だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
♢♢


「──ん……わたし、また倒れて……」

 重い瞼をこじ開けると、見知った天井が視界に映った。
 世界の強制力と思しきものに押し負けて意識を落とされてしまったみたいなんだけれど……多分、イリオーデとかが東宮まで連れ戻ってくれたんだろうな。
 ドレスだって脱がされている事から、どこかのタイミングで侍女の誰かが着替えさせてくれたのだろう。

「王女殿下……! お目覚めになられましたか」
「主君!」

 体を起こしていると、少し離れた所からイリオーデとアルベルトが駆け寄って来て。

「おはよう二人共。ちなみに私、どれぐらい寝てたの?」
「約一日です。見ての通り今はまだ昼前でして……何はともあれ、王女殿下が無事にお目覚めになって良かったです」
「何か必要なものがあればご用意致しますので、何なりとお申し付けください。主君」

 一日か。昼頃に叙任式の帰りで倒れたみたいだから、確かに一日ぐらい眠っていたのね。仕事があるからもう少し早く起きたかったなぁ……。

「アミレスー! 目覚めたのじゃな!?」

 ドォンッッ、と扉が破壊される音が轟いた。

「我、お前の事が心配で心配ですごーく耳を澄ましておったのじゃ。そしたらイリオーデ達の声が聞こえて……良かった、お前が目覚めてくれて」

 どうやらナトラは私の事を心配して、イリオーデ達の声を聞いてここまで走って駆けつけてくれたらしい。
 でも扉……私の部屋の扉が…………。
 この轟音を聞いて他の人達も部屋までやって来た。最初にやって来たシュヴァルツも「えっなんで扉粉々になってんの……?」とたまげながら入室していた。
 その次に来たカイル、マクベスタ、師匠の三人もまた、粉々になった扉に疑問符を浮かべていた。

 そして、最後に来て粉々の扉を見て顔を青ざめさせた侍女達にごめんねと謝る。後でちゃんと業者に頼んで扉を修理して貰うから……ごめんね、悩みの種を増やして。ほんとにごめん。
 そうやって東宮の人達が大集合した私の部屋にて、ナトラが私の体に抱き着いてこちらを見上げてくる。

「アミレス、本当にもう起きて大丈夫なのか? まだあと二十日程は余裕があるのじゃぞ??」
「え、何の話? 私起きちゃ駄目だったの……?」
「たったの一日でお前の体が回復する筈がない! だって前は目覚めるのに三週間もかかっておったじゃろ!」
「えぇ……それはあの時がおかしかっただけであって、今は別に大丈夫だよ。心配かけてごめんね、ナトラ。皆も」

 倒れたのにすぐに目覚めた私を不審に思ったようで、ナトラは何度も大丈夫なのかと確認して来た。そんなナトラに何度も大丈夫だよと返事して、イリオーデから私が倒れた後の話を聞く事に。

 どうやら、この件を受けてケイリオルさんがわざわざ国教会に大司教の派遣を要請してくれたらしく、早くても明後日には誰か来てくれるだろう。との事らしい。
 とりあえず何が原因で倒れたのか分からない以上、大司教が来るまで絶対安静! と私は皆に釘を刺されてしまった。

 原因はなんとなく分かってるんだけどね。でもこれ、皆には話せないだろうし……だからもう、皆の言葉に従う事にしたのだ。

「あ、そうだ。丁度皆いる事だし、一応紹介しておくね」

 ちょいちょいとアルベルトを手招きする。
 ススス……と静かに寝台《ベッド》のすぐ側まで来たアルベルトに皆の注目が集まる。

「彼の名前はアル──……っごほん、ルティ。昨日付けで私の部下になった人です」
「ご紹介にあずかりました。主君の下僕《しもべ》、ルティと申します」
「多分彼もこれから東宮にいる事が増えるだろうし、皆も仲良くしてね」

 ついうっかり彼の本名を言いそうになってしまった。焦って軌道修正したけど大丈夫かしら?
 そんな簡単な紹介を終えて、アルベルトも東宮の一員となった。また後で改めてアルベルトを呼び出して、調査のお礼がてらの港町お土産を渡そう。

 そして、何とかして……世界の意思──ゲームの強制力に抗う為の手段を見つけなければ。それがある限り私のハッピーエンドなど夢のまた夢だ。だからゲームの強制力に抵抗する方法が必要なのである。
 頼むから見つかって。そう、心の中で強く祈った。
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