だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「しかし……本当に、どうしてわざわざカイルと二人きりで……オレでは駄目だったのか…………?」
「何サラッと自分の欲望押し出してんだよマクベスタ。それならぼくだって一緒にお出かけしたかったっつーの」
「ッ!? 声……出て……ッ!?」
((めっちゃ声に出てたな))
マクベスタは胸中で気持ちを吐露したつもりが、アミレスが無事に戻って来た安堵から気が緩み、言葉がそのまままろび出てしまった。それをシュヴァルツに指摘されて慌てて口を塞ぐも、エンヴィーとカイルにも聞こえていたようで、二人は偶然にも思っている事が一致していた。
このピュアボーイ、本当に想いを隠し通すつもりがあるのか……アミレスへの好意がもう容赦なく溢れてしまっている。
「じゃが、マクベスタの言葉も頷ける。何故カイルでなければならないのじゃ? 前々から思っておったのじゃが……お前は一体、カイルと何を企んでおる?」
ナトラの黄金の瞳が、その真理さえも見抜いてしまいそうな鋭い瞳が、アミレスとカイルに交互に向けられる。
カイルが気まずさから目を逸らすと、その代わりとばかりにアミレスがいつもの笑顔を作って返事を用意した。
「……──世界平和、かなぁ。カイルは志がたまたま一致した同志なの」
(この世界がゲームの世界だって事とか、私達がこれから先の出来事を知っているとか、そんなの話した所で絶対に信じて貰えない。そもそも話せないしね。だから今私に出来る事は──皆を巻き込まないようにするぐらいだわ)
アミレスにとって最も大事な事は当然己の命と幸せな未来なのだが…………かと言って、彼女には愛したものを見捨てる事など不可能であった。一度認識し、記憶し、消費《あい》したものを見殺しにする事は出来なかった。
救いを求める者を、無辜の民を、愛する人を、彼女は守らなければならない。例えどれだけ天に祈りが届かずとも、その身に余る傲慢さを以て無理やり神に声を届けていた。
それ故に。アミレスは──……彼女は、かつて消費した人達と今消費している人達を守る為に最も効率的な手段を取る。目的の為ならば手段を選ばない姿は、確かに悪役王女と呼ぶに相応しい。
「「せっ……」」
「世界平和ぁ?」
エンヴィーとマクベスタが声を重ね、その続きをシュヴァルツが口にする。
「世界平和って、素敵だと思わない?」
「そりゃ本当に成し遂げられたら素敵だと思いますけど……」
「王女殿下は、どうして世界平和をお望みになるのですか?」
「どうして…………うーん。争いの無い平和な世界なら、きっと誰も苦しまないで済むでしょう?」
「……本当にそう思っていらっしゃるのですか? 本当に、世界平和が可能だと思っていらっしゃるのですか?」
珍しくイリオーデが何度も疑問を口にした。アミレスはそれに少し目を丸くする。
「──無理よ。人が人である限りそんなの不可能だし、もし人でなくなっても知的生命体である以上は絶対に無理よ。どれだけ優秀な指導者がいても、どれだけ信仰される神様がいても……人が争わないような世界は作れないわ。神様はそれすらも楽しんでいるんだもの、どれだけ祈っても無駄だから」
まるで、砂嵐かのようにノイズのかかった彼女の記憶。或る存在にまつわる全てを記憶する為に、その才を与えられたある少女の記憶。
本来であれば完璧に抹消される筈だった記憶は、彼女の生まれ育った特殊な環境の影響か、彼女達をこの世界に生まれ変わらせた何者かの意図に反し、僅かに保持されてしまった。
その記憶に──彼女の思いに引っ張られて、アミレスは無意識にそんな言葉を吐いていた。
(……ん? あれ? 今、私……何か凄い矛盾してない? あれぇ…………?)
