大好きな人とお別れしたのは、冬の朝でした
『俺だ』
「沖田さん……」
瞬の声を聞いて、詩織はなぜか涙が出そうになった。
「あの、すみませんでした。せっかく声をかけてくださったのに」
『ああ、お父上から聞いたんだな』
「はい」
『あっさり断られてしまったよ』
あっけらかんと瞬は話しているが、詩織はまだ落ち込んだ気持ちのままだ。
「でも、私がスポーツリハビリテーションをやってみたいって言ったから……」
『断られたのは仕方がない。こっちが突然、申し込んだんだからな』
「本当に、申し訳ありませんでした」
何度謝っても、詩織の気持ちはスッキリしない。
だが瞬は、気にもとめていないようで話を変えてきた。
『いや、それより頼みがあるんだ』
「え? 頼みって?」
『今日は仕事は終わったんだろう?』
「はい」
詩織は突然の電話に戸惑ったままだが、瞬は話をどんどん進めていく。
『これから言う場所にこられるか?』
いつもより少し真面目な声が聞こえてきたので詩織は身構えた。
「はい?」
『地図を送るから、すぐに来てくれ』
やはり、いつも通りの強引な瞬だった。