だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
私達の出した結論はこうだ。
海賊が港町ルーシェで人攫いをする為に、アルブロイト公爵領南方にあるランメル鉱山で炭塵爆発を利用した事故を起こした。
それによってアルブロイト公爵家騎士団の多くが鉱山事故の救助活動に向かい、港町ルーシェで起きた些細な問題には対応出来なくなった。
前もって光の魔力所持者が殺されていたようで、ランメル鉱山での事故で数百人規模の死者が出てしまった。それらを炭鉱から運び出す作業や身元特定の調査などで救助隊は膨大な時間を要する事となった。
それにより海賊は余裕をもって目的を達する事が可能に。それが近頃港町ルーシェで発生している行方不明事件なのだと。
本当によく考えられた計画だと思う。敵ながら天晴れなんて言いたくないけれど、本当に……私みたいに考えすぎる人間じゃないと気づけないような関連性だ。
だからこそ、気づいてしまったのならどうにかしたいと思ってしまう。今もなお、どこかで誰かが行方不明──人攫いに遭っているのだとしたら。
……私のお父様の国で、もう二度とそんな事を許したくない。
そう、心の奥底から彼女が訴えかけてくる。アミレスと心が一つになる。そうよね、アミレス。人身売買を許しちゃ駄目よね。
「さて、アミレスさんよ。殺るなら夜か?」
「! ……えぇそうね。目立ちたくないもの」
覚悟を決めた時、まるで私の心を読んだかのようにカイルがニヤリと笑う。
この男、本当に私への理解度が高い。この件を聞いて私が海賊を懲らしめようと思った事に気づくなんて。
「海賊はそこそこ強いっておじさんが言ってたし、リーダー格っぽい奴を生け捕りして……後はもう殺してしまった方がいいわよね」
「最悪の場合はそうするしかないだろうな。大事なのは攫われた人達の解放だし、海賊共の安否は度外視でもいいか。俺達の魚料理の為にも諸悪の根源には消えてもらわねーと」
入り組んだ路地を進みつつ、物騒な計画を立ててゆく。外道な計画には外道の計画をぶつけるしかないのよ。
幸いにも、私は戦闘能力がある。生け捕りや防衛戦は苦手だけど、普通の戦いならばそれなりに自信がある。だからきっと大丈夫だろう。
「攫われた人達の奪還は任せてもいい? 海賊は私が蹴散らすから」
「別にいいが、一人で大丈夫か? 船何隻もあったし、海賊の数も相当多いと思うぞ?」
「多分大丈夫よ。殺してもいいのなら、有象無象に遅れをとらないわ。秘策もあるしね」
「ははっ、秘策か。それじゃあ、お前の事を信じて俺は攫われた人達の奪還優先で動くわ」
そうやって簡単に計画を立てつつ、泊まっている宿に向かう。そして部屋に戻り、ここに来る時に着ていたシャツなどに着替える。
日が暮れるまでの間はそれぞれの部屋で準備などをして過ごし、夜闇が空から降り注いでから、私達はローブを身に纏いフードを目深に被って町に繰り出した。
♢♢
時は少し遡り、昼下がり。
活気溢れる港町ルーシェの人気の無い空き地にて、一人の少女が最近出来た友達とボール遊びに興じていた。
「いっくよー、シャーリーちゃん!」
「うん! いいよ〜ミア!」
「それっ! ってあーーっ、ごめんシャーリーちゃん!」
「大丈夫だよ〜!」
ミアの手から放たれたボールは明後日の方に飛んで行き、シャーリーはそれを追って物陰へと向かった。
物陰に行き、キョロキョロとしてボールを探す。その最中で急な目眩がして、シャーリーはその場で蹲った。
「ぅ……」
(この、感じ……魔力で、よっちゃったのかな…っ)
徐々に強くなる目眩と吐き気。頭痛までもがシャーリーを襲い、彼女はその場から動けなくなってしまった。
そこに、一人の男が現れる。
「大丈夫かいお嬢さん。顔色が悪いし、おじさんと一緒においで。治してあげるよ」
「だ、れ……んぐっ!?」
男は鋭くニィッと笑い、シャーリーの口元に薬が塗られた布を当てた。その匂いを嗅いで、シャーリーは意識を失った。
「やあ、お嬢ちゃん。突然で悪いが、俺達と一緒に来てもらうよ」
「え? おじさん誰──っ」
それと同時に、シャーリーがボールを見つけて戻って来るのを待っていたミアも謎の男に声をかけられ、同様に眠らされていた。
ミアを麻袋に入れた男が「そっちはどうだ?」ともう一人の男に近寄り声をかける。
もう一人の男は慣れた手つきでシャーリーを麻袋に入れて持ち上げ、「こっちも楽勝だ」と下卑た笑みを浮かべた。
