だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
早くゲームをプレイして、クリアしないと。
そう決めてからは数日間、本当に空き時間という空き時間を全てゲームに費やした。あの人への報告《うそ》もかかさず、ゲームをプレイした。
そしてあれから一週間が経ち、ついに『アンディザ』をクリアしたあたしは意気揚々といつものカフェに向かった。
一週間ぶりのカフェ。お兄さんはいるだろうか、いるといいな。
いつものドリンクを注文し、ドリンク片手にいつもの席に向かうとそこにはお兄さんがいた。 『お兄さん』と声をかけると、
『あぁ、久しぶり』
お兄さんはイヤホンを外してあたしの方を見た。
よかった、まだお兄さんには嫌われていないみたい。
『あのですね、お兄さん。実はあたし……』
『ん?』
ホッと胸を撫で下ろして向かいの席に座り、あたしはゲーム機を取り出した。そしてゲーム画面をお兄さんに見せつける。
『ゲーム、完全クリアしました!』
『おお、マジか。どうだった? アンディザは面白かったか?』
『はい。つらいシーンもあったけど、でも凄く面白かったです』
『そうかそうか。そりゃ良かったぜ』
先程までの退屈そうな顔が嘘のように、お兄さんは楽しそうな表情となった。
すると突然お兄さんがずい、と身を乗り出してきて、心臓がドキッと音を生む。
『で、全部プレイし終わって誰が一番好きだった?』
『えっ? えと……ミカリアと、フリードル……かな』
『うぉぉ……意外な所いったなぁ。俺はてっきりカイル辺り行くと思ってたんだが。でもあれだな、どっちもまぁまぁな溺愛キャラだし納得ではある』
『カイルもサラもアンヘルもロイもセインカラッドもマクベスタも好きだけど、特に好きだったのはミカリアとフリードルでした』
『そっか。アンディザを好きになってくれたみたいで本当に嬉しいよ』
初めて見るお兄さんの無邪気な笑顔。
それを見たあたしの心臓はドキドキと高鳴り、顔まで熱くなってくる。慌てて下を向いたけれど、顔から熱が引く気配は無い。
見られちゃダメだ。お兄さんにだけは見られちゃいけない。お兄さんにこの気持ちを知られたら、あたしはもうお兄さんと一緒にはいられない──。
『なぁ、アンタのスマホ鳴ってるけど』
『っ! そ、そうですね……!』
『……?』
プルルッ、と誰かからの着信を告げるあたしのスマホ。画面にはあの人の名前。
慌てて電話を繋げて、『もしもし』と口にする。
『──■■■、元気? 今どこで何してるのかしら。またカフェに入り浸ってるの? いくら気に入ったからっていつもカフェに行ってたら勉強にも集中出来ないじゃないの。今どこにいるのか知らないけど、早く家に帰って勉強なさい。お母さんはあなたの為に言ってるのよ?』
通話越しに聞こえてくる、いつもの調子。あたしの為あたしの為って……本当にいつもそう。
誰が、いつ、そんな事頼んだかしら。
『……うん。今日はもう家に帰って、勉強するね』
『そうしなさい。あなたがちゃんと勉強して、いい会社に就職してくれる事がお母さんの願いだからね』
『分かってるよ。それじゃあね』
下唇を噛みながら、半ば無理やり通話を切る。
せっかく一週間振りにお兄さんと会えたのに……そんなやるせなさから、はぁ。とため息をついたら、
『あのさ、アンタ……もうちょっと自分の為に生きてみたらどうなんだ?』
お兄さんは驚く事を口にした。
『自分でも自分がおかしいって事はもう分かってんだろ? なら、もう他の誰でもない自分の為に生きろよ。もっと我儘に、自由に生きたらいいだろ』
『もっと我儘に、自由に…………』
『親の言いなりになんかならずに、心ゆくままに生きたらいいと思うけど』
『でも、今更そんなの……』
『相当洗脳されてるっぽいしなぁ。はぁ、しゃーねぇな。乗りかかった船だ、俺もある程度は協力してやるよ。毒親からの脱出』
『え……?』
『言っただろ。俺、同志は大切にする主義なんだよ。アンタが自由になりたいっていうのなら、俺も協力してやるよ。まー、とどのつまりアンタ次第だな』
アンタが望むなら、自由になる手伝いもしてやる。そう、お兄さんは真摯な姿勢を見せた。あまりの温度差に驚き、声が出ない。
……自由になれるの? もうあんな痛い思いをしなくてもいいの? お母さんの機嫌を伺って生きる必要も、あたしの人生を全て決められる必要もないの?
あたしも──普通に、なれるの?
