だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
239.いざ大公領へ2
「えーと……では事前に伝えてました通り、貴方達には本日この方々との乱闘形式での模擬戦をしてもらいます」
騎士団の訓練場に集まった百人近い騎士に向けてケイリオルさんが軽く説明すると、騎士達は「王女殿下だ」「相手はたった三人だと……?」「青い髪──ランディグランジュの神童?!」と口々にざわついた。
「では王女殿下、何か一言いただけますか?」
「ごほんっ。帝国を守りし勇敢なる騎士の皆様方。本日は私《わたくし》共の実力をお見せする機会を作ってくれて感謝します。剣を持つ者に貴賎なし……身分だとか立場だとかは頭の隅に追いやって、真剣勝負といきましょうね」
ニコリと微笑んでみると、騎士団の方々は、先程のざわめきがかき消されるような興奮した歓声をあげる。
「…………ふむ。私が百人全て倒せば王女殿下のお手を煩わせる事もないか」
「ちょっと待ってよ、俺が百人倒すから。騎士君の出番なんて無いから」
「イリオーデだ。お前こそ引っ込んでいろ、ここは私一人で十分だ」
「はあ? 俺一人で十分だって言ってるだろ、石頭」
「それはこちらの台詞だ、偏屈者」
それはそれとして、何でこっちは内ゲバしてるのかしら。喧嘩する程仲がいいとは言うけれど、この人達いつもこうね。
……二人共能力が突出してるからこそ、張り合える相手がいるのが嬉しいのかな。そう考えると何だかとても微笑ましく思えて来たわ。
「一応、私達三人の実力を見せつける為の模擬戦なんだから、一人で全部倒されては困るわ。ここは大まかに三十人ずつ相手取って、終わってから暇だったら残りの十人も……という取り決めにしましょう」
「王女殿下の仰せのままに」
「かしこまりました」
本当に素直だなあ、二人共。忠犬みたい。
実は私も二人と一緒に模擬戦に参加する事にした。私達三人で戦力は十分だと示すにはこれが最適解だと思って。だから今日は久々に、シャンパー商会特製戦闘服に着替え、イリオーデとアルベルトを従えてこの場に赴いた。
ちなみに模擬戦を乱闘形式に指定したのも私だ。一人一人相手するのが面倒臭くて……。
「さて、ではそろそろ始めましょうか。ケイリオル卿!」
「……心無しか楽しそうですね、王女殿下」
「そりゃあもう! こんなに沢山の実力者と戦えるなんて滅多に無い機会ですから!」
「彼等が王女殿下の期待に応えられるといいのですが」
困ったように肩をすぼめて、ケイリオルさんは呟いた。
「──これより、王女殿下陣営三名対騎士団員百名による模擬戦を開始します!」
騎士団員の前にまで私達が移動したのを確認して、ケイリオルさんが高らかに宣言する。
その宣言を皮切りに私達はそれぞれ別方向に走り出して、そして思い思いに戦った。
殺してはならないから気絶させる事を最優先に戦っていたけれど、案外後れを取る事はなかった。多分、彼等は私が王女だからだと無意識に配慮していたのだろう。そうでなくては、ただすばしっこいだけの子供相手に、大の大人達がここまで翻弄される事は無い筈だ。
跳んで躱して凪いで振り下ろして蹴って溺れさせて。色々と試すうちに、いつの間にか三十人程倒してしまったようだ。
もう少し戦ってみたかったんだけどな……と思いつつちらりとイリオーデ達をそれぞれ見てみると、そこは既に死屍累々(死んではないけど)。
私が色々と検証したりしている間に、二人はあっさりと敵を倒していたようだ。
流石はイリオーデとアルベルトね。当たり前のように強いわ。
そうやって改めて二人の強さを再確認した所で、余りの十人を倒す為に競い合っていたらしい件の二人が、いがみ合いながら私の元に戻ってきた。
「イリオーデ、ルティ。二人共お疲れ様」
「王女殿下こそお疲れ様です。相変わらず何とも美しい剣さばきで、何度も見蕩れてしまいました」
「やはり主君の戦う姿は、無彩色の世界でもいっそう際立つ輝きそのものです。戦闘中にも関わらず何度も目を奪われました」
パッと何事も無かったかのように二人は笑みを作り、美辞麗句を口にする。
相変わらず切り替えが早い。
「二人も凄かったよ。破竹の勢いで倒してて、貴方達の気迫に圧倒されてる人も多かったんじゃないかな」
「王女殿下の騎士として恥じぬ戦いをと、少しばかり肩に力が入ってしまいました。……騎士達をとにかく倒したかった事もありますが」
「あの騎士達は敵です。怨敵必殺と言いますし、早急に排除すべきと判断しました」
「そんな言葉聞いた事無いわよ。そりゃあ彼等は模擬戦の相手だったけど、それだけで怨敵認定って…………そんな怨みが募るような何かがあったの?」
「「はい」」
「即答?!」
基本的にあんまり他人に興味無いうちの子達が怨敵認定する程の何かって……騎士団の皆様方、一体何してくれたのよ! 事と次第によっては後で文句言ってやろうかと、除雪され露出した地面に倒れている騎士達を少し睨む。
というか本当に何があったの? 話聞くよ?
