だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
第三節・大公領編
227.世界の意思
港町ルーシェでの数日間、私とカイルはカジノで遊んだりお土産を買ったりと遊んでばかりのように見えるが、実は社会にも貢献していた。
私達が暴れたあの後、ルーシェ沖に放置されていた最後の海賊船から様々な作戦の指示書や契約書が、町の自警団によって押収された。
それにより鉱山事故や行方不明事件などの様々な事件の真相が明らかになっただけでなく、リベロリア王室がバックについているとも判明し、繰り返されていた数多の犯罪に皇帝陛下は御立腹。なんと皇帝自らリベロリア王国に乗り込んで大粛清を行ったらしい。
わざわざ、リベロリア王国に行った経験があり空間魔法を使える魔導師を御前に召喚し、リベロリア王国に瞬間転移。リベロリア王室の方々が言い訳をする間も無く皆殺しにしたらしいのだ。
その姿はまさに戦場の怪物と呼ぶに相応しい恐ろしい姿で、一目見ただけで歴戦の戦士達でさえも戦意喪失する程だとか。
リベロリア王室を皆殺しにした後、皇帝はリベロリア王国の民に問うた──
『我が帝国の属国となるか、ここで滅ぶか。好きな方を選ばせてやろう』
その問いにリベロリア王国の民は属国になると即答。その早すぎる決断が王国滅亡の未来を回避したのだ。そうして、皇帝が他国で大暴れしたとなり、ケイリオルさんは仕事がまた増えたと頭を抱えていた。
といった流れで、海賊達──……リベロリア王国の結末はまさに勧善懲悪。悪はやはりそれ相応の報復を受けるのだ。
この報せを聞いて、私達は密かに喜びあっていた。だって私達の事は新聞に何にも書いてなかった。世間的に私達はこの件に無関係となったのだ。つまりは大勝利である。
個人的には、皇帝に私の利用価値を示して殺されないように保険をかけないといけないのだけど……いかんせんあの一件では私達も暴れすぎた。もしあの一件に関わっていると皇帝にバレたらタダでは済まない。
だから今回はこれでいいのだ。勝利案件でいいのだ。
皇宮に戻って来た数日後には大公領についての調査を依頼しようとまた城の大書庫を訪れた。しかし、受付の方に合言葉を告げたところ、『申し訳ございません、実は今、外部からのご依頼はお断りしてまして……』と断られてしまった。
二ヶ月後とかには受付再開の目処が立ってるそうなので、仕方無いかと大公領の調査は後回し。とりあえず妖精や妖精の祝福について勉強して気長に待つ事にした。
まぁ……二ヶ月後には速攻で依頼しに行くつもりだけど。
そんな八月の日々からはや一ヶ月半。暑い夏を終え、九月も終わりに近づいている。氷の国ことフォーロイト帝国では早くも秋が訪れており、肌寒さが顕著になって来た頃。
ケイリオルさんからお呼び出しの手紙を受け取り、指定通りわざわざ正装でイリオーデと二人で彼の元を尋ねる。手紙に書いてあった場所は、いわゆる叙任式や叙爵式を執り行うような第二の謁見の間。
そこに到着すると、ケイリオルさんが手をひらひらと振ってこちらに駆け寄って来た。
「この度はお忙しい中、御足労いただき感謝申し上げます」
「おはようございますケイリオル卿。ちなみに本日はどのような用件で……?」
「少し早めの誕生日のプレゼント…………いや、遅めのプレゼントと言うべきでしょうか。それをお渡しすべく、こうしてこのような場までお越しいただいたのです」
「プレゼントですか」
「プレゼントです」
しかし何故謁見の間に? わざわざこんなドレスまで着て?
次々と湧いてくる疑問。どういう事なのかとイリオーデと目を合わせ、首を傾げる。そんな私達を見て、「ふふ」と上品な笑いを零し、
「では主役が到着された事ですし、早速叙任式の方に移りましょうか」
ささ、あちらへ。とケイリオルさんが示した方は、謁見の間の最奥にある玉座だった。
「はい。……え? 叙任式?」
頷いてから、一歩踏み出そうとして立ち止まる。
「そうです。貴女にお贈りするものは──とても優秀な人材ですから」
人材? 私に?? それもケイリオルさんが優秀だと太鼓判を押す程の人材ですって?
何故そんな優秀な人材を手放すの……ただでさえケイリオルさんは忙しいのに……どうしてよりにもよってそんな、自分の首を締めるような真似を…………?
