だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「とりあえずお帰りなさい、ルティ。あまりにもタイミングがバッチリで流石としか言えないわ」
「!!」
お帰りなさいと告げたら、アルベルトの顔は明るくなり、彼の嬉しさがひしひしと伝わってきた。
そんな彼を見て、隣に座るメイシアが「わたしの知らないうちにまた…………!?」と何かに戦慄しているようだった。
知らないうち……ふむ、執事服を依頼する時にアルベルトの事も話しておいた方がよかったのかな。
「っ、ええと……その、タイミング……とは?」
「実は貴方にプレゼントがあるの。就職祝いのようなものよ」
「プレゼント……俺に、ですか?」
「えぇ。貴方に」
「………………」
慌てて平静を装ったアルベルトは、私がプレゼントを用意したと聞いて、ぽかんとしてしまった。
そんな茫然自失とする程嫌なの……? 私からのプレゼント……?
地味にショックを受けつつも、気を取り直して私は執事服の方を指さす。
「とと、とりあえず。あちらが貴方へのプレゼント、ルティ専用の執事服になります!」
執事服は完全に私の趣味です!
「──俺、専用の……服……」
ゆっくりと近づいていって、アルベルトは慎重に執事服に触れた。濁った瞳を丸くして、執事服をじっと見つめている。
「制作を担当させていただいた商会として、その執事服について少しばかり説明しましょう」
あら、メイシアから説明してくれるのね。助かるわ。
「アミレス様自らがどなたかの為にデザインしただけでもその価値は莫大なものとなるのに、『可能な限り最上級の生地を使って欲しい』と言われ、更には『身体保護系の付与魔法《エンチャント》もして欲しいな』とも申し付けられまして。間違いなく当商会の長い歴史の中でも一二を争う、手間暇のかかった貴重な一品となっております。なので大事にしてください」
メイシアが少しムスッとした態度で説明すると、アルベルトは「主君、が……俺の為に…………」と何故か泣き出しそうな、でも凄く嬉しそうな。そんな顔になっていた。
しかし流石はシャンパー商会だ。あんな無茶振りにも本当に応えてくれたなんて。
その上で可及的速やかでお願い! なんてクソオブクソな取引先みたいな納期で依頼したのに……まさか全てにおいて私の期待を超えてくるなんて……これがシャンパー商会…………!
「まぁ、そういう事だから。いつまでもその格好じゃ目立つし、普通の服を用意しようかなって思ったの。ほら、ルティは私の従僕なんだからそれに見合った服をあげようと思って」
うん、今即興で考えたにしては中々に筋の通った言い訳だ。やるわね私。
「それで執事服なのですね。しかし、俺のような人間にこのような服は……あまりにも不釣り合いです」
「どうしてそんな事を言うの? 私が貴方に似合うと思って作ったのだから、不釣り合いな訳ないでしょう?」
だがまぁ、アルベルトの言い分にも一理ある。あまりにもアルベルトの顔が良く、似合いすぎるが為に執事服が霞む可能性とてあるかもしれない。
その時はその時ね。それはもう、アルベルトの顔が整っている事が問題なんだもの。
「っ、今から……今から着ても、構いませんか?」
「寧ろいいの? 帰って来たばかりなのに、休みもせずそんな私の欲望に応えてくれちゃって……」
コクコクと頷いて、アルベルトは執事服を手に影の中に消えていった。
……え? もしかして影の中で着替えるつもり? 他の誰も入れないからって、影の亜空間を私物化しすぎでは……??
そうやって困惑するのも束の間、アルベルトがまた、柱の影からゆっくりと出て来て。
その姿を見て私は愕然とした。
想像の数億倍、めっちゃ似合ってる。アルベルトの為に作ったから当然なんだけど、まさにアルベルト専用の執事服としか言えない着こなしっぷり。
数年間地方の砦で騎士達と共に過ごしていたというアルベルトは体格がよく、着痩せするタイプだった。だからこそ執事服のようなカッチリとした服が映える。
鍛えられた体である事を感じさせる胴体から伸びる長くしっかりとした手足。特に、股下が軽く百メートルとかはありそうなぐらい、足が長く見える。
多分四捨五入したら全身足よ、彼。本当に足が長いわ。物理型足長お兄さんと呼ぼうか迷う程に、足が長ぇ。
そんな黒髪灰目の王道執事が、目の前に現れた。それにオタクである私は勿論大興奮──なのだが、人前という事もあり、必死に王女としての体裁《メンツ》を保とうと我慢している。
アルベルトと二人きりだったとしたら、ボス猿を倒した猿のように思い切り叫んでいた事だろう。
「!!」
お帰りなさいと告げたら、アルベルトの顔は明るくなり、彼の嬉しさがひしひしと伝わってきた。
そんな彼を見て、隣に座るメイシアが「わたしの知らないうちにまた…………!?」と何かに戦慄しているようだった。
知らないうち……ふむ、執事服を依頼する時にアルベルトの事も話しておいた方がよかったのかな。
「っ、ええと……その、タイミング……とは?」
「実は貴方にプレゼントがあるの。就職祝いのようなものよ」
「プレゼント……俺に、ですか?」
「えぇ。貴方に」
「………………」
慌てて平静を装ったアルベルトは、私がプレゼントを用意したと聞いて、ぽかんとしてしまった。
そんな茫然自失とする程嫌なの……? 私からのプレゼント……?
