だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「腐ってるとは言え相手は子爵……貴族を相手取るなら確実な物的証拠があった方がいいので。それなら子供達の逃走騒ぎに乗じて色々と貰っちゃおうかなぁと。あ、でも心配は無用です。ご存知の通り隠密行動が出来るので!」

 親指をグッと立てて自信満々に言い切る。
 この隠密行動で沢山情報を集めて、それを纏めてケイリオルさんに渡す。そうすればあの人が徹底的に子爵を潰してくれるだろうからね!

「……お前本当にガキか?」
「と言うか、君いくつなの?」

 あれ、私、何だか年齢疑われてない? 別にサバ読んだりはしてないんだけどな。

「今年で十二歳です」
「全然ガキじゃねぇか……」
「十二歳でそこまで考えて行動するって凄いね……」

 そう答えると、二人の顔が驚愕に染まった。いやまぁ確かに、私、歳の割に少し見た目は大人びているから……パッと見で分からないのは仕方の無い事だ。

「……まぁ、とにかく。そう言う事なので、私は別行動を取らせていただきます。皆さんの協力が得られて本当に良かったです……子供達を何とか逃がしてから、もう一度ここに戻って来る必要が無くなって助かりました」

 と言いながら私は横の檻の錠にこっそり氷の鍵を差し込んで、カチャリと開ける。そして、扉を開いて中にいるメイシア達に出ておいでと告げた。
 勢い良く飛び出てきたシュヴァルツに突進され抱きつかれる。
 そのまま勢いで後ろに倒れて頭を打った私は、ちょっとは文句を言ってやろうとシュヴァルツの方を見たのだが、眩しい笑顔で「楽しいね、スミレ!」と言うものだから、何も言えなくなってしまった。
 本当に数十分前に会ったばかりとは思えないなぁ……何だか今日はこう言う人とよく出会う日だ。

「……なぁ、あいつ今鍵開けたよな……」
「どうやったんだろう……」

 そんな私達の様子を、ディオさん達はえも言われぬ表情で眺めているようだった。
 その後、こっそり氷の鍵を使って全ての檻を開けた。その間にディオさん達が仲間の方々に説明しに行ってくださり、私は子供達にこの後の流れを改めて説明した。
 ようやく家に帰れると大はしゃぎの子供達に、「しーっ」と静かにするように伝えながら、私はディオさん達が戻ってくるのを待つ。
 子供達を外に逃がすのはディオさん達主導で行うので問題無いだろう。私はその隙に姿を隠して証拠集めに行くと。
 なんと完璧な作戦か……これは勝ちましたわ……!

「……」

 ──メイシアが心配そうにこちらをじっと見つめている事に、私はこの時気が付かなかった。
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