「何やら色々と誤解されてそうな予感がしますが、兎にも角にも式を執り行いましょう。実を言うと、この部屋も陛下に頼み込んで無理に使わせていただいている状態でして。あまり、長時間居座る事は出来ないのですよ」
ケイリオルさんに背中を押され、玉座まで連れて行かれる。しかしそこに座る事はなく、その前で私は立っているよう指示された。イリオーデは斜め後ろで控えておくように言われたようだ。つまりはいつも通り。
しかし……何で皇帝に無理を言うなんて無茶な真似までして私に人材を与えようとするのかしら、この人は。本当にケイリオルさんはよく分からないわ。
私達が暴れたあの後、ルーシェ沖に放置されていた最後の海賊船から様々な作戦の指示書や契約書が、町の自警団によって押収された。
それにより鉱山事故や行方不明事件などの様々な事件の真相が明らかになっただけでなく、リベロリア王室がバックについているとも判明し、繰り返されていた数多の犯罪に皇帝陛下は御立腹。なんと皇帝自らリベロリア王国に乗り込んで大粛清を行ったらしい。
わざわざ、リベロリア王国に行った経験があり空間魔法を使える魔導師を御前に召喚し、リベロリア王国に瞬間転移。リベロリア王室の方々が言い訳をする間も無く皆殺しにしたらしいのだ。
その姿はまさに戦場の怪物と呼ぶに相応しい恐ろしい姿で、一目見ただけで歴戦の戦士達でさえも戦意喪失する程だとか。
リベロリア王室を皆殺しにした後、皇帝はリベロリア王国の民に問うた──
『我が帝国の属国となるか、ここで滅ぶか。好きな方を選ばせてやろう』
その問いにリベロリア王国の民は属国になると即答。その早すぎる決断が王国滅亡の未来を回避したのだ。そうして、皇帝が他国で大暴れしたとなり、ケイリオルさんは仕事がまた増えたと頭を抱えていた。
といった流れで、海賊達──……リベロリア王国の結末はまさに勧善懲悪。悪はやはりそれ相応の報復を受けるのだ。
この報せを聞いて、私達は密かに喜びあっていた。だって私達の事は新聞に何にも書いてなかった。世間的に私達はこの件に無関係となったのだ。つまりは大勝利である。
個人的には、皇帝に私の利用価値を示して殺されないように保険をかけないといけないのだけど……いかんせんあの一件では私達も暴れすぎた。もしあの一件に関わっていると皇帝にバレたらタダでは済まない。
だから今回はこれでいいのだ。勝利案件でいいのだ。
皇宮に戻って来た数日後には大公領についての調査を依頼しようとまた城の大書庫を訪れた。しかし、受付の方に合言葉を告げたところ、『申し訳ございません、実は今、外部からのご依頼はお断りしてまして……』と断られてしまった。
二ヶ月後とかには受付再開の目処が立ってるそうなので、仕方無いかと大公領の調査は後回し。とりあえず妖精や妖精の祝福について勉強して気長に待つ事にした。
まぁ……二ヶ月後には速攻で依頼しに行くつもりだけど。
そんな八月の日々からはや一ヶ月半。暑い夏を終え、九月も終わりに近づいている。氷の国ことフォーロイト帝国では早くも秋が訪れており、肌寒さが顕著になって来た頃。
ケイリオルさんからお呼び出しの手紙を受け取り、指定通りわざわざ正装でイリオーデと二人で彼の元を尋ねる。手紙に書いてあった場所は、いわゆる叙任式や叙爵式を執り行うような第二の謁見の間。
そこに到着すると、ケイリオルさんが手をひらひらと振ってこちらに駆け寄って来た。
「この度はお忙しい中、御足労いただき感謝申し上げます」
「おはようございますケイリオル卿。ちなみに本日はどのような用件で……?」
「少し早めの誕生日のプレゼント…………いや、遅めのプレゼントと言うべきでしょうか。それをお渡しすべく、こうしてこのような場までお越しいただいたのです」
「プレゼントですか」
「プレゼントです」
しかし何故謁見の間に? わざわざこんなドレスまで着て?
次々と湧いてくる疑問。どういう事なのかとイリオーデと目を合わせ、首を傾げる。そんな私達を見て、「ふふ」と上品な笑いを零し、
「では主役が到着された事ですし、早速叙任式の方に移りましょうか」
ささ、あちらへ。とケイリオルさんが示した方は、謁見の間の最奥にある玉座だった。
「はい。……え? 叙任式?」
頷いてから、一歩踏み出そうとして立ち止まる。
「そうです。貴女にお贈りするものは──とても優秀な人材ですから」
人材? 私に?? それもケイリオルさんが優秀だと太鼓判を押す程の人材ですって?
何故そんな優秀な人材を手放すの……ただでさえケイリオルさんは忙しいのに……どうしてよりにもよってそんな、自分の首を締めるような真似を…………?
「何やら色々と誤解されてそうな予感がしますが、兎にも角にも式を執り行いましょう。実を言うと、この部屋も陛下に頼み込んで無理に使わせていただいている状態でして。あまり、長時間居座る事は出来ないのですよ」
ケイリオルさんに背中を押され、玉座まで連れて行かれる。しかしそこに座る事はなく、その前で私は立っているよう指示された。イリオーデは斜め後ろで控えておくように言われたようだ。つまりはいつも通り。
しかし……何で皇帝に無理を言うなんて無茶な真似までして私に人材を与えようとするのかしら、この人は。本当にケイリオルさんはよく分からないわ。