。ただ停泊したいだけだったのなら、そんなわざわざ港町から目をつけられるような事をする筈がないわ」
「まぁ、それもそうか」
「だから私は、海賊には何か本当の目的があると考えたのよ。私は、その目的が行方不明事件で手段が鉱山事故だと踏んでいるわ」
「ほう?」
「海賊はこの町で人攫い──行方不明事件を起こすにあたって、まず初めに鉱山で事故を起こした。鉱山での大規模な事故となれば、否応なしに公爵領の騎士達が出払う事になるから、もし万が一港町でちょっとした揉め事が起ころうとも騎士が派遣されてくる事は無い。その上で、何らかの方法でもって海賊が秘密裏に人攫いを繰り返していた……それが、私の立てた仮説よ」

 あくまでも仮説だけどね。と補足して、私は説明を終えた。
 考え過ぎだの陰謀論だの言われてしまえばそこまでなのだが、やはり私にはこれらの事件が繋がっているように思えるのだ。

「仮にこれらの事件が関連するものだったとして、どうやって鉱山で事故を起こしたんだ? それも、騎士団が動く程の大規模なものを」

 芋餅風揚げ芋の包み紙を小さく畳みながら、カイルが疑問を口にする。
 これには少し思い当たる節がある。それは事故が起こる直前に多くの人が聞いたという、謎の轟音。新聞でも報道された程の凄まじい音と振動。
 この轟音が鉱山事故と関係しているのも間違いはないだろう。
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