だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「ここは海賊船の上だよ。今まで普通に観光したり大人に喧嘩売ったりして、今さっきまでこの辺りにたむろしてる海賊を殲滅してた所」
「あれ、俺の知ってるデートと違うな……今どきの人間ってのはそんな物騒なデートをしてんのか……」
「多様性よ、多様性」
マジか。と言いたげに目を丸くする師匠。マジです。と言わんばかりに私は首を縦に振った。
すると師匠は首に手を当てて、はぁ……と項垂れ、
「で、俺に何を手伝わせたいんすか? 知っての通り制約があるんで、あんまり大した事は出来ませんからね」
渋々ではあるが私の要望に応じてくれた。
そんな師匠に心の中で強く感謝する。そして白夜を回収し、師匠の腕を引っ張ってカイル達の元へと連れてゆく。その際に、師匠に頼みたい事を話す事に。
「えーっと、まぁややあって私とカイルで三隻の海賊船を沈めて、最後の一隻の乗組員を殲滅したんだけど」
「一体何があったらそうなるんすか……」
「それでね。その海賊達が人攫いをしてて、攫われた人達の中に魔力ナントカ体質って体質の女の子がいたの。その女の子がいるから私達も魔法が使えなくて、陸に戻る方法がないんだよね」
「……つまり、俺は陸に戻る手段として喚ばれたと?」
ピタリ、とそこで師匠の足が止まる。その顔は分かりやすく不機嫌で、ぶすっとしていた。
やっぱりこんなくだらない事で突然呼び出されたから機嫌が悪いんだわ。でも今となっては師匠しか頼れないの……ごめんなさい。
申し訳ない気持ちになり、無言で頭を下げる。
「はぁ……まー、いいですけど。何事も無く……はなかったみたいだが、姫さんが無事ならそれが一番っすからね」
師匠の声はとても優しかった。その表情も、思いやりに溢れた温かいものだった。
自分の都合で呼び出した私相手に、こんなにも心を砕いてくれるなんて……本当に師匠はいいヒトだ。
「俺に求められてる役割は二つですかね? 一つ、姫さん達を陸に連れて帰る為の足になれ。もう一つは、そのナントカ体質を解消する為に力を貸せ。って事であってます?」
「そう。そうなの! 流石は師匠!!」
「流石は、って……姫さんの性格からしてこれしか考えられなかっただけですよ」
うんうんうんうん、と何度も頷く。
師匠は謙遜するように肩を竦めて言うが、私の望みを的確に予測するなんて凄いわ! ……というか、私ってそんなに分かりやすいの? カイルと言い師匠と言い、何だか凄く、私の考えている事をズバリ言い当ててくるわ。
「師匠は何か知らない? その魔力ナントカ体質について」
足を動かしながら、私はおもむろに切り出した。
「そっすねー……この手のものは俺よりもシルフさんのが詳しいんすけど、今あのヒトめっちゃ忙しいんで、多分呼び出しても来てくれないと思いますわ。ま、俺もやれる限りの事はやりますけど」
「そっか……ねぇ、シルフは元気にしてる? かれこれもう一ヶ月以上会ってないけれど」
シルフと最後に会ったのは一ヶ月程前。貧民街事業と貴族会議の準備に奔走している時に、『どうしても今やらなければいけない事があるんだ』と真剣な声で言って、シルフは精霊界に帰った。
それからというもの、シルフの声すらも聞いてない。考えれば考える程寂しいのであんまり考えないようにしていたのだが、やはり、久しぶりに会いたいなと思う。
せめて声だけでも聞けたらなあと。会う事も声を聞く事も無理だったから、その代わりとばかりにこうしてよくシルフの様子を師匠に聞いているけれど、
「元気っちゃ元気っすよ。あーでも、姫さんに会えてないからか、ストレス爆増で俺達への当たりが酷いったらありゃしない」
大体このように元気である事しか分からない。
それでもシルフが元気だと分かるだけで私は幸福なんだ。あわよくば、あのもふもふな背中を撫でて紅茶を飲みながら二人で他愛もない会話をしたい……なんて思ってしまうけれど。
……そう言えば、久しくそんな穏やかな時間を過ごしてないわね。
初めて城を抜け出したその日に厄介事に首を突っ込んで、その日からというもの何かしらに日々を費やしていた。
シルフや師匠と特訓して、特訓終わりにハイラの入れた紅茶と手作りのお菓子を楽しんで。今みたいに忙しなく賑やかな日々も好きだけれど、長い事そうだったから……あの静かで穏やかな日々も何だか恋しく感じるわ。
「……シルフさんに会いたいっすか?」
どうやらバレバレのようだ。師匠は相変わらず、優しい表情のまま聞いて来た。
「そりゃあ……勿論。でも、私にはそんな我儘を言う資格がないから」
そもそも、シルフや師匠が今まで私と一緒にいてくれた事が奇跡に等しい事なのだ。精霊召喚した訳でもなく、二人の好意で仲良くして貰っていただけの私に……果たして、そんな我儘を言う資格があるのだろうか。
善意や好意で人間界にまで来てくれた二人に、そんな自分勝手な言葉を押し付けてもいいのだろうか。
そう、考えてしまうのだ。
「資格って……そんな難しく考えなくていいんすよ。姫さんが俺達に会いたいって言ってくれたら、俺達は喜んで会いに来ますし。姫さんはもっと我儘に自分勝手に生きてくださいな」
「えぇ? 今でも十分我儘で自分勝手だと思うけれど」
「いやどこが。姫さんって昔っからそうですよね……周りに甘えないというか」
困ったように笑いながら、師匠は私の頭を撫でた。
