オリオンの夜明け〜一生大切にするから〜
春樹が階段を降りてくる音が聞こえて、私は、並べたグラスにウイスキーを注いだ。
「相変わらず、気が利くな」
「今日は、もう少し飲みたい顔してたから」
「俺のこと、何でもお見通しだな」
「今更気づいたの?」
「で、付き合ってくれるんだ?」
春樹は、頬杖をついている私の隣に座ると、私がもう片方の手に握っていたグラスに、春樹がグラスをコツンと当てた。
「たまにはね」
私は、グラスを持ち上げると、ウイスキーを一口飲んだ。
「星香嬉しそうだったわね」
「もう三人で祝うのも12回目か……」
「四人、でしょ」
私は、リビングのチェストの上に飾ってある、生まれたばかりと星香と明香さんの写真に視線を移した。
生まれたばかりの星香を抱いて、愛おしそうに星香を見つめている明香さんの写真だ。
「有難うな……この12年、未央が居なかったら俺はダメになってから」
春樹が、視線をグラスに落としながら、小さく呟いた。