だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「……作戦決行は数時間後、日付が変わった頃だ。檻の開放の方はあいつがやっとくらしいから、俺達でガキ共を迎えに行ってそのままここから抜け出す。ガキの中には怪我してたり体力が無ェ奴もいる。そいつ等の事も考えると長距離を逃げる事は不可能……近くの噴水広場にまで逃げた後、俺達は全力でガキ共の護衛をする」

 俺がそうやって作戦の概要を説明すると、全員がこくりと一度頷いた。
 作戦決行までまだ時間があるから、クラリスとイリオーデにも共有に行きたい所だが……そう何度も外を出歩いていたら流石に商人の奴等に怪しまれる。どうすればいいだろうか。

「……シアン、少し頼まれてくれるかい?」
「いいよ」

 俺が何か方法は無いかと考えあぐねていると、ラークがルーシアンに小さな袋を手渡して、

「きっと二人共小腹が空いている頃だろうから、これを差し入れとして持って行って欲しいんだ。あぁ、ついでに世間話でもしておいで。二人共暇してるだろうから」

 とやけに穏やかな笑みを浮かべた。
 ルーシアンは何かに気づいたようにニヤッと笑い、部屋を出た。
 ……中々考えたな、ラークの奴。うちで最年少のルーシアンなら、不必要に出歩いててもそう怪しまれない。それも警備担当の仲間への差し入れを持って行くという理由なら尚更。
 話を楽しみ過ぎて帰ってくるのが遅くなっても、なんらおかしくは無いだろう。
 もし万が一何かあっても、ルーシアンの足なら簡単に逃げられる。……これが、現状で俺達が取れる最良の手段かもしれない。
 流石はうちの参謀。見掛け倒しのシャルルギルとは違うな。
 それから数十分後、ルーシアンが戻って来た。無事クラリスとイリオーデにも作戦の概要を説明出来たようだった。

 ……そして。日付が変わった。俺達は意を決して部屋を出る。
 あのガキは商人の奴等が眠ってるのを期待してたが、あいつ等は毎日明け方まで呑んでやがる。今だってどこかの一室で酒を片手に大騒ぎしている筈だ。
 地下のガキ共が全員逃走したとなりゃ、相当な騒ぎになる……いくらあいつ等が酔ってるとはいえ、騒ぎには確実に気づくだろう。
 だが、その時の為に俺達がいる。俺達は俺達の役割を果たすだけだ。
 問題はあのガキだが…………本当に一人で大丈夫なのか?
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