とあるヒロインと悪役令嬢の顛末〜悪役令嬢side

そして、物語が始まる



———そして、召喚陣の間。

魔力を調整しつつ流す。
実は、これは結構複雑で難しい作業。
だから、高レベルの神官と魔法使いが、1人づつ補佐に付いている。

エドウィン様の視線を横顔に感じながら、私は神官長に話しかけた。

「今から召喚する方は、皇家の古書によると、『あちらの世界』と関係がなくなった方だとか。

神殿の方でも、そう伝わっていまして?」

「はい。もっと言うなら、『あちらの世界で、亡くなった方』と言われています」

そう、か。
なら、安心して召喚できる。
人ひとりを異世界から連れてくるのに、その世界で生きている人を突然、無理矢理連れてくるのは…嫌だ。
そんなのは、誘拐と同じだ。




段々と光を強くする召喚陣。
もう少しで、聖女が現れる。
集中した私の頬を、汗が流れていく。
余計なことを考える余裕はない。

突然、光が一点に収束した。
刹那、目を開けていられないほどの眩しさで部屋が満たされる。



———目を開けると、召喚陣の上には。
セーラー服を着た、長い黒髪の女の子が横たわっていた。





< 11 / 47 >

この作品をシェア

pagetop