だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
「んで、ここから先が本題。バドールが無事に求婚《プロポーズ》出来るようその背中をお前等が押してやれ。求婚《プロポーズ》に相応しい場や空気のセッティング、見かけによらず繊細なバドールのメンタルケアや後押しまで色々とやれ」
最後に、まるで指さすかのように棒付き飴を紙の束へと向けた。「よーぅし説明終わりー」と一息ついて、シュヴァルツは棒付き飴を堪能する。
「……マジ? それ全部俺達でやるのか?」
「俺達の雇用主は無茶振りが好きだね」
「バドールとクラリスの恋のキューピットになれと、そういう事か。任せろ今の賢い俺ならば天使にもなれる」
「シャル兄、天使を何だと思ってんの……?」
「よく分かんねぇけどオレ達でバドにぃとクラねぇが結婚出来るよう手伝えばいいんだな! 任せろ!」
ワイワイと乗り気になり盛り上がる一同。その様子を退屈そうに眺めるシュヴァルツは、うげぇ〜と息を漏らす。
(天使とかマジでやめてほしーんだけどぉー。あのクソ共の名前聞いただけで全身の毛が逆立つっつぅか、殺意が……)
悪魔の発生はまだ不明瞭だが、一説によると──天使という存在の影から生み出された悪性の化身。堕天した天使の成れの果て。天使による魔族殲滅戦争、魔族同士の生存競争、飽くなき進化の末に生まれた魔族の最終兵器。
そのように言い伝えられている。
故に、魔族は天使を酷く嫌っている。ただでさえ天使という存在が嫌いなのに、そもそも天使はその名の通り神の使い。神々への深い憎悪を持つ魔族が天使を嫌うのは自明の理。
既に何度も天使と悪魔の全面戦争を行い、その度に痛み分けでその終結をズルズルと後伸ばしにして来た。
この悪魔も数千年前から何度も天使と戦い、その度に魔族側だけ制約の影響を受け苦汁を飲まされていた。
なので、シュヴァルツは憎き存在の名が出て来て気を悪くしたのだ。
「ま、なんでもいいか。とにかく今から役割分担するから、ちゃんと話聞けよ〜」
棒付き飴を噛み砕き、シュヴァルツは気持ちを切り替える。
「この場にいないのはエリニティとメアリードとルーシアンか。お前等の性格とか頭の事考えると……実働班はラーク、ユーキ、メアリード辺りが妥当かァ。ジェジとシャルルギルは馬鹿だけど口は堅いから話が漏れる心配は無いが、嘘つけねぇからな……二人はあくまでも裏方に徹しろ。エリニティとルーシアンには追々別で指示を出すとして、ディオはー……」
真剣な面持ちで、シュヴァルツは役割分担を考える。これは決して、アミレスの考えた役割分担ではない。アミレスはあくまでも計画を立てて、近頃東宮の掃除にも飽きてきたとぼやくフットワークの軽いシュヴァルツに一任しただけ。
この、私兵団それぞれの性格等を考慮した役割分担は、シュヴァルツ自身が考えこの場で決めたものなのである。
「俺は?! 俺は役割何もねぇのか?!」
「……お前は……うん、意外と街の人間と仲良さそうだから市場調査でもして来たらいいと思う。人気のデートスポットとか……他にも、式場はおねぇちゃんが押さえると思うし、なんなら作りそうな勢いだし……どんな感じの雰囲気が人気か調べて、式場はその調査結果とクラリスの好みを反映すればいい。よし」
「よしじゃねぇ。なんで俺だけそんな雑なんだよ!」
「仕方ないじゃーん。一瞬何も思いつかなかったんだから」
ズバッとシュヴァルツの本音に切り裂かれ、ディオリストラスは心にダメージを受けた。「何も…………」とヘコむディオリストラスの背中を、ユーキが優しく擦り慰める。
「ハイッ! しつもーん!」
「はい質問どうぞー」
ビシッと天に向け真っ直ぐ伸ばされたジェジの右手。まるで生徒と教師かのようなやり取りである。
ジェジは体と一緒に顔を傾けて、疑問を口にする。
「裏方って何すりゃいーの?」
「それは俺も気になる。具体的に何をすればいいんだ? やっぱり具体的な事をすればいいのか?」
先程シュヴァルツより裏方作業を言い渡された二人が、その具体的な内容の説明を求める。
あぁ、と思い出したように息を零したシュヴァルツは、椅子の上で足を組み、更に手を組んでふんぞり返り説明する。
「役割としては場のセッティングとか、そういうのになると思う。バドールとクラリスがなるだけ二人きりに──それっぽい、いい感じの雰囲気になるよう自然に誘導する感じの役割をぼくは想定した」
