真夏の夜の夢子ちゃん
翌日の昼前になって、洸平はようやく布団から起き上がった。

実際ほとんど眠れなかった。昨夜のキスが頭から離れないのだ。
夜中、あの子の唇の感触や吐息を思い出しては目が覚めた。

洸平にとってのファーストキス。

ドラマやネットからの情報で、どういうふうにキスをするのかは何となく予習済みだった。しかし、上手くできていたのかはわからない。
あの子が「もっとしたい」と言ってくれたということは、悪くなかったという解釈でいいのだろうか。

洸平は頭を掻きむしった。

…ものすごく気持ちが良かった。
キスだけで、あんなに気持ち良くなれるものなのか。
まるで、夢の中にいるような心地がしていた。

もっとずっとキスしていたかったのに、母親からの電話で現実に引き戻された。早く帰ってきて手伝え、と言う。

お盆の初日の夜ということもあり、線香をあげにくる近所の人が絶えないことは洸平も知っている。その人たちをもてなして相手をすることが、どれほど大変なのかは母親の姿を見ていればわかる。

電話の向こうの声が少し苛立っていたので、洸平は仕方なくベンチから立ち上がった。

「ごめんね。帰らなきゃ。」
洸平が言うと、女の子も立ち上がりバス停を出た。
「送れないけど、一人で帰れる?」
そう尋ねると、小さく頷く。

暗い山道の方へ歩いていく女の子の後ろ姿を見ながら、また名前も連絡先も聞いていないことに気づいた。

「ねえっ、明日も会える?」

洸平は、少し大きな声を出した。
しかし、女の子は振り返らない。

「明日もここで待ってるね!」

暗闇の中に消えていく白い浴衣に向かってそう言ったのだが…聞こえていただろうか。

今夜もまたあそこに行けば、あの子に会えるかな。
あの子のことをもっと知りたい。
そしてあの子とまた、昨日みたいなキスをしたい…。

そんなことを考えているとあの子の唇の感触が蘇ってきて、洸平は自分の唇を指でなぞった。
下半身がムズムズしてくる。

良くないとは思ったがどうにも抑えられず、洸平は短パンと下着をずらして大きくなってきたモノを扱いた。
手をゆっくり上下に動かすと、どんどん大きく硬くなってくる。

「…っふ。」
思わず声が出た。

家の中には今、誰もいないはず。

「おじいちゃんとお墓参り行ってくるね」と、部屋の外から母親が声をかけてきたのは30分程前。目は覚めていたので、しっかり覚えている。

誰にも邪魔される心配がないと思うと、洸平の想像力と性器は膨らんでいく。

目を閉じて、あの子の甘い香りや体温を思い出した。洸平の唾液だらけになってしまった柔らかい唇を想像する。
それでもキスを催促してくる、あの子の潤んだ瞳が忘れられない。

扱く手が早くなる。
そこはすでにパンパンで、破裂してしまうんじゃないかと思うくらいだった。

頭の中で、洸平はあの子の白い浴衣を脱がせていく。
露わになった汗ばんだ肌は透き通るようで、洸平が触れると彼女は「…んっ」と声を漏らした。その、やたら大人っぽくて湿った声が、耳元で聞こえた気がした。

「…んっ…ぁ。」

その瞬間、握ったモノの先から白濁した液体が溢れ出た。
慌てて、棚の上に置かれたティッシュに片手を伸ばす。

…やってしまった。

腹の上に流れた自分の精液を拭きながら、洸平は天井を仰いだ。
今まであの子を想像しながらするのは、何となく後ろめたくて避けてきた。

でも…我慢できなかった。
あんなにキスしたんだし、健全な15歳男子なら誰だってこうなってしまうはず。

うん、そうだ。

洸平は自分で自分に言い訳をした。
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