だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
 安心と嬉しさが込み上げて来てついにやけてしまいそうな口元を必死に正して、

「お任せを。私の手を取った事、絶対に後悔させませんから」

 と大胆不敵に言ってのけてみせる。これぐらい思い切って振舞った方が、きっと彼等とて安心してくれるだろう。
 そして、この場にはディオさんとエリニティさんが残り、バドールさんが巡回を終えた事の報告に向かった。
 ディオさん達は今自分達がこんな事をしている理由も混じえて身の上話を聞かせてくれた。
 ディオさん達はかつての自分と同じような境遇の子供達を放っておけず、子供達に少しでもいい暮らしをさせてあげられるよう、日々金を稼いでいるらしい。……サラのルートにあった情報通りだ。
 今回は何かの商売の用心棒という話だったらしく、子供達を攫ってきては奴隷として売り飛ばす奴隷商だったとは知らずに仕事を引き受けてしまったらしい。
 いざ用心棒の仕事を初めてからその商売の全容を知り、深く後悔したのだとか。それでも貧民街の子供達の為にも金を稼ぐ必要があり、この仕事を続けるしかなくて、救えない事に酷く苦しみながら毎日子供達に接していたと。

「俺達みたいな奴が働けて金を稼げる場所なんて滅多に無い……だからどれだけ不満があろうとも俺達はここで働いて、その都度ガキ達を見捨てるしか無かったんだ……っ」

 ディオさんは悔しさに顔を歪めて、ドンッと握り拳を地面に叩きつけた。
 赤く腫れたその拳にそっと手を重ねて、私は冷水を出してそれを冷やそうとする。氷を出して氷嚢を作るのが一番なんだろうけど、氷は出せないからね……。
 ポケットにある氷の鍵、絶対に誰にも見せないようにしよう。

「大丈夫です、もう、見捨てなくていいんですよ。貴方達がそうやって後悔に苦しむ必要も無いんです。頑張って、一緒にあの子達を解放しましょう」
「……そうだな。ガキ共を助けよう。それで、具体的に俺達は何をすればいい?」

 そして私達は作戦について話し合った。
 ディオさん達には逃げる子供達の護衛を頼む事にした。
 ここの建物の警備は夜の間ディオさんの仲間が担当しているらしく、逃げ出す事自体は可能だが……その間に奴隷商の奴等が来る可能性が無いとも限らない。
 もし万が一そうなってしまえば、私一人では子供達を守れない。だからこそ彼等にその護衛を頼みたいのだ。
 子供達がある程度安全な所に逃げられるまで、そして保護してもらえるまで、子供達を守って欲しい。
 ……そう、頼んだ所。エリニティさんが「あのー」と口を切った。

「君も一緒に逃げるんだよね? 何だか今の話には微妙に君の情報が欠けてた気がするんだけど」

 あぁ、そう言えば話すの忘れてたわ。その時私は別行動をすると。

「えっと、私はその時ちょっと別行動をさせてもらいます。少しやる事がありまして」
「やる事ってなんだ?」

 ディオさんが聞き返してくる。私はそれに小さく頷いて、

「奴隷商を徹底的に潰す為に、証拠を集めようかと。どうやらここの二階にこの建物の管理者の私室があるそうですので、そこをちょちょいと荒らして帳簿とか奴隷取引の記録等を拝借しようと思ってるんです!」

 はつらつと答える。私の返答を聞いたディオさんとエリニティさんがぽかんとしている。
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