だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜

238.いざ大公領へ

 アルベルトが持ち帰ってくれた情報をもとに、私はカイルやイリオーデやアルベルト、たまに鏡越しのヘブンを交えて作戦会議を繰り返した。
 私がイリオーデとアルベルトにこの件について話した事をカイルはとても驚いていた。しかし同時に、『アイツ等がいるなら心強いな』と二人の事を歓迎しているようだった。

 作戦会議中に一度、ヘブンかアルベルトによって、いっその事色んな人を巻き込むのはどうだろうか。なんて話題が挙がったけれど、私はそれに強く反対した。
 元々身内は(カイルを除いて)誰も巻き込みたくなかった。イリオーデとアルベルトに関しては仕方無く、というか私が折れてつい巻き込んでしまっただけだし。
 なのでもうこれ以上は誰も巻き込みたくない。師匠はこの事を知っているけど、精霊さんは人間界ではあまり力を使えないようなので、乱入して来たりもしないだろう。

 ちなみにカイルもこの事については反対していた。マクベスタに危険な事をして欲しくないらしい。
 ナトラは強すぎるから駄目、シュヴァルツは子供だから駄目。と他にも色々と理由をつけてとにかく反対した。

 そうやって、水面下で大公領の内乱阻止計画を立てる中。とんでもない朗報が。
 何の偶然か……大公領の即位式に皇族代表として私が参列する事になった。
 適当な理由をつけて大公領に向かってやろうと思っていたのだが、まさかの公式的理由が。皇帝の名代として行くっていうのが少し癪だけど、まあそれはそれ。これはこれ。

 これで、私が大公領に行く事自体は何ら不自然ではない。
 私がたまたま大公領を訪れた時に、たまたま大公領が何やかんやで大騒ぎになって、たまたま私がそれに巻き込まれたって、別に不思議ではない。
 なので改めて、私が公式的に大公領を訪問する事を前提とした計画に変更・改善する。
 ヘブンが日中は忙しいからって、会議をするのは決まって夜中だけど……皆で夜食をつまみながらあーだこーだと話し合うのは、少し楽しかった。

 しかし、私は本当に運がいいわ。まさに渡りに船とはこの事を言うのねと思う程都合のいい流れ。これのお陰でカイルが妙案を思いつき、その方向で最終決定し計画を固める事になった程、私の公式的訪問は私達にとって都合が良すぎた。
 これならば当初の計画であった『大公領の領民にとっての共通の敵、絶対悪になる』という作戦も可能だと、私達は意気込んだのだ。

 そうやって過ぎ去った数ヶ月。
 私はあくまでも公式的に訪問する必要がある。大公領までは最低片道一ヶ月はかかるとの事なので、一月の終わり頃に行われる即位式に間に合うよう、私達は余裕をもって十二月中頃に出発する事にした。
 フォーロイト帝国は今や真冬も真冬。除雪魔導具を搭載し、かつ寒さに強い馬の引く馬車での移動でなければ長距離移動など成り立たない。
 そりゃあ、皇帝もフリードルも行きたがらない訳だ。

 話は変わるが、最もこの大公領行きに反対したのはナトラであった。最初は私がナトラの申し出を断ったからなのだと思ったのだが、違ったのだ。
 ナトラもシュヴァルツもマクベスタも、どこからともなく話を聞きつけて突然やって来たハイラも、私の誕生日を祝えない事に不満を漏らしていた。

 確かに一月の終わりにある即位式の為に大公領に行くのだから、即位式が普通に行われて終わったとしても、時期的には帰路にて私の誕生日を迎える事になるだろう。
 何かと誕生日を祝いたがる皆的には、それが一大事なのだとか。

 ……まぁ、ハイラやマクベスタに関しては、同行者が男二人だけな事に声を揃えて反対していたけれど。
 カイルとスコーピオンとは現地集合という事になっているので、私は護衛のイリオーデと従僕のアルベルトと共に大公領に向かう事になっている。
 出来る限り無関係な人は巻き込みたくないのと、私自身が最低限の生活能力がある事を鑑みて、侍女は付いてこなくていい。イリオーデとルティと行ってくるよ。と伝えたのだ。
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