だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「とにかくだ」

 手のひらをパンッと鳴らして、俺は話を戻す。自由に会話をしていた面々が一斉に静まった。
 そんな仲間達を見渡して、俺は改めて言う。

「俺はあのガキの言葉を信じて、ガキの考えた無茶な作戦に加担する事にした……俺達が、あいつの考えた無茶な作戦を、無茶で無謀なものじゃなくしてやるんだ」

 長剣《ロングソード》を得物とし、身体能力に優れ、檻の鍵を簡単に開けた、王者の風格を感じさせる変わった女。
 たったの十二歳だってのに大人を頼らず、自分一人で全部何とかしようとする無謀なガキを……ほっとく訳にもいかねぇだろ。
 あいつに頼れる大人がいないのなら、俺達がなってやればいい。ただそれだけの理由で、俺はあいつの提案を受け入れた。
 正直、報酬とかは期待してないしそもそも信じていない。あんなちっせぇガキに金やら地位を与えるって言われて信じられる方がおかしい。
 あんな突飛な事を言い出すぐらい、あいつは大人の力を欲している……それもガキ共を救う為にだ。それなら、同じようにガキ共を救いたいと思っている俺達が手を貸そうじゃないかと。
 そう考えても、なんら不思議じゃあねぇだろ?

「作戦の事は分かった。とにかく、この後子供達を守れば良いんだな? 任せろ、合理的に護衛してみせる」
「シャル兄ちゃん、合理的って言葉言いたいだけでしょ」
「絶対に意味理解してなさそうだね」
「……本当に馬鹿だ……」
「シャル兄が馬鹿ならオレは何なんだ!?」
「はは、ジェジは馬鹿じゃなくて阿呆だから別枠だよ。安心しな」

 仲間達が和気藹々とくだらない会話を繰り広げる。こいつ等、仕事中でも気を抜くとすぐこれだからな……。
 はぁ、とため息をつきながら額に手を当てる。
 ふと、俺は横に立つバドールにちらりと視線を送った。するとバドールは、諦めろとばかりに瞳を閉じて首を横に振った。
 ……まぁ、確かにこいつ等の事はもはや諦める他ない。昔からずっとこの無法地帯っぷりだからな。
 だが、それでいい。こいつ等が自由に己を曲げる事無く伸び伸びと生きていられるのなら、俺はそれでいいと思っている。
 そんな場所を守る為に、俺はいつも戦ってるんだから。
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