地味にショックを受けつつも、気を取り直して私は執事服の方を指さす。
「とと、とりあえず。あちらが貴方へのプレゼント、ルティ専用の執事服になります!」
執事服は完全に私の趣味です!
「──俺、専用の……服……」
ゆっくりと近づいていって、アルベルトは慎重に執事服に触れた。濁った瞳を丸くして、執事服をじっと見つめている。
「制作を担当させていただいた商会として、その執事服について少しばかり説明しましょう」
あら、メイシアから説明してくれるのね。助かるわ。
「アミレス様自らがどなたかの為にデザインしただけでもその価値は莫大なものとなるのに、『可能な限り最上級の生地を使って欲しい』と言われ、更には『身体保護系の付与魔法《エンチャント》もして欲しいな』とも申し付けられまして。間違いなく当商会の長い歴史の中でも一二を争う、手間暇のかかった貴重な一品となっております。なので大事にしてください」
メイシアが少しムスッとした態度で説明すると、アルベルトは「主君、が……俺の為に…………」と何故か泣き出しそうな、でも凄く嬉しそうな。そんな顔になっていた。
しかし流石はシャンパー商会だ。あんな無茶振りにも本当に応えてくれたなんて。
その上で可及的速やかでお願い! なんてクソオブクソな取引先みたいな納期で依頼したのに……まさか全てにおいて私の期待を超えてくるなんて……これがシャンパー商会…………!
「まぁ、そういう事だから。いつまでもその格好じゃ目立つし、普通の服を用意しようかなって思ったの。ほら、ルティは私の従僕なんだからそれに見合った服をあげようと思って」
うん、今即興で考えたにしては中々に筋の通った言い訳だ。やるわね私。
「それで執事服なのですね。しかし、俺のような人間にこのような服は……あまりにも不釣り合いです」
「どうしてそんな事を言うの? 私が貴方に似合うと思って作ったのだから、不釣り合いな訳ないでしょう?」
だがまぁ、アルベルトの言い分にも一理ある。あまりにもアルベルトの顔が良く、似合いすぎるが為に執事服が霞む可能性とてあるかもしれない。
その時はその時ね。それはもう、アルベルトの顔が整っている事が問題なんだもの。
「っ、今から……今から着ても、構いませんか?」
「寧ろいいの? 帰って来たばかりなのに、休みもせずそんな私の欲望に応えてくれちゃって……」
コクコクと頷いて、アルベルトは執事服を手に影の中に消えていった。
……え? もしかして影の中で着替えるつもり? 他の誰も入れないからって、影の亜空間を私物化しすぎでは……??
そうやって困惑するのも束の間、アルベルトがまた、柱の影からゆっくりと出て来て。
その姿を見て私は愕然とした。
想像の数億倍、めっちゃ似合ってる。アルベルトの為に作ったから当然なんだけど、まさにアルベルト専用の執事服としか言えない着こなしっぷり。
数年間地方の砦で騎士達と共に過ごしていたというアルベルトは体格がよく、着痩せするタイプだった。だからこそ執事服のようなカッチリとした服が映える。
鍛えられた体である事を感じさせる胴体から伸びる長くしっかりとした手足。特に、股下が軽く百メートルとかはありそうなぐらい、足が長く見える。
多分四捨五入したら全身足よ、彼。本当に足が長いわ。物理型足長お兄さんと呼ぼうか迷う程に、足が長ぇ。
そんな黒髪灰目の王道執事が、目の前に現れた。それにオタクである私は勿論大興奮──なのだが、人前という事もあり、必死に王女としての体裁《メンツ》を保とうと我慢している。
アルベルトと二人きりだったとしたら、ボス猿を倒した猿のように思い切り叫んでいた事だろう。