とあるヒロインと悪役令嬢の顛末〜悪役令嬢side
結論から言おう。
私の目論見は、脆くも崩れ去った。
高位貴族の常として出てくる婚約の話に、お父様には5歳の特権で『皇室に嫁ぐのだけは嫌だ』とギャン泣きした。
話が出る度に暴れ回ってギャン泣き。
5歳児に出来ることは、そのくらいだ。
6歳の誕生日を1ヶ月ほど先に控えたある日、もう10回以上出て来ている婚約話にまたギャン泣きしつつ、
「私は、お父様と結婚するのです!」と、可愛いことも言ってみた。
でもお父様は、悲しげな表情で、「ごめんね、メグ、お父様はお母様のものなんだ」と、素で惚気た。
「皇帝陛下は、側室を持つので嫌です!
私はお互いをただ1人として愛せる方がよいのです‼︎」
6歳の誕生日の頃、6歳児が決して言わないだろうことも言ってみた。
「まぁ、メグはそんなことよく知っているのね。
大丈夫よ、今の皇帝陛下も、皇后陛下をとても愛されていて、側室は居ないわ。
きっと皇太子殿下も、そうなさるわ」
お母様に、おっとりと却下された。
6歳になってすぐ顔合わせをセッティングされて、2回ほど仮病を使った。
すると3回目は、騙し討ちだった。
同じ年頃の高位貴族の子供達を集めての毎年恒例のお茶会が皇宮であると聞いた時に、疑うべきだったのだ。
皇太子殿下が来ると言われなかったこともあり、『同じ年頃の友達が出来るかも』と浮かれた私は、残念なことにそれに全く気が付かなかった。
ええ、たしかにお茶会でしたとも。
お菓子もお喋りも楽しかったですよ。
でも途中で、皇太子殿下が来るとは聞いていない。
何か騒ついてるなと思いつつも、奥まった所にあるテーブル席で仲良くなった令嬢3人とお喋りをしていると、私の後ろから影がさした。