大好きな人とお別れしたのは、冬の朝でした



過ごしやすくなった夕方からは、場所を近くの外資系ホテルに移してパーティーが開かれた。

若いタレントや有名な女優達も顔を見せる華やいだ会場では、幅広い年代の男女が楽しそうに寛いでいる。
商社や広告代理店から出席している男性たちは少々お酒が入って声が大きくなってきているし、女性客は有名なレーサーたちとの交流に夢中だ。
時間が経つにつれ、ホールの中はずいぶんと賑やかになってきた。

(場違い?)

そんな感想を詩織が抱いても不思議ではないだろう。
普段は理学療法士としてあちこちで働いている彼女にとって、こんなパーティーは馴染めないのだ。

会場で生演奏しているのは最近売り出し中の人気のポップ・ロック・バンドで、新車のコマーシャルソングを担当している。
ボーカルの女性の澄んだ声は心地いいが、この人混みは詩織にとって苦痛だった。
音楽に負けまいと大きな声で交わされている会話と、女性たちの濃い化粧やお酒の匂いで眩暈がしそうだ。


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