オリオンの夜明け〜一生大切にするから〜
「……そんなことない。私がいなくても……春樹は明香さんを想いながら、ちゃんと星香を育てられたと思うわ」
私は、心からそう思っている。私が春樹の事を忘れられないことを知っていた、明香さんに、自分に万が一の事があったらと頼まれてロスに行ったけれど、それが春樹と星香にとって良かったのか、どうかは未だにわからない。
「未央……俺、本気だよ」
春樹の大きな掌が、私の左手を包み込んだ。
「未央、結婚してほしい」
春樹の綺麗な二重瞼に真っ直ぐに見つめられると、未だに鼓動が大きく跳ねる。
もう何度、はぐらかしてきただろうか。決心はすぐに揺らぎそうになる。もうすぐ、この家を出ると決めているのに。
春樹の瞳を一瞬だけみて、すぐに逸らすと、私は俯いた。
「……春樹……私ね、星香が中学に上がったらこの家を出るつもりだから……」
「何で、そんな事言うの?俺と星香と暮らすの嫌んなった?」
春樹が私を覗き込む。
春樹は、その綺麗な瞳に、もうずっと、私だけを映してくれて、いつも大切にしてくれている。