大好きな人とお別れしたのは、冬の朝でした


結局その日は別荘に泊まることになった。
佐久間に町営住宅まで送ってもらい、翔琉の着替えや泊りの準備をした。
詩織が荷物をまとめている間に、佐久間はチャイルドシートを購入しに出かけていった。
借りた物は保育園に帰してくれたらしく、さすがに手順がいい。

「ありがとうございます。おかげで助かりました」
「いえ、お気になさらずに。こんなことでもお役に立ててよかったです」

車の中で佐久間はやっと重い口を開いてくれた。
あの夜、瞬の義母の言うことだけを信じてしまい詩織の存在に気がつかなかったことをずいぶんと後悔していた。

「あの時のことは、申し訳なく思っています」
「いえ、瞬さんと話せてお互いに誤解だったとわかりましたから」

佐久間は翔琉の存在がなによりも嬉しいようだ。

「これからのことは、ゆっくりとご相談なさってください。私もできる限りお助けします」
「ありがとうございます」

詩織と翔琉に心強い援軍ができたようだ。
いきなり瞬の子どもを産んだと言えば、これから沖田家で起こる騒動は目に見えている。

「これからもよろしくお願いします」

力強く頷く佐久間の顔も晴々としていた。
留守番をしている瞬と翔琉はお風呂で遊んでいるはずだ。
ふたりでなにをしているだろうか、大丈夫だろうかと車内では話が弾んだ。




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