そして二つの麻袋を運搬用の木箱に入れ、それを持った男達は高笑いを上げながら港の外れに向かっていった。
海賊が港町ルーシェで人攫いをする為に、アルブロイト公爵領南方にあるランメル鉱山で炭塵爆発を利用した事故を起こした。
それによってアルブロイト公爵家騎士団の多くが鉱山事故の救助活動に向かい、港町ルーシェで起きた些細な問題には対応出来なくなった。
前もって光の魔力所持者が殺されていたようで、ランメル鉱山での事故で数百人規模の死者が出てしまった。それらを炭鉱から運び出す作業や身元特定の調査などで救助隊は膨大な時間を要する事となった。
それにより海賊は余裕をもって目的を達する事が可能に。それが近頃港町ルーシェで発生している行方不明事件なのだと。
本当によく考えられた計画だと思う。敵ながら天晴れなんて言いたくないけれど、本当に……私みたいに考えすぎる人間じゃないと気づけないような関連性だ。
だからこそ、気づいてしまったのならどうにかしたいと思ってしまう。今もなお、どこかで誰かが行方不明──人攫いに遭っているのだとしたら。
……私のお父様の国で、もう二度とそんな事を許したくない。
そう、心の奥底から彼女が訴えかけてくる。アミレスと心が一つになる。そうよね、アミレス。人身売買を許しちゃ駄目よね。
「さて、アミレスさんよ。殺るなら夜か?」
「! ……えぇそうね。目立ちたくないもの」
覚悟を決めた時、まるで私の心を読んだかのようにカイルがニヤリと笑う。
この男、本当に私への理解度が高い。この件を聞いて私が海賊を懲らしめようと思った事に気づくなんて。
「海賊はそこそこ強いっておじさんが言ってたし、リーダー格っぽい奴を生け捕りして……後はもう殺してしまった方がいいわよね」
「最悪の場合はそうするしかないだろうな。大事なのは攫われた人達の解放だし、海賊共の安否は度外視でもいいか。俺達の魚料理の為にも諸悪の根源には消えてもらわねーと」
入り組んだ路地を進みつつ、物騒な計画を立ててゆく。外道な計画には外道の計画をぶつけるしかないのよ。
幸いにも、私は戦闘能力がある。生け捕りや防衛戦は苦手だけど、普通の戦いならばそれなりに自信がある。だからきっと大丈夫だろう。
「攫われた人達の奪還は任せてもいい? 海賊は私が蹴散らすから」
「別にいいが、一人で大丈夫か? 船何隻もあったし、海賊の数も相当多いと思うぞ?」
「多分大丈夫よ。殺してもいいのなら、有象無象に遅れをとらないわ。秘策もあるしね」
「ははっ、秘策か。それじゃあ、お前の事を信じて俺は攫われた人達の奪還優先で動くわ」
そうやって簡単に計画を立てつつ、泊まっている宿に向かう。そして部屋に戻り、ここに来る時に着ていたシャツなどに着替える。
日が暮れるまでの間はそれぞれの部屋で準備などをして過ごし、夜闇が空から降り注いでから、私達はローブを身に纏いフードを目深に被って町に繰り出した。
♢♢
時は少し遡り、昼下がり。
活気溢れる港町ルーシェの人気の無い空き地にて、一人の少女が最近出来た友達とボール遊びに興じていた。
「いっくよー、シャーリーちゃん!」
「うん! いいよ〜ミア!」
「それっ! ってあーーっ、ごめんシャーリーちゃん!」
「大丈夫だよ〜!」
ミアの手から放たれたボールは明後日の方に飛んで行き、シャーリーはそれを追って物陰へと向かった。
物陰に行き、キョロキョロとしてボールを探す。その最中で急な目眩がして、シャーリーはその場で蹲った。
「ぅ……」
(この、感じ……魔力で、よっちゃったのかな…っ)
徐々に強くなる目眩と吐き気。頭痛までもがシャーリーを襲い、彼女はその場から動けなくなってしまった。
そこに、一人の男が現れる。
「大丈夫かいお嬢さん。顔色が悪いし、おじさんと一緒においで。治してあげるよ」
「だ、れ……んぐっ!?」
男は鋭くニィッと笑い、シャーリーの口元に薬が塗られた布を当てた。その匂いを嗅いで、シャーリーは意識を失った。
「やあ、お嬢ちゃん。突然で悪いが、俺達と一緒に来てもらうよ」
「え? おじさん誰──っ」
それと同時に、シャーリーがボールを見つけて戻って来るのを待っていたミアも謎の男に声をかけられ、同様に眠らされていた。
ミアを麻袋に入れた男が「そっちはどうだ?」ともう一人の男に近寄り声をかける。
もう一人の男は慣れた手つきでシャーリーを麻袋に入れて持ち上げ、「こっちも楽勝だ」と下卑た笑みを浮かべた。
そして二つの麻袋を運搬用の木箱に入れ、それを持った男達は高笑いを上げながら港の外れに向かっていった。