「誘導?」
「ゆーどー?」
シャルルギルとジェジが声を揃えると、シュヴァルツはこくりと頷いて話を続けた。
最後に、まるで指さすかのように棒付き飴を紙の束へと向けた。「よーぅし説明終わりー」と一息ついて、シュヴァルツは棒付き飴を堪能する。
「……マジ? それ全部俺達でやるのか?」
「俺達の雇用主は無茶振りが好きだね」
「バドールとクラリスの恋のキューピットになれと、そういう事か。任せろ今の賢い俺ならば天使にもなれる」
「シャル兄、天使を何だと思ってんの……?」
「よく分かんねぇけどオレ達でバドにぃとクラねぇが結婚出来るよう手伝えばいいんだな! 任せろ!」
ワイワイと乗り気になり盛り上がる一同。その様子を退屈そうに眺めるシュヴァルツは、うげぇ〜と息を漏らす。
(天使とかマジでやめてほしーんだけどぉー。あのクソ共の名前聞いただけで全身の毛が逆立つっつぅか、殺意が……)
悪魔の発生はまだ不明瞭だが、一説によると──天使という存在の影から生み出された悪性の化身。堕天した天使の成れの果て。天使による魔族殲滅戦争、魔族同士の生存競争、飽くなき進化の末に生まれた魔族の最終兵器。
そのように言い伝えられている。
故に、魔族は天使を酷く嫌っている。ただでさえ天使という存在が嫌いなのに、そもそも天使はその名の通り神の使い。神々への深い憎悪を持つ魔族が天使を嫌うのは自明の理。
既に何度も天使と悪魔の全面戦争を行い、その度に痛み分けでその終結をズルズルと後伸ばしにして来た。
この悪魔も数千年前から何度も天使と戦い、その度に魔族側だけ制約の影響を受け苦汁を飲まされていた。
なので、シュヴァルツは憎き存在の名が出て来て気を悪くしたのだ。
「ま、なんでもいいか。とにかく今から役割分担するから、ちゃんと話聞けよ〜」
棒付き飴を噛み砕き、シュヴァルツは気持ちを切り替える。
「この場にいないのはエリニティとメアリードとルーシアンか。お前等の性格とか頭の事考えると……実働班はラーク、ユーキ、メアリード辺りが妥当かァ。ジェジとシャルルギルは馬鹿だけど口は堅いから話が漏れる心配は無いが、嘘つけねぇからな……二人はあくまでも裏方に徹しろ。エリニティとルーシアンには追々別で指示を出すとして、ディオはー……」
真剣な面持ちで、シュヴァルツは役割分担を考える。これは決して、アミレスの考えた役割分担ではない。アミレスはあくまでも計画を立てて、近頃東宮の掃除にも飽きてきたとぼやくフットワークの軽いシュヴァルツに一任しただけ。
この、私兵団それぞれの性格等を考慮した役割分担は、シュヴァルツ自身が考えこの場で決めたものなのである。
「俺は?! 俺は役割何もねぇのか?!」
「……お前は……うん、意外と街の人間と仲良さそうだから市場調査でもして来たらいいと思う。人気のデートスポットとか……他にも、式場はおねぇちゃんが押さえると思うし、なんなら作りそうな勢いだし……どんな感じの雰囲気が人気か調べて、式場はその調査結果とクラリスの好みを反映すればいい。よし」
「よしじゃねぇ。なんで俺だけそんな雑なんだよ!」
「仕方ないじゃーん。一瞬何も思いつかなかったんだから」
ズバッとシュヴァルツの本音に切り裂かれ、ディオリストラスは心にダメージを受けた。「何も…………」とヘコむディオリストラスの背中を、ユーキが優しく擦り慰める。
「ハイッ! しつもーん!」
「はい質問どうぞー」
ビシッと天に向け真っ直ぐ伸ばされたジェジの右手。まるで生徒と教師かのようなやり取りである。
ジェジは体と一緒に顔を傾けて、疑問を口にする。
「裏方って何すりゃいーの?」
「それは俺も気になる。具体的に何をすればいいんだ? やっぱり具体的な事をすればいいのか?」
先程シュヴァルツより裏方作業を言い渡された二人が、その具体的な内容の説明を求める。
あぁ、と思い出したように息を零したシュヴァルツは、椅子の上で足を組み、更に手を組んでふんぞり返り説明する。
「役割としては場のセッティングとか、そういうのになると思う。バドールとクラリスがなるだけ二人きりに──それっぽい、いい感じの雰囲気になるよう自然に誘導する感じの役割をぼくは想定した」
「誘導?」
「ゆーどー?」
シャルルギルとジェジが声を揃えると、シュヴァルツはこくりと頷いて話を続けた。