世界平和の為だと嘯いていたのに、アミレスはその直後にその世界平和は絶対に叶わぬ事だと断言した。そのほんの数分以内の矛盾に困惑し、アミレスは首を傾げた。
「何サラッと自分の欲望押し出してんだよマクベスタ。それならぼくだって一緒にお出かけしたかったっつーの」
「ッ!? 声……出て……ッ!?」
((めっちゃ声に出てたな))
マクベスタは胸中で気持ちを吐露したつもりが、アミレスが無事に戻って来た安堵から気が緩み、言葉がそのまままろび出てしまった。それをシュヴァルツに指摘されて慌てて口を塞ぐも、エンヴィーとカイルにも聞こえていたようで、二人は偶然にも思っている事が一致していた。
このピュアボーイ、本当に想いを隠し通すつもりがあるのか……アミレスへの好意がもう容赦なく溢れてしまっている。
「じゃが、マクベスタの言葉も頷ける。何故カイルでなければならないのじゃ? 前々から思っておったのじゃが……お前は一体、カイルと何を企んでおる?」
ナトラの黄金の瞳が、その真理さえも見抜いてしまいそうな鋭い瞳が、アミレスとカイルに交互に向けられる。
カイルが気まずさから目を逸らすと、その代わりとばかりにアミレスがいつもの笑顔を作って返事を用意した。
「……──世界平和、かなぁ。カイルは志がたまたま一致した同志なの」
(この世界がゲームの世界だって事とか、私達がこれから先の出来事を知っているとか、そんなの話した所で絶対に信じて貰えない。そもそも話せないしね。だから今私に出来る事は──皆を巻き込まないようにするぐらいだわ)
アミレスにとって最も大事な事は当然己の命と幸せな未来なのだが…………かと言って、彼女には愛したものを見捨てる事など不可能であった。一度認識し、記憶し、消費《あい》したものを見殺しにする事は出来なかった。
救いを求める者を、無辜の民を、愛する人を、彼女は守らなければならない。例えどれだけ天に祈りが届かずとも、その身に余る傲慢さを以て無理やり神に声を届けていた。
それ故に。アミレスは──……彼女は、かつて消費した人達と今消費している人達を守る為に最も効率的な手段を取る。目的の為ならば手段を選ばない姿は、確かに悪役王女と呼ぶに相応しい。
「「せっ……」」
「世界平和ぁ?」
エンヴィーとマクベスタが声を重ね、その続きをシュヴァルツが口にする。
「世界平和って、素敵だと思わない?」
「そりゃ本当に成し遂げられたら素敵だと思いますけど……」
「王女殿下は、どうして世界平和をお望みになるのですか?」
「どうして…………うーん。争いの無い平和な世界なら、きっと誰も苦しまないで済むでしょう?」
「……本当にそう思っていらっしゃるのですか? 本当に、世界平和が可能だと思っていらっしゃるのですか?」
珍しくイリオーデが何度も疑問を口にした。アミレスはそれに少し目を丸くする。
「──無理よ。人が人である限りそんなの不可能だし、もし人でなくなっても知的生命体である以上は絶対に無理よ。どれだけ優秀な指導者がいても、どれだけ信仰される神様がいても……人が争わないような世界は作れないわ。神様はそれすらも楽しんでいるんだもの、どれだけ祈っても無駄だから」
まるで、砂嵐かのようにノイズのかかった彼女の記憶。或る存在にまつわる全てを記憶する為に、その才を与えられたある少女の記憶。
本来であれば完璧に抹消される筈だった記憶は、彼女の生まれ育った特殊な環境の影響か、彼女達をこの世界に生まれ変わらせた何者かの意図に反し、僅かに保持されてしまった。
その記憶に──彼女の思いに引っ張られて、アミレスは無意識にそんな言葉を吐いていた。
(……ん? あれ? 今、私……何か凄い矛盾してない? あれぇ…………?)
世界平和の為だと嘯いていたのに、アミレスはその直後にその世界平和は絶対に叶わぬ事だと断言した。そのほんの数分以内の矛盾に困惑し、アミレスは首を傾げた。