そうやって歩く事数分。ようやくカイル達の元に戻った。シャーリーちゃんを気遣って師匠も極限まで魔力を抑えてくれたので、何の気兼ねもなくカイル達の元に戻れたのだ。
「あれ、俺の知ってるデートと違うな……今どきの人間ってのはそんな物騒なデートをしてんのか……」
「多様性よ、多様性」
マジか。と言いたげに目を丸くする師匠。マジです。と言わんばかりに私は首を縦に振った。
すると師匠は首に手を当てて、はぁ……と項垂れ、
「で、俺に何を手伝わせたいんすか? 知っての通り制約があるんで、あんまり大した事は出来ませんからね」
渋々ではあるが私の要望に応じてくれた。
そんな師匠に心の中で強く感謝する。そして白夜を回収し、師匠の腕を引っ張ってカイル達の元へと連れてゆく。その際に、師匠に頼みたい事を話す事に。
「えーっと、まぁややあって私とカイルで三隻の海賊船を沈めて、最後の一隻の乗組員を殲滅したんだけど」
「一体何があったらそうなるんすか……」
「それでね。その海賊達が人攫いをしてて、攫われた人達の中に魔力ナントカ体質って体質の女の子がいたの。その女の子がいるから私達も魔法が使えなくて、陸に戻る方法がないんだよね」
「……つまり、俺は陸に戻る手段として喚ばれたと?」
ピタリ、とそこで師匠の足が止まる。その顔は分かりやすく不機嫌で、ぶすっとしていた。
やっぱりこんなくだらない事で突然呼び出されたから機嫌が悪いんだわ。でも今となっては師匠しか頼れないの……ごめんなさい。
申し訳ない気持ちになり、無言で頭を下げる。
「はぁ……まー、いいですけど。何事も無く……はなかったみたいだが、姫さんが無事ならそれが一番っすからね」
師匠の声はとても優しかった。その表情も、思いやりに溢れた温かいものだった。
自分の都合で呼び出した私相手に、こんなにも心を砕いてくれるなんて……本当に師匠はいいヒトだ。
「俺に求められてる役割は二つですかね? 一つ、姫さん達を陸に連れて帰る為の足になれ。もう一つは、そのナントカ体質を解消する為に力を貸せ。って事であってます?」
「そう。そうなの! 流石は師匠!!」
「流石は、って……姫さんの性格からしてこれしか考えられなかっただけですよ」
うんうんうんうん、と何度も頷く。
師匠は謙遜するように肩を竦めて言うが、私の望みを的確に予測するなんて凄いわ! ……というか、私ってそんなに分かりやすいの? カイルと言い師匠と言い、何だか凄く、私の考えている事をズバリ言い当ててくるわ。
「師匠は何か知らない? その魔力ナントカ体質について」
足を動かしながら、私はおもむろに切り出した。
「そっすねー……この手のものは俺よりもシルフさんのが詳しいんすけど、今あのヒトめっちゃ忙しいんで、多分呼び出しても来てくれないと思いますわ。ま、俺もやれる限りの事はやりますけど」
「そっか……ねぇ、シルフは元気にしてる? かれこれもう一ヶ月以上会ってないけれど」
シルフと最後に会ったのは一ヶ月程前。貧民街事業と貴族会議の準備に奔走している時に、『どうしても今やらなければいけない事があるんだ』と真剣な声で言って、シルフは精霊界に帰った。
それからというもの、シルフの声すらも聞いてない。考えれば考える程寂しいのであんまり考えないようにしていたのだが、やはり、久しぶりに会いたいなと思う。
せめて声だけでも聞けたらなあと。会う事も声を聞く事も無理だったから、その代わりとばかりにこうしてよくシルフの様子を師匠に聞いているけれど、
「元気っちゃ元気っすよ。あーでも、姫さんに会えてないからか、ストレス爆増で俺達への当たりが酷いったらありゃしない」
大体このように元気である事しか分からない。
それでもシルフが元気だと分かるだけで私は幸福なんだ。あわよくば、あのもふもふな背中を撫でて紅茶を飲みながら二人で他愛もない会話をしたい……なんて思ってしまうけれど。
……そう言えば、久しくそんな穏やかな時間を過ごしてないわね。
初めて城を抜け出したその日に厄介事に首を突っ込んで、その日からというもの何かしらに日々を費やしていた。
シルフや師匠と特訓して、特訓終わりにハイラの入れた紅茶と手作りのお菓子を楽しんで。今みたいに忙しなく賑やかな日々も好きだけれど、長い事そうだったから……あの静かで穏やかな日々も何だか恋しく感じるわ。
「……シルフさんに会いたいっすか?」
どうやらバレバレのようだ。師匠は相変わらず、優しい表情のまま聞いて来た。
「そりゃあ……勿論。でも、私にはそんな我儘を言う資格がないから」
そもそも、シルフや師匠が今まで私と一緒にいてくれた事が奇跡に等しい事なのだ。精霊召喚した訳でもなく、二人の好意で仲良くして貰っていただけの私に……果たして、そんな我儘を言う資格があるのだろうか。
善意や好意で人間界にまで来てくれた二人に、そんな自分勝手な言葉を押し付けてもいいのだろうか。
そう、考えてしまうのだ。
「資格って……そんな難しく考えなくていいんすよ。姫さんが俺達に会いたいって言ってくれたら、俺達は喜んで会いに来ますし。姫さんはもっと我儘に自分勝手に生きてくださいな」
「えぇ? 今でも十分我儘で自分勝手だと思うけれど」
「いやどこが。姫さんって昔っからそうですよね……周りに甘えないというか」
困ったように笑いながら、師匠は私の頭を撫でた。
そうやって歩く事数分。ようやくカイル達の元に戻った。シャーリーちゃんを気遣って師匠も極限まで魔力を抑えてくれたので、何の気兼ねもなくカイル達の元に戻れたのだ。