だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
215.交渉決裂?
「グガァアアアアアアアアッッ!!」
「っ、馬鹿力過ぎるでしょ……!?」
ドォンッ! と化け物が殴った場所は見事に陥没し、甲板に大きな落とし穴を作っていた。その穴の大きさたるや、いくつかの死体がそこから船内に落ちる程。
甲板にいた海賊達をあらかた片付けて、下手に船内に入って入れ違いになっても面倒だからと甲板で白夜の手入れをしていた時。
カイルが後は任せたと叫びながら、二人の少女を抱えて甲板に飛び出て来た。その背を追うように現れた、ギリギリ人の形をした謎の化け物。
カイルの叫びを聞いて、すぐに剣を構えカイルの方に向かった。化け物の手がカイルへと伸びていた所に割って入り、その腕を斬り落とす。
それからは化け物の注意も私に向けられて、カイルは二人の少女と共に少し離れた所でこちらを見守っているようだった。
多分あの少女達は攫われた人達のうちの二人だろう。何やらカイル達はこの化け物に追われていたようだし、町に転移させようとしたら化け物に襲われた……みたいな感じかしら。
他の攫われた人達はどうなったんだろうか。無事だといいけど…………。
「凍てつけ、水の鎖。水氷《アイスロッ》──……」
魔法を使って化け物の動きを封じようとしたら、
「ああ待てアミレス! 魔法は使わないでくれ!!」
「はぁっ!? どういう事!?」
「訳は後で説明するから、今はとにかく魔法を使わないでくれ!!」
何故かカイルに止められた。訳も分からないまま、カイルの絶対捕縛魔法を参考に作った魔法の発動をキャンセルする。
こうして、アドバンテージを封じられた状態での化け物の相手という、謎の縛り勝負となってしまった。カイルが何を考えてそんな事を言っているのかが本当に分からないのだが……とにかく今は、私に出来る全力を賭すしかない。
集中しろ。感覚を研ぎ澄ませ。空気を、大気を掴め。決して敵から目を逸らす事無く、己の全てを武器とせよ。今まで学んできた全てを我が糧に。
この化け物相手に手加減など不要。魔法が使えない以上、私には早期決着しか選択肢が残されていない。
師匠から学んだ全てを出し惜しみせず発揮する。
「…………」
極度の集中状態。白夜が私の体の一部のように感じる。まるで私自身がこの世界に溶け込んだかのような、そんな錯覚さえあった。
「──行くわよ、化け物」
「ッッッ?!」
強く地面を蹴り、化け物に突撃する。何やら私を見て怯んでいるらしい化け物はそこで後退り、挙句の果てに逃げ出そうとした。
だが逃がさない。
そもそも、魔法を使った訳でもないのに私から逃げられると思わないで。私の知る限り、師匠より速く動ける人間はいない。
この化け物が人間だと言うのなら、私でもまだ何とか出来る余地がある。例え逃げられようとも、魔法を使われない限り余裕で追いつける。
まず一撃。太ももを斬って、化け物の右脚を落とす。これで化け物は右腕と右脚を失い、身動きが取れなくなった。
それでも逃げようと──生き延びようとしているのか、化け物は私が近づけないようにと残る左腕と左脚を大きく振り回している。
そんな化け物に向けて白夜を構え、投擲しようとしたら、後方から「あああああっ!?」といったカイルの驚愕が聞こえてきた。
「ど、どうしたのおにいちゃん……急に大きな声出して」
「あぁごめんなミアちゃん、驚かせて。おいアミレス! その化け物の左手についてる腕輪! 今すぐ回収してくれ!!」
「アミレス……ってどこかで聞いたような……?」
茶髪の少女と並んでこちらを見守っていたカイルが、またもや変な指示を飛ばしてきた。
魔法を使うなって指示の次は腕輪を回収しろ? 本当に何なのかしら、一体。
まったくもってカイルの意図は分からないものの、私はとりあえず言う事に従っておく事にした。
怪物の胸元目掛けて白夜を投擲する予定だったのだが、目標変更。じたばたと暴れられて鬱陶しいので、その腕を甲板に縫い付ける事にした。
狙いを定めて──いけっ、重量操作!
