だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「……ふっ、やるじゃない。よくそれに気づいたわね。そう、私はこのしりとりを通して、貴方達に新たな発見をして欲しかったのよ」

 こうなったら全力で乗っかろう。誤解を解くのも面倒だからね!
 一体しりとりを通して何を発見させようとしているのか、それを言ってる本人が一番理解していないのだが、

「流石は王女殿下。貴女様は、ただ答えを与えるのではなく、己で考える機会を与えて下さるのですね」
「主君の下僕《しもべ》として、必ずや新たな発見を成してみせます」

 何故かこの二人には通じているらしい。何をどう解釈したらその発言に至るのか、後学の為に小一時間問い詰めたい所をぐっと堪え、しりとりの火蓋を切って落とす。

「兎にも角にも、しりとりを始めましょうか。とりあえず私スタートで……しりとりの『り』から。リンゴ、はい次はイリオーデね」

 まずはセオリー通りにリンゴスタートだ。私の右斜め前にいたイリオーデに次は貴方よと告げると、イリオーデは真剣な表情で悩んだ末、

「蛇女怪《ゴーゴル》」

 まさかの神話から引用して来た。天空神話に出てくる蛇の能力を持つ美しき女怪。それが、ゴーゴルなのである。大体は私達の知る所でもある、ギリシャ神話のゴルゴーンとも変わらないようだ。
 それにしても。少なくともしりとりで使われる事は滅多に無いであろう単語ね。……イリオーデったら、ただのしりとりでどうしてその単語を選んだの?

「次は俺か…………ルナティクス・ティール」
「何それ?」
「闇魔法の一つです。相手の視界を完全に奪う事が出来ます」
「強っ……」

 それはともかく、どうして魔法名? イリオーデもアルベルトも、やけに回答が張り切ってるわね。そんなに私の口八丁を真に受けてしまってるの? 二人共純粋過ぎない??

「ごほん……そうね、ルビー」

 まぁとりあえずはね。簡単な所から攻めないと。

「魔群蜂《ビーアーミー》」
「ミッドナイト・ロスチャイルド」

 またか。もう、貴方達はその方向性でいくのね?
 魔群蜂《ビーアーミー》はその名の通り群れを成す蜂の魔物で、アルベルトの言ったものは……私は知らないものの、多分闇魔法のうちの一つなんだろう。しらんけど。
 これまた、普通にしりとりをやってる分には一生お目にかからないような。そんな単語だ。

「……ドリシュヴァート渓谷」

 そっちがそのつもりなら私だって、普通なら出ないような単語でやってやろうじゃない。
 そんな謎の対抗心から、我が国の北東方面にある大きな渓谷の名前を出してみる。しかしイリオーデは顔色一つ変えずに、淡々と口を開く。

「幻妖精《クッキーフェアリー》」
「リバイバル・メモリア」

 何だ、なんなんだその謎の語彙力。もしかして二人共、若干縛りプレイしてない? どうして個人で縛りルールを課しているのよ。やるなら皆縛らなきゃ不公平じゃない。

「アンドルフ・セクト」

 とは言いつつも、私は自分に縛りルールを課さない。だって特定ジャンルだけとか無理だもの。私は満遍なく色々と覚えるタイプなので!
 ちなみにこれは偉人の名前である。どこかの国を作った偉大な人らしい。

「飛蟲竜《トンボ》」
「ボンドレズ」

 今度は魔物と地名ね。ちなみにこの飛蟲竜《トンボ》という魔物私達の知るようなトンボではなく、見れば確実に吐くような気持ち悪さの空飛ぶクソでかい蟲の魔物である。その禍々しさから竜の名を借りているだけであって、竜要素は一ミリも無いらしい。
 図鑑の絵でしか見た事がないものの、分かりやすくいえばアフリカゾウ並の大きさらしいので実際に見たら相当気持ち悪いと思う。

 幸いにも熱帯雨林にしか生息しないとの事なので、年中他国と比べたら寒い我が国ではまずお目にかからない。本当に良かった。この国が寒い国で。
 ボンドレズは……どこだったかな、どこかの国にある美しい湖の名前がそんな感じだった気がする。
 イリオーデもアルベルトも博識だなあ本当に。

 こうして、記憶力に自信のある私VS博識なイリオーデVS博識なアルベルトのしりとりは続いていった。
 移動中の暇潰しで始めたにしては非常に白熱した戦いとなり、私達は何と、今日泊まる場所に着くまでずっとしりとりで盛り上がっていたのだった。
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