目頭が熱くなる。あたしは、ゆっくりと頭を下げて、彼に告げた。
『お願いします。どうか、あたしを、自由にしてください』
そう決めてからは数日間、本当に空き時間という空き時間を全てゲームに費やした。あの人への報告《うそ》もかかさず、ゲームをプレイした。
そしてあれから一週間が経ち、ついに『アンディザ』をクリアしたあたしは意気揚々といつものカフェに向かった。
一週間ぶりのカフェ。お兄さんはいるだろうか、いるといいな。
いつものドリンクを注文し、ドリンク片手にいつもの席に向かうとそこにはお兄さんがいた。 『お兄さん』と声をかけると、
『あぁ、久しぶり』
お兄さんはイヤホンを外してあたしの方を見た。
よかった、まだお兄さんには嫌われていないみたい。
『あのですね、お兄さん。実はあたし……』
『ん?』
ホッと胸を撫で下ろして向かいの席に座り、あたしはゲーム機を取り出した。そしてゲーム画面をお兄さんに見せつける。
『ゲーム、完全クリアしました!』
『おお、マジか。どうだった? アンディザは面白かったか?』
『はい。つらいシーンもあったけど、でも凄く面白かったです』
『そうかそうか。そりゃ良かったぜ』
先程までの退屈そうな顔が嘘のように、お兄さんは楽しそうな表情となった。
すると突然お兄さんがずい、と身を乗り出してきて、心臓がドキッと音を生む。
『で、全部プレイし終わって誰が一番好きだった?』
『えっ? えと……ミカリアと、フリードル……かな』
『うぉぉ……意外な所いったなぁ。俺はてっきりカイル辺り行くと思ってたんだが。でもあれだな、どっちもまぁまぁな溺愛キャラだし納得ではある』
『カイルもサラもアンヘルもロイもセインカラッドもマクベスタも好きだけど、特に好きだったのはミカリアとフリードルでした』
『そっか。アンディザを好きになってくれたみたいで本当に嬉しいよ』
初めて見るお兄さんの無邪気な笑顔。
それを見たあたしの心臓はドキドキと高鳴り、顔まで熱くなってくる。慌てて下を向いたけれど、顔から熱が引く気配は無い。
見られちゃダメだ。お兄さんにだけは見られちゃいけない。お兄さんにこの気持ちを知られたら、あたしはもうお兄さんと一緒にはいられない──。
『なぁ、アンタのスマホ鳴ってるけど』
『っ! そ、そうですね……!』
『……?』
プルルッ、と誰かからの着信を告げるあたしのスマホ。画面にはあの人の名前。
慌てて電話を繋げて、『もしもし』と口にする。
『──■■■、元気? 今どこで何してるのかしら。またカフェに入り浸ってるの? いくら気に入ったからっていつもカフェに行ってたら勉強にも集中出来ないじゃないの。今どこにいるのか知らないけど、早く家に帰って勉強なさい。お母さんはあなたの為に言ってるのよ?』
通話越しに聞こえてくる、いつもの調子。あたしの為あたしの為って……本当にいつもそう。
誰が、いつ、そんな事頼んだかしら。
『……うん。今日はもう家に帰って、勉強するね』
『そうしなさい。あなたがちゃんと勉強して、いい会社に就職してくれる事がお母さんの願いだからね』
『分かってるよ。それじゃあね』
下唇を噛みながら、半ば無理やり通話を切る。
せっかく一週間振りにお兄さんと会えたのに……そんなやるせなさから、はぁ。とため息をついたら、
『あのさ、アンタ……もうちょっと自分の為に生きてみたらどうなんだ?』
お兄さんは驚く事を口にした。
『自分でも自分がおかしいって事はもう分かってんだろ? なら、もう他の誰でもない自分の為に生きろよ。もっと我儘に、自由に生きたらいいだろ』
『もっと我儘に、自由に…………』
『親の言いなりになんかならずに、心ゆくままに生きたらいいと思うけど』
『でも、今更そんなの……』
『相当洗脳されてるっぽいしなぁ。はぁ、しゃーねぇな。乗りかかった船だ、俺もある程度は協力してやるよ。毒親からの脱出』
『え……?』
『言っただろ。俺、同志は大切にする主義なんだよ。アンタが自由になりたいっていうのなら、俺も協力してやるよ。まー、とどのつまりアンタ次第だな』
アンタが望むなら、自由になる手伝いもしてやる。そう、お兄さんは真摯な姿勢を見せた。あまりの温度差に驚き、声が出ない。
……自由になれるの? もうあんな痛い思いをしなくてもいいの? お母さんの機嫌を伺って生きる必要も、あたしの人生を全て決められる必要もないの?
あたしも──普通に、なれるの?
目頭が熱くなる。あたしは、ゆっくりと頭を下げて、彼に告げた。
『お願いします。どうか、あたしを、自由にしてください』