オリオンの夜明け〜一生大切にするから〜
「美味しそうだな」

「春樹と星香の好きなデミグラスソースよ」

未央が、淡いピンク色のルージュを引き上げた。テーブルには、未央が作った、ハンバーグとスープ、ポテトサラダが並んでおり、真ん中には、俺の作った、星香が大好きなオムレツが、大きなプレートに乗っかっている。

「春樹って、本当オムレツ上手よね、いつも見てるのに同じように作れない」

未央が、綺麗な切長の瞳をきゅっと細める。

「何?悔しいの?」

「当たり前でしょ!星香の好きなもの、私だって、春樹がいない時でも作ってあげたいの!」

「変わんないな、どっからくんの?その負けず嫌いと完璧主義」

クククッと笑う俺を見ながら、未央が痛くない程度に俺を肘で突いた。俺は、ふわりと未央を抱きしめた。

「ちょ……春樹!」

「何?」

「何って、言わなきゃわからないの?」

未央が頬を染めながら、一瞬だけ俺の瞳を見てすぐに逸らす。

「勘のいい未央なら分かると思うんだけど」

俺は、そのまま唇を未央の耳元に寄せた。

「いつもありがとう。今日も部屋で待ってるから、早く返事聞かせて」

未央は真っ赤になったまま、目の前の料理を見つめている。

俺は、これ以上未央を困らせないように、するりと腕を離した。
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