騎士団の訓練場に集まった百人近い騎士に向けてケイリオルさんが軽く説明すると、騎士達は「王女殿下だ」「相手はたった三人だと……?」「青い髪──ランディグランジュの神童?!」と口々にざわついた。
「では王女殿下、何か一言いただけますか?」
「ごほんっ。帝国を守りし勇敢なる騎士の皆様方。本日は私《わたくし》共の実力をお見せする機会を作ってくれて感謝します。剣を持つ者に貴賎なし……身分だとか立場だとかは頭の隅に追いやって、真剣勝負といきましょうね」
ニコリと微笑んでみると、騎士団の方々は、先程のざわめきがかき消されるような興奮した歓声をあげる。
「…………ふむ。私が百人全て倒せば王女殿下のお手を煩わせる事もないか」
「ちょっと待ってよ、俺が百人倒すから。騎士君の出番なんて無いから」
「イリオーデだ。お前こそ引っ込んでいろ、ここは私一人で十分だ」
「はあ? 俺一人で十分だって言ってるだろ、石頭」
「それはこちらの台詞だ、偏屈者」
それはそれとして、何でこっちは内ゲバしてるのかしら。喧嘩する程仲がいいとは言うけれど、この人達いつもこうね。
……二人共能力が突出してるからこそ、張り合える相手がいるのが嬉しいのかな。そう考えると何だかとても微笑ましく思えて来たわ。
「一応、私達三人の実力を見せつける為の模擬戦なんだから、一人で全部倒されては困るわ。ここは大まかに三十人ずつ相手取って、終わってから暇だったら残りの十人も……という取り決めにしましょう」
「王女殿下の仰せのままに」
「かしこまりました」
本当に素直だなあ、二人共。忠犬みたい。
実は私も二人と一緒に模擬戦に参加する事にした。私達三人で戦力は十分だと示すにはこれが最適解だと思って。だから今日は久々に、シャンパー商会特製戦闘服に着替え、イリオーデとアルベルトを従えてこの場に赴いた。
ちなみに模擬戦を乱闘形式に指定したのも私だ。一人一人相手するのが面倒臭くて……。
「さて、ではそろそろ始めましょうか。ケイリオル卿!」
「……心無しか楽しそうですね、王女殿下」
「そりゃあもう! こんなに沢山の実力者と戦えるなんて滅多に無い機会ですから!」
「彼等が王女殿下の期待に応えられるといいのですが」
困ったように肩をすぼめて、ケイリオルさんは呟いた。
「──これより、王女殿下陣営三名対騎士団員百名による模擬戦を開始します!」
騎士団員の前にまで私達が移動したのを確認して、ケイリオルさんが高らかに宣言する。
その宣言を皮切りに私達はそれぞれ別方向に走り出して、そして思い思いに戦った。
殺してはならないから気絶させる事を最優先に戦っていたけれど、案外後れを取る事はなかった。多分、彼等は私が王女だからだと無意識に配慮していたのだろう。そうでなくては、ただすばしっこいだけの子供相手に、大の大人達がここまで翻弄される事は無い筈だ。
跳んで躱して凪いで振り下ろして蹴って溺れさせて。色々と試すうちに、いつの間にか三十人程倒してしまったようだ。
もう少し戦ってみたかったんだけどな……と思いつつちらりとイリオーデ達をそれぞれ見てみると、そこは既に死屍累々(死んではないけど)。
私が色々と検証したりしている間に、二人はあっさりと敵を倒していたようだ。
流石はイリオーデとアルベルトね。当たり前のように強いわ。
そうやって改めて二人の強さを再確認した所で、余りの十人を倒す為に競い合っていたらしい件の二人が、いがみ合いながら私の元に戻ってきた。
「イリオーデ、ルティ。二人共お疲れ様」
「王女殿下こそお疲れ様です。相変わらず何とも美しい剣さばきで、何度も見蕩れてしまいました」
「やはり主君の戦う姿は、無彩色の世界でもいっそう際立つ輝きそのものです。戦闘中にも関わらず何度も目を奪われました」
パッと何事も無かったかのように二人は笑みを作り、美辞麗句を口にする。
相変わらず切り替えが早い。
「二人も凄かったよ。破竹の勢いで倒してて、貴方達の気迫に圧倒されてる人も多かったんじゃないかな」
「王女殿下の騎士として恥じぬ戦いをと、少しばかり肩に力が入ってしまいました。……騎士達をとにかく倒したかった事もありますが」
「あの騎士達は敵です。怨敵必殺と言いますし、早急に排除すべきと判断しました」
「そんな言葉聞いた事無いわよ。そりゃあ彼等は模擬戦の相手だったけど、それだけで怨敵認定って…………そんな怨みが募るような何かがあったの?」
「「はい」」
「即答?!」
基本的にあんまり他人に興味無いうちの子達が怨敵認定する程の何かって……騎士団の皆様方、一体何してくれたのよ! 事と次第によっては後で文句言ってやろうかと、除雪され露出した地面に倒れている騎士達を少し睨む。
というか本当に何があったの? 話聞くよ?