私のような貧弱な人間でも、白夜に備わった魔剣としての能力を使えばそれなりの威力を出せる。
「ブグガァッ!?」
予定より少しズレて、綺麗に真ん中を貫いた……とまではいかなかったのだが、それでも気持ち悪い化け物の腕を我が愛剣は見事貫き、化け物の腕を甲板に縫い付ける事が叶った。
ギャーギャーと喚き暴れる化け物の腕から、白夜の鞘を使ってカイルの言う腕輪とやらを取り外す。
何かしらこの腕輪。なんか、凄く気味悪いわ。カイルはなんでこんなものを? と疑問に思った瞬間、化け物の動きがピタリと止まった。
小さな唸り声みたいなのはまだ聞こえるのだが、先程までの暴れっぷりが嘘のような静けさである。その上、まるで薬品で溶かされたかのように煙と異臭を発して化け物の体が小さくなってゆく。
急いで白夜を抜いて距離を取る。暫く、何事かと観察していると、化け物は人間らしい姿(果たして体中がぶよぶよぐちゃぐちゃとしている事が人間らしいというのかは分からないが)へと変貌した。
その事にたまげていると、カイルが「おーいアミレスー」と私を手招きする。
「っ、馬鹿力過ぎるでしょ……!?」
ドォンッ! と化け物が殴った場所は見事に陥没し、甲板に大きな落とし穴を作っていた。その穴の大きさたるや、いくつかの死体がそこから船内に落ちる程。
甲板にいた海賊達をあらかた片付けて、下手に船内に入って入れ違いになっても面倒だからと甲板で白夜の手入れをしていた時。
カイルが後は任せたと叫びながら、二人の少女を抱えて甲板に飛び出て来た。その背を追うように現れた、ギリギリ人の形をした謎の化け物。
カイルの叫びを聞いて、すぐに剣を構えカイルの方に向かった。化け物の手がカイルへと伸びていた所に割って入り、その腕を斬り落とす。
それからは化け物の注意も私に向けられて、カイルは二人の少女と共に少し離れた所でこちらを見守っているようだった。
多分あの少女達は攫われた人達のうちの二人だろう。何やらカイル達はこの化け物に追われていたようだし、町に転移させようとしたら化け物に襲われた……みたいな感じかしら。
他の攫われた人達はどうなったんだろうか。無事だといいけど…………。
「凍てつけ、水の鎖。水氷《アイスロッ》──……」
魔法を使って化け物の動きを封じようとしたら、
「ああ待てアミレス! 魔法は使わないでくれ!!」
「はぁっ!? どういう事!?」
「訳は後で説明するから、今はとにかく魔法を使わないでくれ!!」
何故かカイルに止められた。訳も分からないまま、カイルの絶対捕縛魔法を参考に作った魔法の発動をキャンセルする。
こうして、アドバンテージを封じられた状態での化け物の相手という、謎の縛り勝負となってしまった。カイルが何を考えてそんな事を言っているのかが本当に分からないのだが……とにかく今は、私に出来る全力を賭すしかない。
集中しろ。感覚を研ぎ澄ませ。空気を、大気を掴め。決して敵から目を逸らす事無く、己の全てを武器とせよ。今まで学んできた全てを我が糧に。
この化け物相手に手加減など不要。魔法が使えない以上、私には早期決着しか選択肢が残されていない。
師匠から学んだ全てを出し惜しみせず発揮する。
「…………」
極度の集中状態。白夜が私の体の一部のように感じる。まるで私自身がこの世界に溶け込んだかのような、そんな錯覚さえあった。
「──行くわよ、化け物」
「ッッッ?!」
強く地面を蹴り、化け物に突撃する。何やら私を見て怯んでいるらしい化け物はそこで後退り、挙句の果てに逃げ出そうとした。
だが逃がさない。
そもそも、魔法を使った訳でもないのに私から逃げられると思わないで。私の知る限り、師匠より速く動ける人間はいない。
この化け物が人間だと言うのなら、私でもまだ何とか出来る余地がある。例え逃げられようとも、魔法を使われない限り余裕で追いつける。
まず一撃。太ももを斬って、化け物の右脚を落とす。これで化け物は右腕と右脚を失い、身動きが取れなくなった。
それでも逃げようと──生き延びようとしているのか、化け物は私が近づけないようにと残る左腕と左脚を大きく振り回している。
そんな化け物に向けて白夜を構え、投擲しようとしたら、後方から「あああああっ!?」といったカイルの驚愕が聞こえてきた。
「ど、どうしたのおにいちゃん……急に大きな声出して」
「あぁごめんなミアちゃん、驚かせて。おいアミレス! その化け物の左手についてる腕輪! 今すぐ回収してくれ!!」
「アミレス……ってどこかで聞いたような……?」
茶髪の少女と並んでこちらを見守っていたカイルが、またもや変な指示を飛ばしてきた。
魔法を使うなって指示の次は腕輪を回収しろ? 本当に何なのかしら、一体。
まったくもってカイルの意図は分からないものの、私はとりあえず言う事に従っておく事にした。
怪物の胸元目掛けて白夜を投擲する予定だったのだが、目標変更。じたばたと暴れられて鬱陶しいので、その腕を甲板に縫い付ける事にした。
狙いを定めて──いけっ、重量操作!
私のような貧弱な人間でも、白夜に備わった魔剣としての能力を使えばそれなりの威力を出せる。
「ブグガァッ!?」
予定より少しズレて、綺麗に真ん中を貫いた……とまではいかなかったのだが、それでも気持ち悪い化け物の腕を我が愛剣は見事貫き、化け物の腕を甲板に縫い付ける事が叶った。
ギャーギャーと喚き暴れる化け物の腕から、白夜の鞘を使ってカイルの言う腕輪とやらを取り外す。
何かしらこの腕輪。なんか、凄く気味悪いわ。カイルはなんでこんなものを? と疑問に思った瞬間、化け物の動きがピタリと止まった。
小さな唸り声みたいなのはまだ聞こえるのだが、先程までの暴れっぷりが嘘のような静けさである。その上、まるで薬品で溶かされたかのように煙と異臭を発して化け物の体が小さくなってゆく。
急いで白夜を抜いて距離を取る。暫く、何事かと観察していると、化け物は人間らしい姿(果たして体中がぶよぶよぐちゃぐちゃとしている事が人間らしいというのかは分からないが)へと変貌した。
その事にたまげていると、カイルが「おーいアミレスー」と私を手招きする。